第6話

 惑星には、惑星王と呼ばれる、惑星を統べる存在が必ずいる。カイア達がいる惑星の惑星王は、サイアスだ。彼は、民から愛され信頼されていた。


 カイアの母親は、カイアを産んですぐに永遠の眠りに就いてしまった。カイアの父は、男手一つでカイアを育てていたが、病魔が彼を襲い、幼いカイアを残して母の元へ旅立って行った。


 独りぼっちになった彼女を引き取ったのが、サイアスだった。


 二人はすぐに打ち解け、本当の父娘のように暮していた。


「サイアス。またどこか行っちゃうの?」


 自室で荷造りをするサイアスの背後から、カイアの寂しそうな声がする。


「僕は惑星王だからね。宇宙の平和のためには、惑星同士がよく話し合って、お互いを理解し合わないといけない」


 カイアは部屋に入り、荷造りの手伝いをする。部屋中、衣服と書類が散乱していて足の踏み場がない。


 サイアスは、自分の身の回りのことが一切出来ない。カイアが来た当初は、使用人がやってきて、料理や掃除などの家事をしていた。少し経つと、カイアは使用人の手伝いをするようになり、今ではカイアが家事全般をこなしている。カイアの手伝いを、サイアスがするということになっている。


 カイアは、衣服を綺麗に畳み、書類をまとめて紐で縛って、革製の鞄にどんどん詰めていく。すると、部屋に床が現れ、あれよあれよという間に荷造りは終了した。


「はい。おわり」


「ありがとう。流石だね、カイア。僕より君の方がよっぽど王に向いてるよ」


 はは、と薄く笑って、カイアの頭を撫でる。


「私も一緒に行きたい」


 何回も頼んでいることだ。返事は分かりきっているが、どうしても諦めきれない。


「ごめんね。この惑星では、惑星王しか宇宙には出られないんだ」


「私も一緒に行きたい」


 カイアが駄々をこねることは滅多にない。常に人の顔色を窺い、自分より他人を優先する子だ。それが、サイアスの前だと、年相応の幼子らしく聞き分けがなくなる。彼に心を許している証拠だ。


「いつかみんなも自由に行けるようになるよ。そのために僕は宇宙へ行っているんだ」


「宇宙はどんなとこ?他の惑星の人は良い人?」


「素晴らしいよ、言葉では伝えられないくらい。前にも話したよね。僕達がいる宇宙には九つの惑星があって、住んでいる人達は、それぞれ見た目や思想、何もかもが異なるって。他の惑星の惑星王と会うのは、とても刺激的だよ。彼らは皆面白い」


 サイアスから聞く外の世界の話が、カイアは大好きだった。


「私も早く行きたい、会いたいな」

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