「権利と義務」その2


そんなある日、事件は起きる。洪水が町を飲み込んだのだ。


川の上流で氾濫が発生し、近くの田畑、家は流されてしまった。 


自然とは残酷なものだ。これほど哀れな者たちをも巻き込んでしまう。


数日後、火の国の役人数人がやってきた。


「頼む、何とかしてくれ。もう三日も何も食べてない。家族がいるんだ」


「田畑が流されてしまった、このままじゃ作物が育たないんだ」


「我々は税を納めているだろ、なぜ何の見返りもないんだ」


民たちは土地の改善と食料の供給を懇願し、中には抗議する者もいた。


おそらく日ごろの国のやり方に不満があるのだろう。


すると、その役人は抗議するうちの一人を殴り、周りの民は急遽きゅうきょ、黙り込んだ。


「いいか、土地とは王のもの、国家のものだ。


お前たち移民に土地を与えている代償に、貴様らは税を払う。


たとえ、この地が水害が起きやすい土地であろうと、貴様らはただ税を払えばいい。


それだけの存在なんだ」


そう言い残し、彼らは去っていった。


「太守、田畑の半分は流され、税は上がる一方、このままでは民は飢えて死んでしまいます。」


「わかっておるが、畑を治す金も新たな土地を買う金もない。我々には、貯蓄する権利すら与えられん」


楊台ようだいとこしながら、己の弱さ、ふがいなさに打ちひしがれた。


戦に敗れ、流刑地に送られ、この地を治めるよう強いられた。


最西の故郷を空を眺めては、家族を思い出し、我が人生を恨む毎日だ。


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『-Blunt-』 淡女 @kuramaru1024

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