第14話 席替えは滞りなく終わり、
席替えは滞りなく終わり、その後、簡単な自己紹介。
俺はみんなから奇異の目で見られている。まあ、当たり前だな。前髪で右目を隠し、その下には眼帯だ。一応、目の病気ということでヤバい奴じゃないとアピールはしておいたが、どこまで信用してもらえるか?
割と同情を引く様な話なのに、俺の自己紹介の時、ヤミもミキも肩を震わせ笑いをかみ殺していたのだ。
ほとんどが内進組。信頼ある二人の態度は俺の話がうそ八百だと知らしめているようなものだ。まあ、気にしないけど……。
その後、雅先生から教科書を渡され、今後のスケジュールの話が終われば、今日の予定は全て消化済みとなった。
雅先生が教室を出て行くと、途端に教室が騒がしくなる。
ミキとヤミは生徒会活動あるとさっさと教室を出て行った。周りを見回すとほとんどの生徒が帰り支度を始めている。持っているバックから察するにこれから部活なんだろう。
さすが一貫校。きっと部活も中学からやっている部活に決まっているんだろう。
俺は……、まあ、オリエンテーションを見てからでいっか。大体、中学の時だって部活はやっていなかった。
そんな中、俺に話しかけてくる奴も……。俺の前の席の奴だ。
「よおっ、俺は斑主人(まだら かずと)。天野だっけ? 俺も君と同じ編入組じゃん」
「うん、それは自己紹介で聞いた。俺に何のよう?」
「いや、先生も言ってただろ。席が近くなったのも何かの縁じゃん。しかも天野ってS級美女二人に挟まれて羨ましい限り。お前じゃ不相応だから席を代われよ! 痛い目に遭わないうちに!」
まあそう来るだろうな。俺みたいなのと仲良くなりたいとは思わないだろな。かなりのイケメンだけど、金髪を立たせたなかなかのヤンキー面だ。人は見た目が9割って云うし、ミキとヤミがお目当てだとして……。性格はかなりの自己中か?
そんな話を周りに聞かれていたのだろう。俺たちは取り囲まれたみたいだ。どうやら内進組の人達にとってミキとマキはすでにカリスマ級で、彼女たちに心粋する親衛隊が居たみたいだ。
「お前ら、編入組の癖に一条家のお嬢様たちに取り入ろうとしてるのか?」
ドスの利いた声でメンチを切ってくる教室に残る生徒たち。その数およそ10人。30人のクラスのうち約3分の1だ。俺たちに話しかけたのはガタイのいい柔道部タイプの奴だ。名前は知らん。
「て言うかー。そこのアイパッチのやつ、随分、お嬢様と親しそうだったじゃない」
「うん、それは言えてる。これってどういうことかな?」
そして、後から声を掛けて来た二人組女の子は、今風に髪を染めてうっすら化粧をしている派手目な女の子だ。名前は聞いたけど残念ながら忘れた。
男女の扱いが違うのは勘弁してほしい。だって、このクラスの女子は美人ぞろいだ。
「ねえ、どういうことかな?」
うん、大事なことだから二回言ったんだろうけど、その言葉からは悪意も善意も感じられない。
あれ、俺って小さい頃から虐められて、両親さえ相手にされなくて……。こういう悪意には敏感だったはずだけど……。
――そっか、俺って好意だけじゃなく悪意にも鈍感になっているんだ。いやいや、ラブコメの主人公補正がここで出てくるとは、作者もびっくりだよ。
この二人の態度も好意の裏返し?! ひょっとして妬いているのか? どんなハーレム展開だよ。
俺の視線は無意識に一般生徒より短めのタイトスカートから覗く生足ふとももにいく。
タイトスカートって基本パンストだろ? それが生足って想像以上にエロかった。
「どこ見てんだよ?! キモっ」
女の子が心底嫌そうな顔で後ずさると、そこに別の男が割り込んできた。
「お前、ふざけてんのか? その調子でお嬢様たちに馴れ馴れしくしたら殺すぞ!」
「どうせ、お嬢様たちの気まぐれですぐに相手にされなくなるんだろうけどな」
あの二人とは只の前世の腐れ縁だけど……。
俺は心の中でそう呟いたが……。これって悪意を向けられているんだよな? でも、それさえ感じない? 悪意にも好意にも鈍感ってどんな主人公だよ。作者この後、続けられるのか?
まあ、バカな独り言はここまでにして、これは境界神として目覚めた副産物だろ。光と闇の境界に立ち、それらのすべてをはじき返す結界の力。言葉に怯えなくなったのは良かったとして、どうやってここから逃れるか?
だれもが他人を見下し上に立ちたいわけで、これが普通の学校と違って就職してまで一生続くんだから熾烈にもなるか……。
もはや、一刻の猶予もないみたいだけど、俺も下に着くつもりはない。
そんな時、斑(まだら)君が話に割って入ってくる。
あれ、こいつ逃げてなかったのか? お前も編入組だろうが!
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