第13話 その頃、神界では――

◇◇◇


 その頃、神界では――。

 アマテラスは大いに悩んでいた。

 神界に充ちるエネルギーが減少している。エネルギーを供給している人々の信仰心がドンドンなくなっているのが原因だ。神を崇め畏れた時代はもはや過去のものになっている。

 我が子孫であるはずの皇家の娘さえ、神道をないがしろにして、西洋かぶれのバテレンの大学に行ったあげく、誰がお姫様を落とせるかダービー!! パフパフ!! に乗った金目当てのチャラい種馬に言い寄られ、尻を振っている始末だ。

 しかも、我が子孫の娘を月に、自分を太陽に例えやがった。こら、我を差し置いて何言っとんじゃ、ぼけーぇ!!

 皇家の格式も威厳も地に落ち、羞恥心はどこかに置いてきたようだ。

 まったく、嘆かわしいことである。

 臣民の先頭に立ち、我らへの信仰心を示す立場でありながら……。

 架空の国の話でも、これ以上言っちゃうと、神よりも怖いUNNEI様に我も消されてしまうかもしれん。


 それならと、神を崇め奉れと自然の驚異を起こそうとも、人間は不平不満を募らせるだけで、自然を畏れ神に祈ることなどありはしない。

 昔はよかった。災いが起こるたびに新しい神が祀りあげられたというのに……。

 のう、道真(みちざね)殿?!


 人々の抱く情念こそが神界のエネルギー。そのエネルギーで神々は存在している。神の存在をないがしろにし、悪感情を増大させてきた結果、闇の神々だけが力を持ち、光の神に牙を剥きつつある。

 神界のパワーバランスが崩れてきているのだ。


 やれやれ、悪感情の情念が積もり積もれば、天変地異となり自らの降りかかるというのに。

 その悪感情を自らの体に取り込み浄化させることが出来る唯一の神、闇の神。浄化するには自らを傷つけ荒ぶるため、光の神の対極として忌み嫌われ、真の存在意義を示せない名無しの神。

 下界にあまりに悪想念が蔓延したため、闇の神を唯一、傷つけることが出来る光の神と共に堕天させたのがことの真相……。まさか、アマノザギリも同様に堕天していたとは……。

 あやつのおかげで光の神と闇の神は争い難くなってしまったが……。まさか、ザギリにあのように闇の神を傷つける力があったとは……。どおりであの三つ子、天界で三すくみだったわけじゃわい。

 それに、なにやらお互いに意識しているみたいなのじゃが? 下界の悪想念の浄化は上手くいくかどうか?

 鍵となるのはあのキムコという者か?


 そう言えば居たな、恋愛の神? いや、きっかけを与えるだけの出会いの神であったか?

 出会いそのものには善も悪も無いんじゃが、最近では出会いに感謝する者も減って、奴も神界では肩身の狭い思いをしていたようじゃが……。

 あまりに原始的な神で、かの者にも名前がなかったためだとしたら、可哀そうなことじゃ。

 そう言えば、最近は姿を見んかったが、まさか堕天していたとは……。 だとしたら、先の皇家の娘のどうしようもない出会いも仕方ないのかもしれん。

 恋愛感情というやつは、光も闇も超えたところにある感情だでな。その感情が引き起こすひきこもごもは、周りを巻き込みやがて膨大な情念のエネルギーを創り出すんじゃが、本人たちの意思じゃどうすることもできんだろし、医者どころか神だって恋の病を治すなどできんのじゃからのう。

 罪作りな神じゃ。

 しかし、人間のセンスもなかなか鋭いもんじゃ。気無し、気とは我のいうエネルギーのことじゃ。それが無い子で気無子とは。

 出会いその物には情念はなく、エネルギーそのものを生み出すわけではないからのう。その出会いがどんな膨大なエネルギーを生み出すことになるかどうかはこれから次第……


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