第9話
「よくぞ遠いところからおいで下さいました。ワタクシ、サイアス様に代わって、惑星王代理を勤めております、シュラと申します」
第一惑星人達が船を降りると、白いローブに身を纏った痩身の男が、ニタニタした薄気味悪い笑みを浮かべながら待ち構えていた。サイアスがいなくなってから、ずっとこの惑星を治めてきた男だ。
細くつり上がった三白眼に、やたら口角が上がった薄い唇。背はやたら高いが、ローブの裾は三十センチ程引き摺っている。前にだらんと垂らした手からは、生活するのに不便だと思われるくらい、爪が長く伸びている。
驚いたのは第一惑星人の従者達も同様だ。彼らもこの惑星の者に会うのは初めてだ。
灰色の肌に長い尻尾、それに惑星王代理と名乗る目の前にいる胡散臭い男。顔には出さないが、少し動揺している。
「丁重な歓迎、誠に感謝する。す──」
「ワタクシ達の惑星では、あなた方の惑星を第一惑星と呼んでおります。異星の事になどまったく興味がありませんので。この惑星にいる間は、ワタクシ達の決まりに従って頂きたいかと」
「それは申し訳なかった。無礼な真似を働いてしまったこと、お詫び申し上げる。私が第一惑星の惑星王、ガルドだ」
シュラの前に右手を差し出す。握手を求めての行動だ。
しかし、シュラは冷たい表情で一瞥しただけでその手を握ることはなく、何事もなかったように話し始めた。
「それでは、さっそく対談を始めましょうか」
ついに見兼ねた第一惑星の従者の一人が声を荒げた。
「貴様っ……!さっきから黙っていれば、誰に向かってそのような失礼極まりない態度をっ……!」
しかし、ガルドは無言で従者を制止し、表情を変えることなく会話を続けた。
「よろしく頼む」
「では、集会場の中へ案内します」
とてつもない緊張感が支配している。まさに一触即発だ。
第一惑星人一行とシュラは、集会場の中に入って行った。
集会場は、主に惑星の要人達が話し合いをするために用いられる。一般の者達が中に入ることはほぼない。今、中を警護しているリサとレンは、初めて入る神聖な場所に気圧されていた。
正方形に縁取られ、滑らかな綺麗な石で造られた大きな机と、数十人が座れるくらいの椅子がある。上辺と下辺の真ん中には、宝石のようにキラキラと輝く何色もの石で飾り付けされた、豪奢な玉座が鎮座している。ここに惑星王が座るのだ。
今は、上辺部にこの惑星で権威を持つ十五人の要人が着席している。ザイル教官の姿もあった。玉座には、惑星王代理のシュラが座ることになっているが、第一惑星人の迎えに行っているため空席だ。
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