【2012年 実写化映画】等しく明日なにが起こるか誰に分からない世界を生きる為の映画。

『郷倉』


 さて、ということで、僕のパートということで、2012年の映画について語って行きたいと思います。


 今回語りたいのは、「闇金ウシジマくん」と「るろうに剣心」です。

 あと「テルマエ・ロマエ」や「大奥 永遠[右衛門佐・綱吉篇]」にも、分量が許すのであれば触れたいとは思います。


 少し書いてしまいましたが、2012年って『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』に特典がついて長い行列を作ったり、AKB48が握手券をつけてCDを売ったりしていて、8月にはAKBのある種、象徴していた前田敦子が卒業しています。


 前田敦子は昨年2011年に「選抜総選挙」にて1位となって、

「一つだけお願いがあります。私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」

 という有名になった台詞をファンの前で言っています。


 また、その頃に「推しメン」(イチ押しメンバーの略)という言葉も生まれています。


 2012年というより、テン年代を考える時、この前田敦子の言葉って結構重要な気がしています。

 宇野維正・田中宗一郎がだした「2010s」という本があるのですが、この本の中で


「CDが売れなくなった音楽業界は、モノ消費からコト消費へ、つまりCD販売から、定額制のストリーミングサービスとフェスやライブの興行収入へ、主戦場を変えた。」


 という一文があり、まさに「モノ消費からコト消費へ」変わったのがテン年代からなんですよね。


 そして、このコト消費の中には「フェスやライブ」つまり、イベントな訳です。体験こそが、もっとも商品になったのがテン年代で、その最たる存在がDJ社長ひきいる「レペゼン地球」だったんじゃないか、と思うんです。


 DJ社長ってご存じですか?

 福岡県でイベントサークル代表やバーの経営をしていたんですよね。

 まさに「闇金ウシジマくん」の林遣都が演じた小川純っぽい存在なんです。


「闇金ウシジマくん」って初期はとくに社会の闇をちゃんと写す鏡であろうとしていた気がするんですよね。

 その後も、あの手、この手を使って社会を写そうとするんですが、カイジと同じようにPart2、Part3と進むことで、緊張感みたいなものが解けていってしまう印象があります。


 なので、今回紹介するPart1が僕は一番好きです。

 では、具体的な話をして行きたいのですが、強烈な眠気が襲ってきたので、また明日に致します。


『倉木』


 大奥以外は、全部見てるから、どんな話になるか楽しみです。


 あと、DJ社長も知ってる。


『郷倉』


 さて、では改めて「闇金ウシジマくん」の映画について触れたいと思うんですが、今回はセミナー的な問いかけ方式で進めていきます。

 セミナーですので、今回わたくし、さとくらは講師(自称)でございます。

 よろしくお願い致します。


 話を始める前に、まず窺いたいんですが、映画って二時間とか三時間とかあって、最後まで見るのってたるくないですか?

 はい、そこの君!

 そーだよね、「オタクに恋は難しい」の二藤宏嵩くんも言っていました。二時間も三時間もスマホやゲームができないのはコスパが悪い、と。

 まぁ、それは映画館での話ですが、映画って結構時間を取られるコンテンツなんですよ。


 そこで「闇金ウシジマくん」については、最初の十五分だけで良いです! アニメよりも短い!

 最初の十五分だけ見てください。

 それで引き込まれた人は、続きも観る。

 現代人は時間がない訳ですから、良い所だけをピックアップすべきですよね。


 はい、では、この最初の十五分に「闇金ウシジマくん」は何が描かれているのか?


 少し話をずらしますが、去年(2020年)ニュースになった話をさせてください。

 とある起業家が高級ラウンジに同席した女性に対し、テキーラを一気飲みさせ死亡させた、とTwitter上で拡散し、炎上したんです。


 起業家側、つまり、加害者の言い訳ですが、「テキーラのボトル1本を15分以内に飲み干せば10万円を払うというゲーム」で、「彼女は『できると思うのでやりたいです』と言うので、じゃあボトルを1本頼みましょうとなったのです」と釈明しているんだそうです。

 ふざけてますね。


 一気飲みが危険なのは、一般常識です。そんなゲームを容認した時点で、その起業家は何を言っても加害者で、被害者女性の家族に地べたに頭をつけて謝罪すべきでしょう。

 何を釈明してんだって話です。


 でまぁ、「闇金ウシジマくん」の冒頭十五分でも、金持ちのホームパーティでの瓶のお酒を一気飲み、が行なわれる訳です。

 この際、一気飲みしたのは林遣都が演じた小川純くん。イベントサークル代表で、お酒を一分間で一気飲みができたら、次のイベントで一千万円出資してあげる、と言われて乗っちゃうんですね。


 周囲の人たちも囃し立てて、誰も止めようとしません。

 空気って言うのは、怖いものですね。


 そんな空気に異物が混入します。山田孝之が演じる金融屋「カウカウファイナンス」社長の丑嶋馨です。

 インタビューで読んだのですが、原作者の真鍋昌平は丑嶋を『虫みたいな存在にしたかった』らしく、それを聞いた山田孝之は「虫って形も変で感情もなくて、それが欲や願望が渦巻いた人たちの中に入ったらすごく変な画になるんじゃないかって。」語っているんです。


 つまり、欲望渦巻く人間社会に突然、形の変な感情のない虫が乱入してくるのが、「闇金ウシジマくん」の冒頭十五分で、そこに全てが詰まっていると思うんですよね。


 なので、自己啓発本とかいっぱい読んで、成功するんだ。金持ちになるんだ。短い時間でどれだけ多くの情報を手に入れるかが、勝負なんだ。本なんて目次を見て、気になったところだけ読めば良いし、映画は二倍速か四倍速で良いんだっていう意識高い系のみなさん。


「闇金ウシジマくん」は冒頭十五分だけで良いですよ!

 その代わり、二倍速、四倍速にしたら、わたくしはブチ切れます。ちゃんと監督と演者がこだわり抜いた空気感、仕草、音の全てをじっくりと味わってください。


 特に注目してほしいのは、小川純を演じた林遣都です。彼の初登場は洗面台で顔を洗っているシーンなんですが、ホームパーティの場なんで、言ってしまえば、人の家なんですよね。

 そこで、棚を漁って洗口液を見つけて、それを使うんですが、その仕草だけでホームパーティの場で浮いていることが分かっちゃうんですよね。


 ほんと、登場シーンでそのキャラクターの全てが分かるように作っているって、どんだけの技術があればできるんでしょうか。


 少し話は変わるのですが、「えんとつ町のプペル」って映画があったのを覚えていますか? 原作者の西野亮廣が映画について以下のようにおっしゃっていました。

「映画を見に行くのは答え合わせであり、分かっている結末を最高のクオリティで見るのが、今のエンタメ」


「えんとつ町のプペル」は答え合わせで良いと思うんですが、映画というエンタメは別に答え合わせが全てではないんですよね。


 エンタメには現実を写す鏡っていう役割もあるんです。

 どんなに答え合わせが好きな人生を送っていても、等しく明日なにが起こるか誰にも分からないです。


 そういう行く先の分からない現実を写したエンタメに触れていると、例えば、冒頭で触れた高級ラウンジに行ってテキーラ一気飲み、みたいな場を回避することができたりするんですよ。


 あるいは、それは「闇金ウシジマくん」でも良いんです。この映画の中では、お金による欲望が人間をどんな場所へ連れていくかってことを知ることができて、そうすると安易に金をばら撒こうとする人間を疑うことができるんです。

 もちろん、お金はあった方が良いです。

 けどね、やっぱりお金より大事なものはあるんですよ。


 陳腐だって思ったでしょ? けどね、この陳腐な結論に行き着く為に、過酷な現実ってものが、時おり僕たちの前に現れたりするんです。

 そういうことも、「闇金ウシジマくん」を見ると、知ることができるかも知れませんよ。


『倉木』


 冒頭に全てがつまってるの、最高峰は個人的に洋画のダークナイトだと思っています。ダークナイトも漫画(アメコミ)原作だなぁ、とか言ってたら話が長くなるので割愛するとして。要点だけをかいつまみます。

 こちらは、ダークナイトの宿敵のジョーカーが銀行強盗を行うのが冒頭に描かれています。銀行強盗という時間との戦いの犯罪なので、ほぼノーカットじゃないのかというぐらい手際がよく、さらにジョーカーという人物がわかるつくりとなっています。


 講師の郷倉先生のおっしゃる通りで、ウシジマくんの肝はウシジマが登場する前の段階かもしれんね。

 基本的にウシジマ社長が首を突っ込んだら、解決がスピーディーなので、前段階でどれだけウシジマを手こずらせれるかってつくりともいえそう。


 キングコング西野の考えで共感できるところもあるし、やり方で目を見張るものもある。けど、それだけを盲目的にもてはやす信者ってのが問題なんだろうな。


 これは、信者が害悪になっていくっていうコミュニティあるあるやけど、そういう人って、推しているそれ関連しか見てない、知らないってことが多いように思う。


 そんなことはないよ。色々と見て体験して、いきついたのがいまの推しなんだって人もいそうですね。が、そういう人って直近では推しにしか触れてないから害悪になるわけで。やっぱり、この瞬間は推し以外を知らないってのに通じそう。


 だからこそ、西野の作品がとりこぼした世界を間違いなくウシジマくんは描いてるので、その層にも見てもらいたいな。

 無知な人間が痛い目にあうってのをウシジマくんは少なからず描いてるし。


『郷倉』


 ダークナイトってクリストファー・ノーランなんですよね。

「TENET テネット」が話題になった頃に、ネットの記事でクリストファー・ノーランは小説を最後のページから読むって言うのがあったんですけど、あれは本当なんですかね?


 逆張りと言うか、自己啓発本の一節とかにあると、目次にしやすく読者の興味をそそりそうだな、と思いました。

 ただ、最後のページから読める小説には限りがあるでしょうけれど。


 クリストファー・ノーランでなくとも、自己啓発本とか読むと時々恐ろしい読み方とか書かれているので、念のため一つ方法論を紹介させてください。


 ――「本を読むときは自分の意見を持つな」、これが読書を中級レベルに最短で持っていく方法。書いてある構造をただスキャンするように読む。その内容に賛成せよという話ではない。ただスキャンし、そして記憶する。あの本はこれこれこういう論理で、と後で説明できる記憶力も鍛える。意見はその後の段階。


 こちらは、千葉雅也がツイッターでの発言です。

 もうこれが全てです。

 もちろんこれは、読書を中級レベルに持っていきたい人は、そうすることが最短ってだけの話ですけど。


 個人的にですが、意識が高くて、自己啓発が大好きで、本を目次で見て興味のある箇所だけ読んだり、幾つかの本を並行して読んだり、映画を二倍速、四倍速で見たりしている人たちは、そういう何かをやった風を装うよりは、千葉雅也の言う方法を取った方が(地味だけど)結局は良いよ、ってことは本当に言いたいです。

 世の中に正しい方法はあっても、近道はないですからね。


 では、明日にはるろうに剣心について語っていきたいと思います。

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