第37話 ホームルームの予冷を聞きながら
ホームルームの予冷を聞きながら校門を駆け抜ける。
どうやら遅刻は免れたようだ。教室に飛び込み、席に着いた途端、ホームルームのチャイムが鳴った。
「遅刻ギリギリだな。明日からはもう少し早く来るように」
黒板の前にはすでに東大路先生が居て、俺の行動に呆れている。そして、教室を見回して、
「全員出席ですね。本日は5時限目と6時限目に生徒会主催のオリエンテーションが講堂であります。
主に、学園生活についての注意と部活動の紹介になる予定です。今日、話題になる服装規則について、このクラスの人の助力があったと聞いて、私も鼻が高いです。より楽しい学園生活を送れるように、社会人としてのマナーを身に着けるようにしましょうね」
「「「「……はい……」」」」
東大路先生――。社会人のマナーとか言っちゃてるし、しかも、生徒の反応も小さいし……。
「まあ、学校って社会に出るための訓練校だし、この経営戦略クラスのまとめ役も必要になるわね、このまま、一時限目のロングホームルームに突入ってことでいいかしら?」
「「「「……」」」」
「それでは、一時限目のロングホームルームです。まず、みんなでクラスの各種役員を決めてもらいたいの。最初にクラス委員を決めて、後はクラス委員に進行を任せるということでいいかな?」
クラスの同意も得ないまま、そのまま話を進める東大路先生。
「まず、クラス委員長に立候補する人はいませんか? 委員長を経験することで色々な出会いがあると思うよ。どうです? 誰かいませんか?」
「……」
誰も何も発言しないか? 話の流れから次は推薦を募るんだろうけど……。
それならミキかヤミを推薦したいんだけど……、推薦って云うのはこの学園には不向きだよな。だってこの学園は民主主義の体を取っているようで、資本主義が至高の方針だ。さて、どうすべきか?
俺のそんな葛藤を破るように一部から声が上がる。
「「執行部一任!!」」
……? なんだ、なんだ? 発言したのは内部進学組か?
「執行部一任という声が聞こえたが、それで問題ないかな?」
「「「「「意義無し!!」」」」
同時にあちこちから声があがる。
「よし、それなら、生徒会の意向は堀川百合さんなんだが?」
「「「「意義無し!!」」」」
「なら、堀川さん、前に出て挨拶をお願いする。その他の委員についての推挙について、司会をお願いするわね」
「はい」
返事をして堀川さんが教壇に向かう。執行部一任とは、執行部の考えを忖度しろということみたいだ。ここではそういうふうに決まるんだ? 堀川さんに決まった瞬間、斑がピクっとなっていたが、そのまま、うつ伏せ寝のままだった。まあ、斑には関係ないことだとは思うけど、堀川さんって斑にとって地雷のような存在で、デリケートな問題だと思うんだよな。
そう言えば、ミキとヤミは堀川さんに昨日のことは聞いたんだろうか? 遅刻ギリギリになってしまったんで、二人に聞く暇が無かったんだけど……。
でも、横で挨拶の終わった堀川さんに拍手を送っている二人を見ると、堀川さんがクラス委員になることは問題ないんだ。堀川と斑の確執については休み時間でも聞けばいいか。
さて、堀川さんは上手く話を進めて、次から次へと委員を決めて行く。委員はエスカレター組が推薦や立候補でつつがなく決まっていった。
結局、30分ほどですべての役員が決まり、先生も満足していた。
「こういう人選を伴う会議が早く終わるのはあなたたちが優秀なおかげね。お互いに牽制し合ってグズグズするのは愚の骨頂。しがらみを捨て、過去の実績のみで適材適所に人を配置する。選から漏れた編入組はこれから自分の実績を示せばいいだけです。
という訳で、さすが経営戦略クラスの生徒達ね。余った時間は有意義なことに使ってもらいます。そういう訳で、後は自習ね」
そう言って、東大路先生は教室を出て行ったのだ。
さて、机に臥せっている斑の反応は……?
東大路先生が教室を出て行った後、堀川さんは席に戻って教科書を広げている。
そこに不機嫌そうに声を掛けたのが斑だ。
「お前、なんで、クラス委員になってなったんだ?」
「だって、みんなにその役割を求められたから。私はみんなの役割をまっとうしないといけないの……」
「はあ~、訳わかんねぇな。お前、そういう考えはやめた方がいいぞ。利用されているのが分かんねぇの?」
「利用? 自分のためよ。親の期待に応えたいから!」
「親? そんなクソ! 相手にすんな!!」
斑がいきなり怒鳴り声を上げた。
声の大きさに、二人はクラスの注目を集めた。そんなことも気にすることなく、斑の話は続く。
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