第7話

 開いた扉の先には誰もいなかった。現実に戻ってきた。


 サイアスがいなくなった直後は、再び使用人が来るようになった。やがて成長したカイアは、使用人に辞めてもらい、一人での生活を始めた。カイアが一人で住むには、この家は広すぎたが、手放すことはできなかった。

 いつかサイアスがひょっこり帰ってくるんじゃないか、という淡い期待をいつまでも抱いていた。


「もうサイアスはいないのにね……」


 家には必要最低限のものしかなく、整理整頓されすぎていて、生活感が微塵も感じられない。


 サイアスの私物は、没収されてしまった。惑星王しか知り得ない情報や、重要機密があるかもしれない、と大人達が持って行ってしまった。


 中央にある螺旋階段を登り、自室に入ると寝台に倒れ込んだ。今日はいろいろありすぎた。疲れがどっと押し寄せてくる。


「はぁー……」


 仰向けに転がって呼吸を整える。


「私、独りぼっちだよ」


 意図せず声が震えてしまう。


「この惑星から出られないで、このまま死んでいくなんて、そんなの嫌だよ」


 右手で両目を覆う。目頭が熱くなってきた。


 もういい。どうせ誰も見てない。


 一息吸うと、箍がはずれた。抑えていた感情が決壊し、大声を上げて泣き出した。

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