151.何故かおかしな展開
「ふん!」
真上から振り下ろされた刃を、シオンは手で受け止めた。……あ、いや、正確には手じゃない。
超超小型の結界。手のひらよりほんの少し大きいだけのそれを盾にして、ファンランの一撃を防いだんだ。
「さすがでござる! はっ!」
「ぬっ!」
で、受け止められたファンランの方はその体勢から真上に跳ね上がり、くるんと回って踵落としを敢行。シオンはそれも、手のひらの結界で受け止めるけど……あ、少し沈んだ。
と、気を取られている場合じゃなかった。俺の結界が鳥かご結界に干渉して、ちょうど人が通れるくらいにぽかっと穴が開く。今のうち、と俺は手招きをした。
「王帝陛下、メティーオ! 早くこちらへ!」
「し、しかし、わっ!」
なんでか王帝陛下がためらってたんだけど、メティーオが後ろから思いっきりどんと押したようだ。サイズが、ちょうどテムと同じくらいにまで大きくなっている。サイズ調整できるようになったんだ、すごいな。
「きゅうううううう!」
「メーちゃん! こっちですよ!」
そのまま……あ、王帝陛下の襟首くわえて穴から飛び出したメティーオは、シノーペのところに突進していった。そして、彼女の前にすとんと陛下を下ろす。
「きゅいあ!」
「えらい! 王帝陛下、大丈夫ですか!」
「え、あ、うむ」
えっへんぼくえらいでしょ、と言わんばかりに胸を張ったメティーオの頭をなでてやりつつ、シノーペは即座に自分たちに防御魔術をぶっかける。
幸い、シオンはファンランにかかりっきりでこちらの邪魔はされなかった。というか、手のひら大の結界だけでファンランの剣技を受け止め続けるシオン、実はすごいやつ……なんだろうな、うん。
さて。この鳥かご結界、特に破壊する必要もなさそうなのでそのまま放置しとこう。つまり俺は、自分が鳥かごにぶつけた結界を解除したわけ。で。
「ファンラン!」
「承知、でござーる!」
名を呼んだ瞬間、ファンランは即座にシオンの結界、次に床を蹴って俺たちのところまで後退してきた。シオンが孤立したところを見計らって、俺とテムは同時に結界を展開する。シオンの、周囲に。
「移動阻害結界!」
「我が力、見るが良い!」
「……くっ!」
さすがに、両手を広げることもできないくらい狭い結界なのでシオンも露骨にうろたえてるな。ただ、こちらもちょっと困ったもんだ。
「……ランディスさん。結界、弱くないです?」
「シオンのやつ、威力減衰させやがった。結界構築に魔力で干渉して」
シノーペは、さすがに理解したようだ。
あーえーと、結界ってのは魔力で壁を作るわけだが、まあ実際にある石やら木やらで壁を作るのもそうだけど基礎とか柱とかがまず必要だ。そこから魔力を巡らせて、壁にする。
その巡らせる魔力に干渉して、シオンは結界の威力をちょっと弱めた。魔力を巡らせるのはほんの一瞬だから、そこに干渉できるなんて結構とんでもない魔術師、なわけで。
「我の結界も、わずかに弱められたの。さすがに、冗談のような計画を練るだけのことはある」
「それは、褒め言葉ですかな」
「褒めておらん」
俺だけならともかく、神獣であるテムの結界にまで干渉できたわけだからさ……というか、何だこいつ。
なんで、自分がトップじゃなくて王帝陛下を立ててたんだろう。実力でのし上がることくらい、できるはずなのに。
「なかなか強いでござるな。どこぞの馬鹿宰相とは、えらい違いでござる」
「さすがにそれは、褒め言葉ではないね」
「当然でござる」
それで、なんでファンランはそういう強敵を煽るかなあ。まあ、これが実力ってわけじゃないだろうし。
そう言えば元宰相閣下とか元王太子殿下とか、何やってんだろ? そんなことは、あとで考えればいいかな……と思ったときだった。
「わう、がうがう!」
「ひっ! な、何をする魔獣ごときがっ!」
「貴様ら、魔獣の分際で我々に歯向かうか!」
「ん?」
あのー、なんで今考えてた二人のような声が聞こえますかね。というか、まさかベンドル帝都にいるわけないじゃねえか、って思ったんだけど。
「ああ。彼らには、『偽王国』の中での作業を手伝ってもらっていた。まあ」
シオンがそちらをちらりと見て、うっすらと浮かべた笑いがすごく冷たいものであることに気づいた時、あれは本物なのだと分かった。
「彼女の言う通りの馬鹿にしては、とても役に立ってくれたな。あれは」
犬魔獣たちに吠えられて涙目の、元宰相閣下とその甥っ子が。
つーかお前ら、そろそろ生命要らないだろ。
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