第26話 オッドアイズがすべての元凶

 オッドアイズがすべての元凶みたいな言い方だな。

「すみません。波紋展開するときは、眼帯を付け替えます。必ず守ります。だから殴るのだけは……」

「絶対ですよ!!」

「はい……」

 ミキの強い言葉に消え入りそうな声で答えた俺。手足が縛られているのは俺が波紋展開するのを防ぐためだったのだ。それほど畏れる中途半端な波紋展開。せめて両目で波紋展開ができれば迷惑を掛けないだけど……。


 記憶を蘇られるのはムリ。裸を見られないようにするには対処法のみ。イライラが頂点に達したように指をポキポキと鳴らすのを止めないヤミの顔に電球が浮かんだ。

あまりにも古典的な展開。何かろくでもないことを思い付いた顔だ。

 

「こうなりゃー、斑の弱点を見つけ出すしかないだろう。ザギリ、お前、斑を見張れ!」

「俺が~?!」

「わたしたちが斑を付け回すわけにもいかないですし……。斑が神の生まれ代わりなら、なんの神か分からなければわたしたちも対処ができません。それさえ分かれば弱点もわかるのですが……」

「ミキさんやヤミさんでも、斑がなんの神の生まれ代わりか分からないんですか?」

「うん、ザギリに一発入れられる闇属性でも光属性でもない神ということなんだけど……、心当たりがないんだよね。あたしには……」

「そう、せめて波紋展開してくれれば……、情報が少なすぎるんですよね」

「なるほど、それを俺に探れと」

「そういうこと、一週間しかないからどんな手を使っても、ザギリにはそれを掴んでほしいのです。あなたの波紋展開の容量用法を守って使用を許可します」


 容量用法を守ってって、眼帯を付け替えろってことですよね。自分たちに被害がでないように……。それでもって結局、俺はミキとヤミの噛ませ犬的な犠牲を強いるわけですね。

 でも、一条学園のトップに君臨うる二人に逆らうと何をされるか分からない。最悪の場合、退学させられるかも……。

 しかも正座も限界だ。

「はい、明日から斑を見張り、必ずやつの弱点を探りだします!」


 そう返事した時には、すでに正座をさせられて2時間近く経っていたんだ。

 ミキとヤミに解放された後、足が痺れて立ち上がることが出来なくて、四つん這いで部屋まで帰ったことは良い思い出だ。


 ◇ ◇ ◇

 

 翌朝、ミキとヤミとは別行動で学校に出掛けた。休み時間は生徒会に匿ってもらうようになっていて、斑のことは俺に一任ということだ。

 大物ぶるのはやめて欲しいと思ったけど、実際大物だから黙っていた。


 朝、教室に入って斑を探す。

 やつは驚いたことに、言われた通り5メートル以上離れた窓際の席に座っていた。

 絶対ひと悶着あると思っていたんだけど、割と素直ないいやつなのか? それとも、退学はあんな奴でも不味いと考えるのか?

 しかし、入学式の日といい、昨日といい傍若無人な振る舞いのうえ、理由を知っているのは俺達3人だけとは云え、関わった斎藤が病院送りなっているんだ。みんなが恐れて距離を置いているのも当然か。


 それにしても、机に被さってふて寝でもしているのか?こちらを気にする気配もない。

 そうこうしているうちに、ミキとヤミが生徒会の諸君とともに教室に現れた。生徒会の諸君は昨日までのメンバーとは違いブラックスーツにサングラスでSPにしか見えない。

隙を見せない目配りと態度は、格闘技の有段者を思わせ、それように入学させたと一見で分かるけど、斑に対抗できるか?

 しかし、斑は机にうつ伏したままで無反応だ。

 そして、始業のチャイムが鳴り、SPが出ていくのと入れ替わりにキムコ先生が入ってきた。

「みんな、オッハヨー。今日も一日、しっかり勉強しようね。じゃあ出席を取るよ!」

 天野狭霧、・・・・・・・」

「はい!」

 小学生のテンションでいきなり出席を取るから、元気に返事をしてしまった……。


「斑君、――斑!! いねーのか?!」


 返事が帰って来ないので、名簿から顔を上げた東大路先生。

 そのせいで俺と目が合った。なんとなく気まずくて、斑の座っている方に目を逸らした。その視線を東大路先生は追っかけたようだが……。


「斑君の席が変わっているようですね?」

 不思議そうな顔をされても……。それにしても、昨日の今日で生徒全員の座席表を覚えているのなら、出席取らなくてもいいんじゃねー。


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