第59話
「くくく。カッコつけて飛び蹴りなんざするからそうなるんだ。だが俺は堅実に行くぜ」
イージスは狭拡散型ショットガンを構えた。
「バイクで近付き、クモのように密着してからこいつをぶち込んでやるぜぇエ!!」
コルデーは道具箱の中から雨除けのビニールカバーを取り出すとイージスに向けて投げつけた。
「ぐあっ!前が見えねえぇ!!!」
「よっこらせっ」
クースケはあえて速度を落として体当たりをした。
「うわらがっ!!」
またもやクラッシュ!
しかし別に銃で撃たれたわけでもないのだ。
つまりとってもスーパーセーフティー!!
「だらしねぇ先輩方だぜまったく!!」
「ああ。あっという間に俺達だけになってしまったようだな」
デュエルとバスターはそれぞれ銃を構え、油断なく隙を伺う。
先に仕掛けたのはバスターであった。
懐からやおら携帯電話を取り出す。
一体彼は何をしようと言うのだろうか?
「なんだ。メルトか。今忙しいんだ。ヒールの踵が折れた?歩けないから靴屋まで送って欲しいだと?仕方ないの奴だ」
バスターは携帯電話をしまうと。
「すまない。エンジントラブルだ」
「おい!バスター!!エンジントラブルってお前自分のバイク今日出かけるてめぇで弄ってたろっ!!」
「それがどうも戦闘中に被弾した際にラジエーター系がいかれたようだ。冷却水が漏れている。このままでは熱暴走で爆発する危険があるかもしれん。すまないが戦線を離脱する」
「嘘こけっ!!てめぇ一発も喰らってないだろっ!!そもそもそのバイク電動式じゃねえぇかっ!!!」
バスターは携帯電話を取り出した。
「メルトか。これからそっちへ向かう。場所は?ふむ。じゃあ立っているのもなんだしそこら辺近くの喫茶店で休んでいろ。俺が探す」
「てめぇ彼女自慢したいだけかよぉおおおお!!!」
バスターの緑色のバイクはゆっくりと速度を落としていく。
彼は一回も攻撃を受けていない。
つまりスーパーセーフティー!!
「おーいイッパイアッテナ。今お前立体映像だよな?」
「それがどうかしたのかクースケ?」
「映像投射で道路の映像投射しろ」
「あのなぁクースケ。あくまで立体映像なんだぞ。別に橋を造ったから所詮立体映像なんで河を渡れるわけじゃないんだ」
「いや。それでいいんだ。俺が指示したら草の上に道路を造ってくれ」
「まぁいいけど」
クースケはウィンカーを出して交差点を曲がった。
「逃がすかよっ!」
デュエルは追従するべくクースケの運転する軽トラックを追う。
そしてしばらくして。
クースケは何もない崖に向けてハンドルを切った。
「な、なにいいいいっ!!!?」
デュエルは驚きのまま道路を直進する。
そして。
銀色の彼のバイクは潰れたパチンコ店に激突した。
彼のバイクもまた。電動式である。
爆発はしなかったようだ。
やはりとってもスーパーセーフティー!!
額に傷位は残るかもしれないがスーパーセーフティー!!
そしてクースケの運転する軽トラックは崖ではなく、道路の上を走って行った。
「あの。クースケ=サン。運転中に携帯電話の操作は危険だと思うんですけど」
助手席に戻って来たコルデーがたしなめる。
「知ってるかコルデー。緊急避難って言ってな。自分の命が危うい時は法律を破ってもいいんだ。同様に他人の命を救う為なら法律を破っても構わない」
「それ。ジェイムズ=サンに教わったんですか?」
「あの人も他人の受け売りらしいけどな」
それからしばくして。
ネオサイタマ市内の病院。
「ううう。頼む。早く。治してくれえええ」
「チミタチ。僕が医学生か何か見えるのかねぇ?」
安っぽい代用珈琲の匂いをまとった白衣の老人が処置室に現れた。
「アンタめっちゃ優秀な医者なんだろうっ!!名刺だってあるよっ!!」
ストライクは携帯電話で交換した名紙と、その時AKIRAで撮影した記念写真をジェイムズ氏に見せた。
「ふむ。AKIRAで私が会った事のある連中だったのか。まぁよかろう。格安で引き受けよう」
「ドクタージェイムズ。すみませんが追加の患者をお願いできますか?」
「既に四人待ちなんですか?」
「ドクターの知人らしいんですよ。なんでもガールフレンドに二股がバレて刺されたアフリカンアメリカンの男性らしいんですが」
「やれやれ。今夜は徹夜になりそうだな。症状の重い者から手術室に運んできてくれ」
「わかりました」
サイバーパンクネオサイタマ 虹色水晶 @simurugu
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