第31話 *****斑視点*****
*****斑視点*****
生徒会に邪魔されて、興味を持った女がこんな奴だったとは……。
これでも、俺はここらへんじゃ狂犬と恐れられた斑様だぞ。
大体の奴は俺を遠巻きにして、関わろうとしない。それが俺の睡眠を邪魔した挙句、俺を保健室に連れて行こうとする。
まあ、途中で追っ払ったが……。あそこまで俺を恐れないのは何かある。まさか、俺やあの双子みたいに、神の生まれ代わりか?
それにはもちろん根拠がある。奴の「やめなさい」の一言で、俺の動きが止まった。
柄にもなくそれについて調べて見ると、この国には言霊(ことだま)信仰というものがあるらしい。言葉には霊力があり、言葉を発することで現実に実現させることが出来るという信仰だ。
バカらしい。だが、信仰というぐらいでその神も当然いる。
「悪事も一言、善事も一言、言い放つ大神」と云った一言主(ひとことぬし)大神である。
奴がこの一言主の生まれ代わりだとしたら、神縛りの言霊は厄介だ。
別にビビッてるわけじゃない。憂いは排除しとかないと後々計画に支障が出るかも……。
まったく、俺らしくない考えだ。後先考えないのが俺の性格のはずなのに……。まさか、もう、あの女の術中にはまっているのか?
そう考えて、隣の女を観察しているがそれらしい感じはまるでない。まさか、隠蔽を属性にする神なんていたのか? というか元々、神は色々なことを隠蔽しているから、神話が正しく伝わっていないわけだ。
この俺も一部にして全体、始まりにして永遠を生きて来た原初の神の生まれ変わりだ。
だからこそ、双子やあの先こうが神の生まれ代わりだと、俺の目覚めた本質が訴えている。
あの天野というやつだってそうだ。双子と同等、しかも光と闇の相反する属性の双子のどちらにも与(くみ)することなく対等な関係を保つなど、一体何の属性なのか俺にもまだわからない。だから、警戒しているんだが……。
堀川っていう女も、まあ、俺が本気を出せば、俺に勝てる奴なんていないから、あの天野と同じように遊んでやればいいんだが……。
まあ、親切にしてくれるやつにいきなり喧嘩を売る訳にもいかないし、もう少し観察を続けるのも悪くない。ひょっとして、俺の味方かもしれないしな……。
女って何を話すことがあんなにあるのか? 堀川は他の女といつもしゃべっている。俺に話しかけるすました感じじゃなくて、コロコロとよく笑っている。柔らかい表情は年相応で、俺と接するときのような大人びたところがない。
まるで俺を子ども扱いしているのか? 冗談じゃない。てめえより数万倍俺の方がすげぇんだ。
次はそこのところハッキリわからせなきゃな……。
そんなことを考えているうちに、堀川を呼びにきた別のクラスの女と教室を出て行った。
中学校からの連れか? 連れが居ないと通学も出来ないのか? てめえの方が子供じゃないか? クラスが違うのに帰りの約束をしてまで一緒に帰るとはご苦労なことだ。
まあ、俺には関係ないことだ。それより堀川の尾行開始だ!
堀川と女は校門を出て行く。
この一条学園は、一条電鉄の学園調布駅を挟んで南に小学部から高等部の敷地があり、北に大学がある学園都市の中に在る。
一条電鉄は一条財閥が戦前からこの国の首都を東西に開発するための中心的存在であり、現在は一条銑鉄の沿線上に、大学を始め、一条財閥の各種事業本部や商業施設や一条財閥が持つプロ野球チームのホームグランド、それに陸上やサッカーを行う多目的スタジアムなどが立ち並んでいるのだ。
堀川と女は駅の方に話しながら歩いていく。駅の方なら都合がいい。俺の住んでいる所は大学側の下宿が立ち並ぶエリアの一角にある下宿用アパートだ。
しかし、そう考えたのも束の間、堀川たちは駅の中に入って行く。
くそ、電車通かよ! スイカは持っているけど……。どこまで行くんだ? ある程度距離を取っているから、会話の内容もよくわからない。
そんな心配をよそに堀川と女は電車に乗り込んだ。俺は一つ後ろの車両に乗り込む。
堀川たちはドアの近くに立ち、終始朗らかに笑いながら会話を続けている。
ここまで見てきた感じじゃ本当に普通の女子高生だ。俺に見せたような態度も誰にも見せることがない。
3つ目の駅で女が降りて、堀川だけになった。女を見送ったドアが閉まった後、堀川はスマホを取り出だし、何か操作をしている。
彼女が何をしているのか非常に気になる。ゲームでもやっているのか? それとも誰かに連絡を取っているのか?
真剣にスマホを覗き込む表情が凄く気になる。
そんな状態で1駅を通過して、麻布丘駅で彼女も降りた。確かこの駅は一条財閥の重役が多く住む高級住宅街として有名な駅だ。
さっき女の降りた駅よりも都心から離れるが、快速が止まるため、都心に出るのは麻布丘駅の方が便利がいい。
やはりあの女も金持ちのお嬢さんなのか? 俺は彼女と距離を置いて女を追いかけた。
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