作った&異世界番外編 私は夜10時に春山盛り料理を作った(今回はオリジナルレシピです)
隅田 天美
そもそも、9時半までスポーツジムで重さ40キロのレッグプレスなどをしてから料理っておかしくないか?
そもそもの原因は母である。
一昨日、仕事から帰る。
『あー、今日も一日疲れた……』
などと平凡な感想と疲労と共に玄関の鍵を開けると、玄関にマジックで【母より】と書かれたビニール袋が数個あった。
鞄からスマートフォンを出し母に電話する。
「母さん……? うちに来たん?」
『ちょっと、街に用事があってね……』
母の言葉を聞きつつビニールの中を検める。
缶詰数点、少しの米、醤油、それからぶよぶよした何か。
透明度からして何重にも縛ってあるのだろう。
封を解いていく。
『天美の好物も入れておいたから』
私の顔に自然と笑みが浮かぶ。
この時期、母が作る「
細かいレシピは知らないが(何度も横で手伝っているのに)実に美味しい。
数個の要件を話し、小鍋に入れてビニールの中身を温める。
流石、両親が住んでいるご近所の人が減少した竹林で朝早く取った筍だけはあり美味い。
よく、「筍は先が柔らかく淡白で下は味は濃いが硬い」というが、この筍に限ってはそれはない。
母の下処理&塩漬け保存もいい。
仕事は朝早いので、食べている間に風呂を作り夜九時には寝た。
翌日。
と言うか、今日。
今日は来客が多く、かつての上司まで来たというちょっとしたお祭りであった。
「よう、隅田さん」
「あ、どうも。ご無沙汰しております」
「あいかわらず、飯食っている?」
「お陰様で……あ、コロナ……」
「変わってないねぇ……最近食って、印象的だったのは何?」
「クチコ……ですかね?」
「何それ?」
「Amazonで買った乾物です。十グラム三千円しました」
「はぁ? 何それ?」
「大きいものだと、三味線のバチに似ているんで『ばちこ』とも呼ばれているそうです。これは六千円もしますね。元々は、なまこの卵巣です」
「で、どうだった?」
「個人差はありますけど、私的には味はあるような無いような……ただ、変に生臭く……残すのもアレなんで一気食いして終わりました」
普段以上に疲れた今日。
気が付いたら駅の隣にある某家電量販店のレストラン街に来ていた。
『ラーメン? 匂いがなぁ……帰ったらジムに行くし……寿司は……予算がないし本当にさびれている……』
「ナマステー!」
インドの言葉をかけられ、振り返ると笑顔のまぶしいインド人のお兄さんが店の前で呼び込みをしていた。
『カレーなら、匂いも予算もOKだ!』
店はインドの流行歌がバンバン流れていた。
「イラッシャイマセ」
店員さんに品名で注文しようしたら番号を指さされた。
日本語が苦手なのだろう。
「えーと、これとこれ」
私は番号を指さして注文した。
「ワカリマシタ」
そういってボーイのインド人は調理場に向かいインドの言葉で厨房に注文を告げた。
「サービスデス」
出てきたのはサラダと豆のおせんべい。
――香辛料、効きまくっているんだろうなぁ
と思ったら案外普通のサラダだった。
豆のおせんべいはほぼスナック菓子で単品でもいけた。
「ゴチュウモンノシナデス」
海老カレーは普通に深い容器に出てきた。
問題はもう一つ注文した揚げナン。
私の顔より大きい。
しかも中が空洞で熱い。
図らずも、ナイフとフォークを使い四苦八苦しながら食べた。
そして、異世界への扉は開いた。
(はい、「ようこそ、異世界」の予告です)
電車と徒歩で家に帰り、顔の化粧を取り車に乗りジムへ向かう。
そこでスロートレーニングとポールストレッチをして、本番のウェイトトレーニングである。
『今日は、後半戦。下半身をやるか……』
まずはレッグプレスと呼ばれるメニューをする。
「あれ? 隅田さん。そのウェイト(重さ)何キロ?」
「えーと、三十八・五キロですね」
「軽い」
「は? いやいや、これ、成人男性の限界目安ですよ」
「でも、隅田さん。これで満足なんですか?」
「え?」
「人間、限界を超えたところに見える風景があるんですよ」
「見たくないです」
「遠慮しないでください。さ、四十キロに設定しました。どうぞ!」
「……」
四十キロは確かに見える風景、というか重さの感覚が違う。
下半身、足の裏から腹部にある足の筋肉までフル稼働で「上げること」に集中しないと体が重さにやられる。
それまでは多少サボっても(まあ、だからトレーナーに見つかったわけですが)三十キロぐらいは出来た。
これでも伊達に二十年以上スポーツジムに通っているわけではない。
しかし、トレーナーは私に違う刺激を与えたいらしく他のメニューも重さを増やした。
そして、明るみに出た私の左右差。(実は右は筋力が弱く左が強い)
ボロボロになりながらスーパーで
たぶん、その時、目と感情は半分以上暗く沈んでいた。
そのまま帰宅。
料理。
今に至る。
最後に。
この時期になると作る、春満載の五目きんぴらの作り方
材料
牛蒡
レンコン
鳥皮(嫌いならば省いてもOK)
鶏肉
胡麻
輪切りの唐辛子
(忘れなければこんにゃく)(←はい、買い忘れました)
お好きな分だけ
砂糖
醤油
好みの味になるまで
1・ゴボウはささがき(鉛筆をナイフで削る要領で切る方法)にして水であくを抜く。
2・レンコンは既に切られたのを買った(それしかなかった)。
3・鶏肉も好きな大きさに切る。
4・サラダオイル少々と鳥皮を入れて脂を出し具材を全部入れる。
5・ある程度火が通ったら砂糖と醤油(最初に砂糖である程度味を決めると楽)で味を付けて終わり。
作った&異世界番外編 私は夜10時に春山盛り料理を作った(今回はオリジナルレシピです) 隅田 天美 @sumida-amami
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