一　師匠は言わはった「クラッシックの音楽は荒削りや。最近のミュージックは洗練されとる。せやけど、ワシがプレイするとしたら素朴なクラッシックやな。」

二　師匠は言わはった「昔、陳や蔡の国にワシに着いて来たもんは、もう門下に誰もおらんようになってもうたな。」

三　人格は顔淵と閔子騫と冉伯牛と仲弓が優れとった。宰我と小貢はボキャブラリーが豊富やった。冉有と子路は政治に向いとった。子游と子夏には文才が有った。

四　師匠は言わはった「顔淵はワシの目を啓かせるゆうことは無いけど、あいつはワシがもの言うたら何でもウケよる。」

五　師匠は言わはった「孝行やなぁ閔子騫は。あいつに冷たい家族でも誰にもその悪口を言わせへん。」

六　南久适が「真っ白い珠はなお磨け。うっかりもの言うたら、もう取り繕うことはでけん。」ゆう白圭の詩を何べんも何べんも唱えとった。師匠はお兄さんの娘さんと結婚させはった。（刑戮に免れん）

七　季康子が「お弟子さんの中で誰が一番の学問好きですか？」て尋ねた。師匠は答えはった「顔淵ゆう者がおました。無類の学問好きでしたが、不幸にも早死にしましたよって、今はもうおりまへん。」（哀公の問いに同じ）

八　顔淵が死んだ。父の顔路が師匠の馬車バラして、それで棺桶を収める外箱の椁を造ってくれ。て無茶言いよった。師匠は言わはった「出来のエエのも悪いのも、親にとってはそれぞれ我が子やさかい、その気持ちも良う分かるけどな、ワシは実の子の鯉が死んだ時でさえ、棺桶だけで椁は無かった。馬車で椁を造る為に歩くことまではせえへんかったで。ワシも会社勤めをしとる以上は、足が無いことには仕事にならへんのや。」

九　顔淵が死んでもうた。師匠は言わはった「あぁ、何ちゅうこっちゃ！天はワシを見放した。もう終いや！」

十　顔淵が死んでもうた。師匠は大声を上げて泣かはった。付き人がビックリして「師匠がエラい泣いてはる！」言うたら、師匠は「泣かいでか！あいつの為に泣かなんだら、誰の為に泣くことがあるねん！」て言わはった。

十一　顔淵が死んだ。同門の弟子たちが立派な葬式を出そうとした。師匠は言わはった「アカン、止めとけ。」弟子たちは立派な葬式を出した。師匠は言わはった「顔淵はワシを実の父の様に思うてくれたけど、ワシはあいつを実の子の様にしてやれんかった。でもワシの所為やないねん、弟子の奴らが勝手にしよってん。」（喪は修めんより寧ろ悼め）

十二　子路がどないしたら鬼神に仕えられるか尋ねた。師匠は答えはった「まだ十分に人に仕えることもでけへんのに、何で上手いこと鬼神に仕えられる筈が有るねん。」敢えて死について尋ねた。師匠は答えはった「未だに生きることが分からへんのに、死なんか分かる訳無いやろ。」

十三　何時も、閔子騫はおそばで慎み深く、子路は堂々としてて、冉有と小貢が場を和ませとった。師匠は楽しんではったけど、子路のことは「あいつだけはまともな死に方はでけんやろうな。」て心配してはった。（実際その通りになった。）

十四　魯の人が新工法でどデカい蔵を建てた。閔子騫が「蔵なんか普通の建て方でエエやろ。何でワザワザ新工法で建てなアカンねん。」て言うた。師匠は言わはった「あいつは物言わずやけど、口を開けば必ず図星を言いよる。」

十五　師匠が「子路の演奏はな、ワシの弟子としてはチョット残念な感じやな。」て言わはったら、弟子たちが子路を小バカにしだした。師匠はマズイこと言うてもうたな、て思て「イヤイヤ、そうは言うてもやで、子路は超絶技巧とまでは言えんとしても、あれで中々エエ線は行ってるんやで。」言うて取り繕うてはった。

十六　小貢が師匠に「子張と子夏どっちの方が良う勉強できますか？」て尋ねた。師匠は答えはった「子張は度が過ぎる、子夏は勉強不足やな。」小貢が「そしたら当然、子張の方が上ですか？」て尋ねた。師匠は答えはった「度が過ぎるのは足らんのと一緒や。」

十七　季孫はあの偉大な周公より金持ちやった。せやのに冉有は季孫の為に、民から税金を厳しく取り立てては益々資産を増やした。師匠は言わはった「冉有の奴、ワシの弟子失格やで、お前らチョット行って、太鼓でも打ち叩いてあいつら攻め立てたれ。」

十八　子羔は愚かで、曾子は鈍感で、子張は見栄っ張りで、子路はデリカシーが無い。

十九　師匠は言わはった「顔淵はまぁ理想的や、浮世離れしとるから何時も貧乏暮らししとるけどな。小貢は誰に言われんでも勝手に金儲けしよる。思い付いたビジネスは大抵成功させよるな。」

二十　子張が善人になる方法を尋ねた。師匠は答えはった「過去の善人たちの足跡を辿らんことには、同じ様にはなれんな。」

二十一　師匠は言わはった「単にトークやディベートが上手いだけでは、ホンマの君子か、単なるうわべ飾りかどうかは良う分からん。」

二十二　子路が「何か言われたら、その通りせなあきませんか？」て尋ねた。師匠は「トラブルになって家族に迷惑が掛かったらアカン、迂闊に言われた通りにしたらアカン。」て諌めはった。冉有が「何か言われたら、その通りせなあきませんか？」て尋ねた。師匠は「その通りやったらエエねん。」て答えはった。それを聞いてた公西赤は「師匠は子路と冉有に真逆のアドバイスしてはりましたけど、何でですか？僕には訳が分かりませんわ。」て尋ねた。師匠は答えはった「子路は我を通し過ぎるさかい頭抑えとくねん。冉有は引っ込み思案やから背中押したるねん。」

二十三　師匠が匡の国でピンチにならはった時、顔淵が逃げ遅れた。後になって師匠は顔淵に「ワシ、あの時お前もう死んだて思たで。」て言わはった。顔淵は「何でですのん、師匠より先にくたばりますかいな。」て強がった。（結局先にくたばる。）

二十四　季子然が「子路と冉有は優れた部下やて言えますか？」て尋ねた。師匠は答えはった「ワシ、あんたはもうチョットマシなこと聞いてくるかと思うてましたけどな、あいつらのことなんか聞いてくるとはね。ホンマに優れた部下いうのは、真っ当に人に仕えて、通じへん様やったら辞めてしまいます。子路と冉有なんかはまだ頭数の足しになるくらいのもんでっしゃろな。」季子然が「ほんなら、どんな命令にも従いますか？」て尋ねたら、師匠は「なんぼ何でも、君主や親兄弟を殺せ、みたいなとんでもない命令には従いまへんな。」て断言しはった。

二十五　子路が子羔を費の知事に任命した。師匠が「まだまだ志半ばの、あいつの学問の妨げになるやろう。」て言うたら、子路は「国民にも恵まれ、立派な寺社仏閣がようさん在る土地です。その政治に関わる方がよっぽどエエ勉強になります、何も本を読むのだけが学問や無いでしょう。」て答えた。師匠は言わはった「これやからあの屁理屈言いは嫌いや。」

二十六　子路と曾晳と冉有と公西赤がお側にいた時、師匠は言わはった「ワシが例え一日でもおまえらより目上やから言うて、何も遠慮せんでエエ。おまえら何時も『誰も自分の能力を分かってくれへん。』てボヤいとるな。ほんなら、もしお前らの能力を分かって使うてくれるもんがおったとしたら、具体的にどないする？」子路が真っ先に進み出て言うた「戦車千台位の戦力の国が、その何倍もの戦力の国に挟まれてて、戦争が起きて、まだその上に飢饉が重なったとしても、僕がこの国を率いて三年もすれば、きっと国民に勇気と正しい道を心得させることができます。」師匠はこれを笑うと言わはった「冉有や。お前はどないや？」冉有は答えて「国とは言わんまでも、広さが六、七十里かまぁ五、六十里四方程度の範囲でしたら、僕がこれを治めたら、三年もする頃にはその民を十分養う程度のことはできます。礼や音楽のことは未だ力不足やから君子にお任せします。」師匠は言わはった「公西赤や。お前はどないや？」公西赤は答えて「何かできる、言うよりは学問に打ち込みたいです。それでイザゆう時に、宗廟や国会に馬子にも衣装で立たせてもらえたら、少しはお役に立てる人材になりたいです。」師匠は言わはった「曾晳や。お前はどないや？」曾晳はギターを弾いていた手を止め、それをそっと置くと立ち上がって言うた「先のお三方の様な立派なもんとは違いますけど。」「気にせんでエエ。それぞれの志を言うてるだけや。」「春も押し詰まって、春服もすっかり整う頃。五、六人の若者と、六、七の少年を伴のうて、沂で川遊びして、雨乞いの舞台で夕涼みして、歌の一つでも歌いながら帰ってきたいもんでんな。」師匠は「嗚呼」と感嘆して言わはった「ワシもそないしたいなぁ。」三人は部屋を出て行った。後に残った曾晳が師匠に尋ねた「三人の言うてたことはどないですか？」師匠は答えはった「別に、それぞれの志を言うただけや。」「なんで師匠は子路のことを笑うたんですか？」「国政は礼と譲り合いに寄って為すべきやが（能く礼譲を以て国を修めんか）、あいつは言い出したら聞かん。話の寸法が合えへんやろ？あいつは自分でそれに全然気付いてないから可笑しかったんや。冉有にしたって国政のことやろ、どの世の中に六、七十から五、六十里四方の広さが有って人が住んでたら、国やないもんが有るねん。公西赤にしてもやはり国政のことやろ。宗廟や国会が国政やのうて何が国政やねん。まぁ、あいつの場合はチョット謙虚やけどな、公西赤にして少しの役にしか立てん様やったら、大役を果たせる奴も先ずおらんやろうな。」