第5話

「こんにちは。君がカイアだね」


 扉の先には、一人の男性が待っていた。


 幼いカイアの視界には、彼の脚しか映らない。下から上へと視線を移動させ、首がきつくなるくらい見上げると、男の顔がようやく見えた。


 青。透き通るような、一点の曇りもない美しい青い瞳に吸い込まされそうになった。一瞬たじろいで、目を逸らしてしまう。


「初めまして、僕はサイアスだ」


 サイアスと名乗る男は、片膝をついて視線を合わせてきた。柔和な笑みを浮かべて、こちらを見ている。


「は、初めまして。カイアです。今日から、お、お世話になります」


 深く頭を下げると、サイアスは吹き出した。


「そんなに畏まらないでいいよ。今日からここで一緒に暮らすんだ。もっと、気楽に楽しく生きていこう。よろしくね、カイア」


 頭を撫でてきた彼の手は、大きくて頼もしかった。


 根拠はないが、ここでの生活は楽しくなるだろう、とカイアも思った。


 これが、二人の出会いだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る