第48話 我は天界の最高神アマテラス

 我は天界の最高神アマテラス。

 今まで現世(うつしよ)で起こっていたことを映し出していた八咫の鏡に釘付けだったのじゃよ。

 まさか我が生まれる前の神話、世界の始まり、天地創造物語を当時と同じキャストが演じるとは……。

 確かに、現世に不穏な動きがあり、光と闇の神を現世に転生させたのじゃが……。そのとばっちりを受けて一緒に転生したのが光と闇の境界神、アマノザギリだった。最初のころはどう考えても二人のおまけ、元々3人とも三兄弟とも幼馴染とも言え、このまま、ラブコメ路線で行くのかと思いきや……。

 出会いを司る神、東大路キムコのおかげもあるだろう。

 しかし、三人の出会いは必然だったと考えるべきなのかもしれん。なにせ、出会いの場には、混沌だった時の記憶を持ち、意志を継ぐ斑がいた。奴こそがこの世界の特異点、ビッククランチを起こし、天界、現界、冥界の三界すべて巻き込み、ブラックホールのようにあらゆるものを引き寄せ、たった一点に圧縮して、再び源租の神混沌を作り上げようとしていた。


 じゃが、神から見ても得体の知れない堀川百合、まあ、一条学園の特異な校風と教育の賜物なんじゃろうが……。奴こそが斑に、人と人との間にある境界を超える感情を蘇らせたといえるじゃろう。

 その結果、斑は神羅万象の境界を取り除くべく「波紋領域、六合終焉」を展開した。六合とは天と地そして四方を差しており、世界そのもののことじゃな、その世界が終焉する。この天界を含んだ多層次元の大宇宙を終焉に導くビッククランチの領域を展開したとゆうことじゃ。

 ビッククランチとは現世の物理学者の言葉を借りると「拡大を続けた大宇宙が限界を超えると今度は特異点に向かって収縮に向かい、やがて、無次元の極小の粒に戻ることを云うのじゃ。

 我の言葉でいえば、混沌の血肉で構成された世界が再び収縮を始め、やがて混沌に戻っていくということじゃな。

 まあ、光と闇の神も神性をかなり解放して、斑の領域内で健闘したんじゃが、元々、我ら神とて、混沌の血肉を元に作られた体じゃ。体の内側に「波紋領域、六合終焉」を展開され、体を乗っ取られた時点で万事休すじゃ。

 じゃが、驚かされたのは、ザギリじゃ。奴の左目と左足だけが混沌の血肉で、それ以外の肉体はザギリのオリジナルだったとは……。しかも、その混沌の血肉はザギリの真の力を封印しておって、左目と左足が混沌の一部に代わったところで、引きはがしに成功して封印が解け、真のお姿、別天津神のお姿を現しになったのじゃ。

 そこからはまさに我らさえ、神話でしか知らぬ伝説級の物語、神が七日間でこの世界をお創りになった物語が、我の目の前で再現されるとは驚きじゃった。

 神は一日目に天界、現界、冥界の三界をおつくりになった。まさに、「天地開闢」じゃ。

 そして二日目に暗闇を光で一閃して、昼と夜をお創りになった。まさに、「光芒一閃」。

 さらに三日目には、大地を水で満たし海と川を創られ、そのそばに植物をお生やしになられた。花を咲かせ、水面に舞い散る花びらが川を下って海に出るさまは、まさに「落花流水」に例えられよう。

 続いて4日目には、天に太陽と月と星をお創りになられた。大地からみたその広大な風景は天が傘を被ったようで「天宇創生」にふさわしい。

 休む間もなく5日目には、魚と鳥をお創りなられた。まさにこの地に初めての生き物が泳ぎ飛ぶさまは壮観だったであろう。まさに「飛泳乱舞」じゃ。

 ついに6日目、神は自分の姿形を模倣して人間をお創りなった。その人間の創造の過程で、家畜や獣などが大地を闊歩するようになる。「神形模造」とは言い得て妙じゃ。

 ここまでは、まさに混沌を天魔返剣で切り刻み、その血肉で造形して創った世界の完成のはずじゃが……。

 まさに、ザギリの真骨頂、奴の神性、境界を存分に発揮して、同じ血肉から、境界を明確にして、世界のバランスに過不足なく神羅万象を作り上げたものよ。


 そして、神羅万象をお創りになった神がお隠れになった七日目。実はここからが最大の難関じゃったとは……。

 我はこの目で客観的に見てきたんじゃから、神の理(ことわり)としか言いようが無いんじゃか……。それでも、ここからは現世の物理学者の言葉を借りながら、大宇宙の成り立ちを語るとするか。


 斑が展開した波紋領域は無次元という存在しない次元じゃな。その次元でも素粒子が誕生しては消滅するという現象を繰り返しておる。無と有との間を揺らいでおるわけじゃ。これは量子ゆらぎという現象として名づけられておる。

何度も誕生と消滅を繰り返しているうちにエネルギーが蓄積され、このゆらぎが大きくなる。

 この素粒子の誕生と消滅を、ザギリたちを例に話しをすると、無次元では何も生み出すことはできない。じゃが、他の時空に作用する力はある、他の時空から素粒子(別天津神)を引き寄せたのじゃ。

 しかし、引き寄せた素粒子(別天津神)は常に一対。無から有へ次元が揺らぐたびに生み出されるのは粒子と反粒子という、衝突すれば対消滅という質量がすべてエネルギーとなって放出される物質であった。




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