オマケ~青葉と紅葉~

 僕が目を開けたとき、飛び込んできたのは白い天井だった。


 ――ここはどこだ?


 曖昧な記憶が蘇ってくる。

 入学式に遅刻しそうになって、走っていたこと。

 疲れて桜の木の下で休んだこと。

 ホウキで魔女が空を飛んでいたこと。

 魔女のスカートの下が桜と同じ色だったこと。


 そして……魔女にホウキで殴られたことを――


「ここは病院か?」


 魔女に殴られて、僕は気絶した。それで、病院に運ばれたに違いない。


 ――自分で気絶させておいて、救急車を呼んだのかな?


 今、パイプベッドに寝かされているのはそのためだろう。周りを見回すと、薄いクリーム色のカーテンが周りを囲んでいる。

 入院はしたことはないが、お見舞いぐらいは病室に行ったことはある。


 ――きっとそうに……


「気が付かれましたか? 恐縮です!」

「わッ!」


 突然、頭の上のほうから顔が現れて、僕をのぞき込ん出来たではないか!?

 ビックリした僕は飛び上がり、のぞき込んだ人物の額に頭をぶつけながら飛び上がった。


「痛ったぁ……何するんですか!?」

「それはこっちのセリフだ!」


 ぶつかった額に手を当てながら、その人……目の前にいる癖っ毛をポニーテイルにしている女子は、僕を気絶させた魔女ではないのは確かだ。それに、胸元に『新入生』と書かれたリボンを付けているあたり、僕と同じ新1年生か? ということは、ここは病院ではなく、学校の保健室なのかもしれない。


 それに、


「ともかく……この青葉あおばがずっと追い求めた『魔女』を目撃した貴方にインタビューをば!

 で、魔女はどんな人でしたか? ホントにホウキだけで飛んでいたんですか? パンツは何色? チャッカリ、スマホのアップロード機能が働いていたことは、お気づきに……」


 と、目を虹色に輝かせ、僕の寝ていたベッドに上がり込んでくる人なんて、僕の知り合いにはいない。


 ――この人も顔が近いって!


 美人であろうが、パーソナルスペースが近い人は嫌いだ。


「ここにいた!」


 ――次はなんだ!?


 突然、ベッドの周りのカーテンが開いたかと思うと、また女子が現れた。しかも、目の前に迫る青葉と名乗る女子と同じ顔をしている。ただ、髪をツインテールにしているだけだ。


紅葉くれは、ようやく見つけたんですよ!」


 虹色に輝く瞳を少しも動かさずに、彼女は現れた女子にそんなことを言ったようだ。だが、現れた女子は青葉なる子を羽交い締めにすると、ベッドから引きずり下ろした。


「病人さん。姉がご迷惑をおかけしました!」

「紅葉、何を……」

「いいから、青葉は帰る!」


 そして、そのまま連れ去っていく。

 姉と言っていたから、このふたり……青葉と紅葉は双子なのか?

 確かに同じ顔をしていて、ほとんど区別が付かない。そのために髪型で分けているのかもしれない。


 ――うちの高校って変なのばっかなのか?


 僕の高校生活は……大丈夫なのだろうか?

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はじめましての距離~遅咲きの桜の下で~ 大月クマ @smurakam1978

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