再び歩く季節

ある日、ブラッくんが吐いた。



なんだか、真っ黒なもの。

血なのでは?


あたしは、ブラッくんを連れて動物病院に急いでかけつけた。


『これは血じゃないね。何かつらいものを吐いたみたいだよ』

優しいおじいさんの先生が、説明してくれた。


『この子は長い間、誰かのつらい気持ちを飲み込んできたんだね。

それがたまりに溜まって、吐いてしまったみたいだよ。

かわいそうに。』


あたしは、ハッとして立ちすくんでしまった。



夢が叶わない!叶わない!叶わない!

なんで!なんで!なんで!



そんな気持ち、全部ブラッくんがのんでいたなんて!



ブラッくんは、もう吐き出したからスッキリしたって感じの顔をして、診察台の上で立ち上がった。



そして、おじいさん先生にペコリっとお辞儀のように頭を下げた。

ブラッくんを連れて帰り、ブラッくんに謝った。 泣きながらずーっと謝っていたら。 ブラッくんが、黒いレスポールにスリスリし始めた。 『これ?今弾くの?』と、手に取った瞬間。



スマホが鳴った。 何度もオーディションに行ったレコード会社からだった。 あたしが、もう、夢を諦めて始めたYouTubeを見て電話をくれたのだった。

夢が、今度は暖かくあたしを包んでくれた。




気がついたら、ブラッくんがいなくなっていた。

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クロネコギター 山崎 モケラ @mokera

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