【2012年 実写化映画】上質な打ち切り作品「宇宙兄弟」

『倉木』


 次、なに話そうかな。

 ヒミズが刺さった人に見てもらいたい作品ということで、闇金ウシジマくん、いこかな。


 あれも結局は不幸は地続きって点ではヒミズと近いものがある。

 ただ、ウシジマくんのほうが、わかりやすいエンタメ作品になってる。

 けど、テーマ的な問題で金曜ロードショーで家族みんなで観ましょうって作品でもない。不幸になる登場人物も、ヒミズみたく不条理よりも不幸になるべくしてなった感が強かった。

 あと、ウシジマくんは日本の都会の闇で、ヒミズは日本の地方の闇という分け方も出来そう。そうなると、どちらがいいかってのは、好みの問題になってくる。


 ああ、ヒミズのほうが好きだから、深く語れそうにねぇなぁ。

 同年にヒミズがなければもっと熱くなっていたよ、多分。でも、あえてウシジマくんは浅く終わらせて次にいきます。


 大衆向けで完成度の高い二作品。

 宇宙兄弟とるろうに剣心です。


 まずは、宇宙兄弟から。


 兄は、優秀だが自分の能力を信じられず、ネガティブ思考に陥りがちな青年・ムッタ。

 

 ムッタは失業という挫折のさなか、幼い頃に弟と誓い合った夢を取り戻し、「宇宙飛行士になる」という夢をすでに叶えていた弟・ヒビトの後を追い始める。


 拾ってきたあらすじの抜粋です。


 アニメ化もいい時間帯でされており、漫画も話題になったので、名前ぐらい聞いたことある作品ではないでしょうか。

 メディアミックスされて、どれから手をつけていいかわからんって人に映画宇宙兄弟はオススメできる。


 おそらく、アニメなどに比べたら総集編のように、エピソードの掘り下げが少ないんだろうけど、それでもおさえるところをおさえている。


『郷倉』


 宇宙兄弟の漫画もアニメもスルーしてしまった、まさに僕のような人間こそ、映画版の「宇宙兄弟」は観るべきなんですね。


『倉木』


 漫画・アニメ・映画といくつもメディアミックスされている作品って、入口がいくつもある店舗のイメージです。

 今回でいうならば、宇宙兄弟という店で買い物するにあたり、最初は漫画という入口しかなかったのに、増築してアニメや映画といった入口もつくられていった感じ。


 それはそうとして、この映画っていう入口は、ごく稀に店に入らなくても消費できる機会がおとずれる。

 金曜ロードショーみたいな地上波放送ですね。

 

 地上波で放送される漫画原作の映画ってのは、いままでもたくさんあって。それこそ、日テレがスポンサーとしてるのだけでも、デスノート、20世紀少年、ガンツ、とあります。で、この年でいうならば、るろうに剣心があるんやけど、るろうに剣心も一作でまとめたうえで、どんだけ続編つくるねんていう現状です。


 るろうに剣心の一作目を単体映画としてみた場合と、宇宙兄弟を比べてみて、僕は個人的に宇宙兄弟のほうが好きでした。

 もちろん、優劣は視聴者の好みによって変わるでしょう。あくまで、僕の場合、宇宙兄弟選ぶってだけです。

 なのに、宇宙兄弟に続編映画はなかった。原作のエピソードの量的にも続編をつくれるはずなのに、どうして単作で終わってしまったのだろうか。悲しい。


 るろうに剣心のバックが日テレで、宇宙兄弟がフジテレビだったからでしょうか。それとも、ジャンルの差か。時代劇という邦画の強い歴史のほうが、予算がかからんし、出しやすいのかもね。でも、宇宙船という、いわば最先端の科学技術の場で映画をつくってくれるのは、ファンタジーものとはちがって、映像が無茶苦茶はえると思うのに。医療モノの実写作品も、あんな撮影してすごいと思うけど、宇宙関係ってのは、それの最先端ではないでしょうか。


 ヒット作が見込める映画ならば、単作ではなく前後編にするというのは、この年でも僕等がいた、でやってるのに、なんで宇宙兄弟は無理だったのだろうか。ネット上で実写映画を批判するのが大好きな層は、後半を叩いているように感じました。前後編になれば、原作やアニメファンがバカみたいに騒いでいる、はしょり過ぎな後半30分もなんとかなったのではないかな。ただ、映画しか知らんものからすれば、現状でも素晴らしい演出になってると思う。もういい加減、原作と比べている声をきくのが疲れてきたよ。


 下手に完成度が高すぎるので、宇宙兄弟は続編の必要がなかったのではないかと、強がりを言ってみる。いや、るろうに剣心が羨ましいだけなんだがね。


 なんか、時間がかかるだけで、うまいことまとまらん。郷倉くんのターンにいってくれてもいいような気がする――



 原作ファンが、使いやすい武器「原作レイプ」の話題が出そうになったので、荒川アンダーザブリッジに触れて、僕のターンを終わろうかね。


 大企業の御曹司の青年と、荒川の河川敷で暮らす奇抜な風貌の人々との交流をつづるファンタジー。


 キャッチコピーは「宝物はきっと、ここ(AUTB)にある――。」


 河童姿の小栗旬や星型のマスクを被った山田孝之など、原作からそのまま出てきたかのようなキャラクターの再現度を売りにできるほど、頑張って実写化していました。

 原作でも存在するエピソードが多数描かれ、再現すればするほど、なんか恥ずかしいというか、見ていられない気持ちになった。


 それでも、途中で投げずに見ていられたのは、桐谷美玲が可愛いから見届けという使命感だったのかもしれない。


 本作から学んだのは、好きな女優が出ていれば、映画一本ぐらい見とどけられるってこと。

 それから、荒川に限らず、色んな実写映画の原作信者には見てもらいたい。原作を再現したからといって、アニメのように面白くはならない。

 考えてみたら当たり前で、この漫画やアニメキャラだからこそ、面白さに繋がってるのに、どれだけ寄せても実写化はネガティブな言い方すれば偽物でしかない。しかも、ギャグを売りにしてるような作品だと、些細なキャラの変化が、最終的には笑いとはちがうものをうみだすのやろうね。

 ボウリングみたいに、球を投げるタイミングがちょっと違うだけで、ストライクとガターになるのに似ている。

 はじまりに些細な違いがあると、終わりには取り返しのつかない違いになるってことで。


 ただ、荒川アンダーザブリッジのすごいところは、後半のリカバリーである。


 原作と比べれば、些細な違いを持つ登場人物たちが、後半では、その違いを踏まえた上で動きだす。ように感じられた。具体例をあげれば難しいんやけど、とにかく、オリジナル展開になる後半のほうが、原作どおりの前半よりも面白くなっている。

 途中までは、原作の偽物と感じていた登場人物が、視聴後にはオリジナルキャラなんだなと、ポジティブにとらえることができるようになった。


 もしかしたら、実写化に向いていない作品は、オリジナル展開にしたほうがいいのかもしれんなぁ。

 そもそも、実写と原作は別物なんやし。


『郷倉』


 ちょっと気になって調べたら、2012年って『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』という名の総集編にファンが特典欲しさに長い行列を作って、批判されていた時期ですね。

 ということは、AKB48が盛り上がっていて、こちらも調べてみると前田敦子の卒業が2012年の8月でした。


 そんな可愛い女の子をもてはやす時代に突入していた訳で、そこで宇宙兄弟っていう、宇宙へ行く的、男のロマン風って言うのは、ウケなかったのかも知れませんね。


 じゃあ、なんで、るろうに剣心はってなると、原作が少年漫画だったからかな? 2012年ってなんかエヴァンゲリオンっぽいつーか(まどまぎがエヴァ?)、表舞台に立つからには若い少年少女でしょ! みたいな、空気が蔓延していた気がするんですよね。


 荒川アンダーザブリッジは、原作を見事にアニメ化されてしまったのが、まずありますね。

 で、作風はギャグなのに、所々なんかお洒落で意味深な詩が入ってきていて、実写でもそれをやらねば!みたいなテンションになっていたような印象を持ちます。


 あと、映画の前にドラマをやっているんですよね。

 ドラマは見ていないんですが、同じキャストで原作通りやっているっぽいので、映画の前半はドラマの総集編みたいなところがあったのかも知れません。


「SHIROBAKO」的に言えば、「総集編はもういやだ」な状態ですね。

 あっちで総集編、こっちで総集編。

 もう良いってとなっていた部分もあったんでしょう。


 僕も荒川アンダーザブリッジは後半のオリジナルな、ポテトとか、父親とかの心情が明かされていく辺りは僕も結構好きでした。

 裏テーマ的に母親の不在もあって、父と息子の物語にニノが紛れ込んで、理屈だけで生きてきたリクが、理屈ではないもので生きる術を学んでいく、って言うのは王道だし、小栗旬は格好良かった。


 ということで、悪い点はもちろん挙げられますが、総じて言うなら、荒川アンダーザブリッジは結構好きな映画です。


 さて、最後に倉木さん的に2021年から振り返って重要な映画は、何か最後にもう一度聞いて、僕のターンにしましょうか。


『倉木』


 るろうに剣心、と言いたいところやけど、やはり宇宙兄弟を推したい。

 駄目な部分ってのが、そこまで大きくないんよな。るろうに剣心より、販売戦略が弱かったぐらいかな。

 宇宙兄弟も小栗旬やしさ。だからなんだw

 重要な作品を擦り合わせる際に、もっと語れるように勉強しときます。


 映画宇宙兄弟を表す言葉を閃いたので追記しておきます。


 上質な打ち切り作品。


 あるいは、原作が完結していないアニメの1クール目で、続編の放送に期待することなく、1クール目の最終回のラストで、原作の最終回はこうなるでしょ。っていうのを描いてしまった感じ。


 少年ジャンプの打ち切り漫画ダブルアーツ(三巻完結)の最終回で、いきなり時間が飛んで、めでたしめでたしになった最終回に通じるものが、この映画にあるから、原作ファンは納得できんのかな。

 でも、限られた尺の中で、最後のシーンをどんな形であれ映像化するのは、素晴らしいことだと僕は思います。


 僕はシティーハンターという漫画が好きで、映像化されてないエピソードがドラマCDやパチスロの演出に使われたときは、ファンとして嬉しく思ったものです。


 俺たちの戦いはこれからだで終わるよりも、途中をばっさりカットしたけど、こういうエンディングが待っています、っていうのを描くほうが、上質な打ち切り作品だと個人的には思うわけです。


『郷倉』


 今回の連載によって、倉木さんは小栗旬推しになりつつありますね。

 彼のキャリアがどのように変わっていったか、というのを分析して行くことで、倉木さんの作品内に新たなキャラクターが登場するような気さえします。


 上質な打ち切り作品。

 なるほど。


 映画を見ていないので、4週目の対談パートで「ヒミズ」と「宇宙兄弟」は見ておきたいと思います。

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