ある知人の死をきっかけに、主人公の人生が衰弱していく様が描かれる。
本作は、主人公の独白(モノローグ)で語られる。ここが曲者で、因果関係を匂わせる描写はすべて主観がもたらす心象に過ぎず、事の真相は全く不明であるし、主人公がそのことを意識するわけでも、何かを突き止めようアクションを起こすわけでもない。あからさまな心霊現象が起こるわけでもない。
実は「知人の死がきっかけ」であるかどうかすら、本当のところハッキリしないのだ。
そのことがかえって「いつか自分の身にも起こるかもしれない」という不穏と焦燥を読者の心に掻き立てる。
こういう不条理な作品はラノベ的なニーズには合致しないかもしれないけれど、好きな人は絶対いると思う。私は大好きです。