80.撃って斬ったら
ベンドル援軍の数が、概算だけど半減した頃。いや、鳥魔獣呼んでくるからきりがないんだよな。どれだけ使役してるんだっつーの。
「土魔術、タイプ連射!」
「ギャヒイイイイ!」
「追加入りまーす!」
「ギャオウ!」
「ぎゃんっ!」
空を飛ぶタイプは、主に俺とシノーペで撃ち落とす。弓を使う兵士もいるし、射掛けてくれてるけど上空に逃げるんだよな、あいつら。
弓矢だと、上に撃つとどうしても途中で失速する。魔術も失速はする……と思うんだけど限界距離が段違いなので、主にこちらのお仕事ということになるんだよな。
弓兵が撃つのは、主にこちらが高い場所にいて低い場所にいる敵兵に向けて、かな。魔術を撃ち込むこともあるけど、周辺環境とかでどうしようもない状況になることもあるから。爆発で地面えぐれたり……あ、すいません似たようなことやりました。
ま、それはともかくとしてだ。
「つまらぬでござる! 自分が縛りたいレベルの強者は、あちらにはいなかったでござる!」
「あー、じゃあお手伝いお願いしますー」
「頼むよ、ファンラン。防御魔術、タイプ物理、魔術及び遠距離攻撃回避、強化っと」
「任されたでござる!」
突然乱入してきたファンランに、がっつり魔術をかけた上で敵兵内に突入してもらった。サファード様と同じレベルの魔術だけど、サファード様は重要人物だからで、ファンランは我が身を省みず敵の中で大暴れするから。どちらにしろ、腕はあっても危ないし。
ところで、ファンランが戻ってきたということは、だ。
「サファード様。旧王都を攻撃していた敵部隊は、ほぼ壊滅いたしました」
「そのようですね、お疲れさまです。ああ、まだ残りがいるようですから、油断なく」
「無論」
あ、やっぱり。
ちらりと見た旧王都側の平原には、多くの骸が散らばっていた。ベンドル軍がその大多数を占めているけれど、当然中にはゴルドーリア側の兵士たちもいる。
……戦争だもんな。いまいち、俺たちに緊張感はなさすぎだけれど、侵略してきた国の軍と我が国の軍がぶつかっているんだ。
「キャスバート君」
「あ、はい、続けます」
サファード様のお声がけに応じて、もう何度目かの土を手にとった。感傷に浸っている暇はなくて、とにかくベンドル軍を潰さないことには家に帰れないからな。
「……本来ならば、こういった鉄臭い仕事は僕や兵士たちだけでやれればよかったんですが」
「いえ。俺だって一応、兵士の端くれだったわけですし」
「ははは。そうでしたね、君は特務魔術師でした」
何か淡々と会話してるけどさ。
俺は土魔術で魔獣や敵を撃ち落としているし、サファード様は……あ、今一人の首はねた。
「ともかく、我が愛しのメルランディアのもとに帰りたいので邪魔はされたくありません」
「俺も、とっとと帰ってサンドラ亭でご飯食べたいです」
土の弾の雨を撃ち上げて、数に物を言わせようとしていた中型鳥魔獣の群れにぶち当てる。何しろ数だけは多いから、適当に撃ってもあたって落ちるんだよな。落下する一羽に巻き込まれて落ちるやつもいるし。
「よおし! 貴様、一端の武人と見たでござる! 縛って持ち帰るでござるよおおおおお!」
……何か、ファンランはいい獲物見つけたらしいな。頑張れ、相手の人。
いや、多分ファンランの方が強いって思ったからさ。俺の魔術も上乗せしてるし、なんとかなるだろう。
「とりあえず、邪魔ですっ!」
シノーペの撃つ岩の弾が、再び飛び立とうとした鳥魔獣たちを貫く。巻き込まれて落ちたやつなんかは、空に復帰しようとするからな。
っと、一部の敵軍が態勢を立て直そうとしてるな。味方は、いない。
「土魔術、タイプ壁、隆起しろ!」
その真ん中を狙って、地面経由で魔力を流し込む。防御用の壁を作るのと同じ要領で、シノーペが乱発していたアッパーをその場にいる連中に炸裂させたわけだ。いやごめん、ここで立ち直られたら戦が長引くんだよ。あとファンランが縛りに来るかもしれないし。
「……キャスバート君。あれを」
と、数人斬り飛ばしたサファード様が、血に濡れたままの剣の切っ先で遠くを指し示した。はて、何だ? と思ったがああ、分かった。
ひどく派手な鎧を着た、大柄なおっさんぽい戦士。周囲に数名の、戦士よりは地味だけどやっぱり派手な鎧を着た兵士たちを従えている。
「大将ですか」
「おそらく、そうでしょう。もしかしたら、こちらが本隊だったのかもしれませんね」
剣を振るって血を落としたサファード様のお顔が、ひどく残酷な笑みを浮かべている。あ、これは。
「大将戦、やるおつもりですか」
「したいんですけれど、僕が相手なら伏兵なり魔術師なりを控えさせますから」
要は、大将同士で殴り合いして決着つけたいけど向こうはこっちの大将を殺したい、だからいろんなものを仕掛けてるはずだ、と。
ならば、俺ならどうするか。俺と、そして。
「マスター、サファード。我らが共に行けば問題はない」
「うん、だよね」
神獣システムの守りがあれば、そしてお手伝いできる俺の魔術があれば、多分大丈夫なはずだ。
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