人形の街。その『うらみ通り』と呼ばれる一角に。二人の人形が在る。
一人はクワイエット。腹話術人形。喋って騒いで、人を楽しませるために創られた。
一人はストロー。藁人形。いくつもの呪具を組み込まれ、人を殺すために創られた。
だが。クワイエットもストローも。今は使う人間や仕える人間を持たない野良人形でしかなく。果たすべき役割も仕事も持っていない。
そんな彼女たちは、人を待ち続けている。クワイエットは自分を操るに足る一流の腹話術師を。ストローは自分を確かに作ったはずの誰か――あるいは呪い殺すべき相手を。
道具になり切れない人形たち。
そんな彼女が『子供の失踪事件』に関わったことをきっかけに、少しずつ運命の歯車に巻き込まれている……そういうお話。
丁寧な筆力で描かれる『人形の街』が魅力的です。
人形たちもかわいらしく、テンポの良い掛け合いに良い質感を感じます。すべすべしている。
随所に現れる人形に纏わる用語の言葉遊びも楽しく、読んでるうちにずぶずぶと世界観に取り込まれ、ストローとクワイエットの道行きを追っていました。
クワイエットさんに蹴ってもらいたい。そういう。それ。