The beginning

第1話

 金色の瞳が大きく見開かれる。視界には見慣れた青い空があった。


「あれ?私……」


 起き上がり、キョロキョロと辺りを見渡す。いつも訪れる、この惑星で一番高い丘だ。だだっ広くて何もないが、カイアが一番大好きな場所だ。どうやら寝ていたらしい。幼い頃の夢を見ていたようだ。


「カイアー!あんたまたこんな所にいたの?もう訓練始まっちゃうよー!」


 後ろから元気な声が聞こえてくる。振り返ると、見知った姿があった。


「リサ。ご、ごめん。空眺めてるうちに寝ちゃってたみたい」


 カイアは立ち上がって、リサの元に駆け寄る。


「本当に懲りないんだから。ほら、全力ダッシュで行くよ?」


 差し出されたリサの灰色の手を取って、二人は走り出した。


 灰色の肌に尖った耳、そして先端が矢印型の細くて長い尻尾。それが、この惑星で生まれた者が持つ特徴だ。


 カイアは、長い黒髪を高い位置で一つに結わえていた。リサは、活発な彼女によく似合う情熱的な赤い髪を、肩まで伸ばしていた。


 消極的なカイアと積極的なリサ、正反対の存在だが二人は親友だ。


 丘を下ると、岩石でつくられたドーム状の建物がたくさん見えてきた。この惑星に住む者の家だ。


 総人口は約三百人、ほとんどの者がここに密集して暮らしている。


「おはよう、リサ。これから訓練かい?頑張ってね」


「ありがとう、サンディおばさん!」


「おはよう、リサ。朝から元気だね」


「おはよう、トルネオおじさん!」


 集落を駆け抜けていると、リサの姿を目にした人々が、口々に彼女に声をかけてくる。走りながらも明朗に返事をしていくリサの声は、爽やかな朝にぴったりだ。

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