エピローグ

 街は朝を迎える。


 避難していた人々も、続々と街へと帰ってくる。




 そんな中で、僕らはある店の前に居た。




「いちごプリン2つ。あっ、スプーンは付けなくて良いですよ。」


「はい毎度ありー! お二人さんはレイド参加者だろ? おまけしとくよ。」


「ありがとうお兄さん!」




 また行こうねって約束した、プリン屋さん。




 あの氷獄鴉を倒した後、手柄の横取りだなんだの非難轟々で……


 危うくPKされかけた所を逃げ回って、丁度ここに辿り着いた。




「どこに居るんだあの野郎~!」


「おい、あそこに居るのそうじゃないか!?」


「本当だ! 追え追えー!」




 いちごプリンが2つ入った紙袋を持って、僕らは素早く路地裏に身を隠しその場を離れる。




「あー、やっちゃったなぁ…… ごめんね、大変だ」


「ぜんっぜん大丈夫だよ! とっても頼もしかったし…… それにちょっとカッコよかった」


「え?」


「なんでもない! プリン食べよ?」


「うーん、でも安全な場所がなぁ…… あっ!」




 急に閃いたのは絶好の場所。きっと景色も綺麗だろうし、人からも発見されずらいだろうそこでゆっくりと休もう。




「いい場所思い付いちゃった!」


「んー、どこどこ?」


「ちょっと待ってね…… 遊軍許可証は…… よし、まだあった。」




 カバンの中を探り、この作戦に重要なアイテムが残っていることを確認して……




「遊軍許可証ってことは…… なるほど!」


「そう、」


「「櫓!」」




  2人の声が揃う。




「はははっ! 確かにあこなら安全かも!」


「でしょ? まぁ南は景色が、ね…… ボロボロだから。東に行こう。」


「東にも櫓ってあるの?」


「さっき東門に行った時のスクショを見てたんだけど、確かにあったよ。」


「へー、じゃあそこで決まりだね!」


「うん。行こっか!」




「いたぞぉぉ! 遠距離職は撃っちまえ!!」


「りょーかい! 【火矢】」




 今度は自然に彼女の手を引いて走り出す。


 後ろから脆弱な炎の矢が放たれるけど、翼で2人を包んで守る。が、それすらも杞憂だったみたい。ダメージは0、羽が1枚ちょっと茶色くなったくらいで済んだ。




「まてーーー!!」




 でもそれで終わりじゃなかった。


 指揮官と思われるモヒカンの男が走って付いてくる。


 やっぱ戦士職は強いなぁ…… 後衛の僕らじゃ追い付かれそう。




「やっばいなぁ…… ホノカ?」


「おっけー、任せた!」


「よっと……!」




 引いていた手をグッと胸に寄せ、彼女をお姫様抱っこする。


 路地裏から大通りに出て、広いスペースを確保。そのまま翼をはためかせ、離陸!




「【必殺:蒼穹覆う盾キミニトドケ】 これ30秒かつ空に居る間だけみたいだから注意してね!」


「りょーかい! 」




 下から、氷獄鴉戦と同じくらいの魔法や矢が飛ばされて来る。城壁の上で打っていたものより、鴉の経験値が入った分ちょっと威力が上がってそうな音がする。




 だけどそれらは全て僕の背中を包む透明な膜に弾かれて行った。




「完全防御スキル、めっちゃ強いね……」


「まぁ入手が1回限りのスキルだからねー。誰かさんは2つ持ってるみたいだけど」


「うぐっ…… まぁそれは今度話すよ」


「ぴちょ丸モフモフさせてくれたら許してあげる!」


「あいつ結構ツルツルだよ」


「へー…… 自分はモフり経験者、だと……」


「違うって!」


「はははは!」




 膜は既に消えてしまったけど、ここはもう地上からの攻撃は届かない高度。




「うわぁ…… 中世の街中きっれー……!」


「確かに! あっ、あっちにも街があるね!」




 この世界は前世に似ている。でもそれらを空からじっくり見たことは無くって、なんか感動する。




「そだねー! ってその向こうのあれ、海じゃない!?」


「おー、マジだ! 」


「楽しみだね! 海水浴!」


「そうだね!」




 相槌を打ってから彼女の言ったことに気付く。




「あの、さ。僕、強いし空気読めないから……」


「どうしたの急に自画自賛自傷して?」


「今日みたいに追われることとか、これからもあると思うんだ。」


「うん、そうだね」


「でもホノカと居ると楽しくって。多分迷惑ばっかかけると思うんだけど…… こんな僕でも、 これからも一緒に冒険してくれる?」


「……うん。そんな君だから、そんな事が言える優しい君だから―――」




 空は何処までも蒼い。


 ここに居るのは2人だけ。




「これからも、よろしく」


「うん、よろしく」




 まだ早いと、本当に言いたい言葉を押し込めて。でもそれでも、1度出た気持ちは止まらない。




 ――――――「「……それであのさ!」」




 この声はキミと空にしか聞こえないから






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長らくのご愛顧誠にありがとうございました。ライトの物語をここまで追って頂き、感謝しかないです。

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Your Life online ~異世界からの"逆"転生者、前世からの固有技能でVR世界を無双する~ 譚織 蚕 @nununukitaroo

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