四人目
夏伐
四人目
放課後の学校はわくわくする。夕日に照らされてダンジョンみたいだ。
電気がついている教室に入ると、友達が3人。鉄ちゃん、スズちゃん、キョウくん。
その顔を見て、この前事故で死んでしまったのに。
そう思って、私は内心、複雑だった。
皆、教室の中央に集まっていた。表情は少し強張っている。
「ごめん遅くなっちゃって」
スズちゃんが、恐々と「本当にやるの?」と周りの様子を伺う。
私はスズちゃんの隣に座った。
「もう準備したんだ。逃げるなよ」
鉄ちゃんが念を押すように皆の顔を見渡した。
嫌ならやらなければいいのに。
鉄ちゃんの顔は何だか青ざめている。
「人数が奇数だといつの間にか一人増えていたりする、って聞いたりするよ」
と、キョウくん。
「霊感がある奴がやると成功率あがるって言うもんな」
「何それ~」
少し場が和んだ所で、キョウくんが「じゃあ始めよう」と紙を広げた。
五十音と『はい』『いいえ』、そして鳥居。
十円玉は鉄ちゃんが取り出して鳥居の上に置いた。
皆で十円玉に手をのせる。
「こっくりさんこっくりさんおいでください。もしおいでになられたら『はい』へお進みください」
揃えて言葉を吐く。
ゆっくりと十円玉は『はい』に向かった。
「だ、誰か動かしてるの!?」
スズちゃんが言う。
私は思わず十円玉を見た。鉄ちゃんが「手、離すなよ」と言う。
「これは敵討ちなんだからな!」
「お前の気が済むまで付き合ってやるから」
そうそう。本当に早くしてほしい。
鉄ちゃんが涙ぐんでしまう。
それを見てキョウくんは十円玉に向かって言う。
「あいつを殺した犯人を教えてください」
十円玉が動く。
『た』『ん』『に』『ん』
「たんにん、って担任?」
スズちゃんの表情が強張る。
「やっぱり事故じゃなかったんだ! 学校が隠ぺいしたんだ!」
キョウくんが呟く。
鉄ちゃんが「だから言っただろ。俺は見たんだって」声が震えてる。
私は思わず笑った。
スズちゃんが「なんで笑うの!?」と泣きそうになりながら言った。
「こういうのって参加した奴の自己暗示で無意識で動かしてるって話よくあるよな」
キョウくんがポツリと言った。
鉄ちゃんが涙をぬぐいながら、
「俺が犯人を決め付けてるって言うのかよ! 本当にあいつが来てるのかもしれないじゃないか」
「どうなんだよ」
キョウくんが私を睨む。私は隣を見て、
「私の隣にいるよ」
「ど う し て 私 を 見 る の ?」
スズちゃんが壊れたラジオのような音割れした声で私を見つめた。
瞬間、バチンと電気が消えて教室が真っ赤になった。
「鉄ちゃん、手」
「あ……え?」
鉄ちゃんが電気が消えた瞬間、十円玉から手を離していた。
「スズちゃん、明日学校にくるかな?」
私が二人の顔を見渡す。
十円玉がスッと『いいえ』に動いた。
四人目 夏伐 @brs83875an
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます