第5話 無意識に口走った言葉だけど

 無意識に口走った言葉だけど、面接官はその言葉にニヤリと笑い「面接は以上です」と俺に退室を促した。てっきり落ちたと思っていたら後日合格通知が来て驚いたのだ。

その理由がこの二人のご令嬢? 一条財閥は腹ン中にとんでもないバケモンを飼っていたもんだ?


 そんなことを考えているうちに、マンションの前に連行されていた。

 そして、二人はオートロックを解除すると、エントランスを抜けエレベーターに乗り込むと最上階の10階のボタンを押している。


 なんとこの二人の部屋は俺と同じ階なのか? まさか部屋が近くとかじゃないよな?

 そう考えているうちに、エレベーターは10階につき、奥に向かって歩いていく。

「1010号室、これが私の部屋」

「そんでもって、1012号室があたしの部屋だ」

(別々の部屋を借りているんですか? そして、俺の部屋は1011号室なんだよな)

 俺は心の中で自分の部屋を案内した。まさか、この二人に挟まれていたとは? いや、この際だ、どうして事故物件なのか聞いてみるか?

 なにせ、この立地の良い高級マンション、家賃が月10万円以上かかるんだが、1011号室は事故物件ということで、格安で借りられたのだ。

「あのー、一条さんたちは、家から学園に通わないんですか?」

「そうね、その辺の話も含めて、話しましょうか?」

 そう云うと、一条さん(白い少女の方)はドアを開けて、「さあ、どうぞ」俺を引っ張って入った。 

 間取りは俺の部屋と同じで、部屋の中は10畳ほどのリビングダイニング、その奥に8畳ほどの部屋とクローゼットがある。

「お茶を入れるから、その辺に座って」

 白い少女は対面式の台所の方に行ってしまった。俺は黒い少女に促されるままに二人掛けのソファーに腰かけると、隣に黒い少女も腰かけた。

「さっきの質問に答えると、あたしたち家から出たのよ。もう高校生になるし、一人暮らしがしたいって」

「よくそれで両親が許しましたね?」

「んっ、反対されたぞ。それで言い争いになって、そんなに云うなら、一条の本家の人間として一人前であることを示せって」

「それで、一人前であることを示したと?」

「そうそう、あたしの場合はライバル社から画期的な新商品のデータを盗み出して、ついでにデータを改ざんしてやってさ。その会社、今株価が大暴落してるな。後、提携寸前のライバル企業同士の話もTOBでぶち壊してやったし、あたしの力を持ってすれば、どんな極秘情報も筒抜けだし」

「はーあっ、(どうやら汚れ役は魔女のイメージのとおり、この黒い少女が担っているらしい)」

 そこに、コーヒーカップを運んで来た白い少女が、テーブルの向こうに正座で座った。

そして、「どうぞ」俺の前にカップを置き、自分はマグカップを祈るように両手で持って、話し始めた。

「私の場合は、社内で横領をしていた役員を更迭したわ。その役員が担当していた部署の人事を一新して、経常利益を20%上げたわ。私は不正を許せないし、人身掌握術は得意なの」

「それで、晴れて一人暮らしを始められたと……。(こっちの白い少女は聖女のイメージのとおり、正義感が強くてカリスマ性があると)」

「そうなの。後はどこに住むかだったんだけど……、ちょうど、一条が社員用に建てたマンションで単身者用が2部屋あるってことで、学校にも近いしここにしたのよ」

「ここって、一条財閥の社員用なんですか?」

 俺はその話は全く知らなかった

「まあ、空き部屋は不動産に出して普通に賃貸しているけどな。一等地だし。そういうわけで春休みからここに住んでいるんだけど、あたしたちが住みだしてから、あたしたちに挟まれた部屋の住民が出て行った。今日、その部屋に引っ越してきた奴がいるはずなんだけど……。まだ、挨拶が無い。だから、そいつも追い出すことにした」


 待て、その部屋に引っ越して来たのは俺だけど……。この黒い少女が前の住民が追い出したのか? 美少女に係わらず過激な思想の持ち主だ。ここは、早急に不貞を詫びるべきか?


「すみません。挨拶が遅くなりました。隣に引っ越してきた天野狭霧でーす。えっと、一条夜充さん。やっといい条件で借りられたんです。追い出さないでください」

「嘘! お隣さん?」

 驚いた顔をする夜充さんと違って、白い少女は落ち着いたものだ

「偶然というか。でもザギリさんが私たちの間に入るのは必然かもです、悪霊もそれを抑えようとする善霊も大人しくなりますね」

「あのー、悪霊と善霊とか何なんですか? やっぱりあの部屋、噂どおり出るんですか?!」

 あえて何がとは言えない。

 いや、事故物件と言われても、格安さに目が行って全然気にしてなかった。俺は見た目と違って、とっても常識的な神経の持ち主だ。そういう得体の知れないものにはトコトン弱い。あの不動産屋も、敢えて見た目で俺に進めて来たんだろうけど……。

 でも、異常さなら……、この二人だって負けてはいない。この二人に頼んで追っ払ってもらうか? この白い少女は浄化魔法が使えそうだし、黒い少女の方は、――格の違いで悪霊を圧倒しそうだ。

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