復讐者としてパーティインした少女が両親の仇と遭遇し単身挑んだ末に返り討ちに合うものの後にその行動こそがパーティを救う展開の伏線

幼縁会

第1話

 崩れ落ちた一軒家。

 壊れ果て、塗装の奥から錆が湧き立って久しい遊具。

 魔人の闊歩で刻まれた亀裂は、流血を啜って人界にあるまじき異形の大輪を咲かす。


「……」


 腐臭と死臭に群がる蝿すら忌避する地獄を、悠々と歩くは漆黒。

 刃の具現が如き鋭角的な鎧は、主の身を守るよりも外敵を惨殺することこそが最適解だと暗に主張するかのように。文明の光が途絶えたが故に降り注ぐ満天の星空が照り返す逆光は、漆黒に人型の輪郭を与える。

 全身を鎧に包みながらも唯一素肌を晒す顔立ちは、若輩。

 もしも無意識下に放つ殺気で周辺の野生動物が絶命しなければ、コスプレの類と嘲ることも不可能ではなかっただろう。

 そんな、実体化した創作物が真紅の瞳で辺りを見回す。

 漆黒が視界に収めた物体は片端に脈動し、さながら蛇に呑まれた蛙のように震えを隠せない。

 一歩、一歩。ただ歩みを進めるだけで限界を迎えていたアスファルトは悲鳴を上げ、その身に更なる亀裂を刻む。

 絶対的、圧倒的な破壊が、無人の廃墟群で足を進める。


「ここら、か」


 怜悧な声音が大気を震わし、漆黒が歩みを止める。

 市街地へ侵攻した同胞から受けた報告には、漆黒が訪れた元住宅街を中心に活動している反抗軍レジスタンスからの被害が著しく、数日前には彼に引けを取らない幹部格すら敗死したとのこと。

 東京近辺は、人界侵略の要たる龍脈の一つが流れる土地。

 故に漆黒が自ら腰を上げ、反抗軍殲滅のために索敵を行っているのだが、どうにも成果は釣り合わない。


「しかしトウキョウか、懐かしいな」


 崩れ行く住居だった廃墟を眺め、漆黒は喉を鳴らす。

 破軍が世界各国へ侵攻した折、東京を担当した漆黒は単騎で出陣し、そして人の理を超越した権能を以って甚大な被害を巻き起こしたもの。

 脳裏に甦るは天より降り注ぐ高層ビルの流星群。

 逃げ惑う民衆が着弾地点に衝突し、夥しい衝撃に耐え切れない地面が音を立てて崩落する様は彼をして心中から黒い快楽が湧き立つ。

 そして魔剣を引き抜いた時には──


「随分と上機嫌ね、エインフェリア・ジ・マリステラ」

「……反抗軍か」


 横合いから投げかけられた言葉に、マリステラは思考を中断して視線を注ぐ。

 廃墟群の一つより、月光を背景に立つはうら若き乙女。

 たなびく濡れ烏の長髪に永久凍土もかくやな冷えた眼差し。黒の制服にロングスカートと、スケバンと呼ぶに相応しい外見に異物となるは右手の大太刀。


「一人か、他の仲間はどうした」

「要らないわよ。お前を殺すのは私──伊刀富貴子いとうふきこなんだから」

「要らない、か」


 冷たく、しかして漏れ出す激情を隠せない伊刀に、マリステラは笑みを隠せない。

 東京での活動以来、彼に挑むのは決まって軍勢。

 数の暴力で押し潰すことは近代戦術の基本ではあろうが、そこに彼我の実力差を考慮しないのであらば兵を徒に損耗するばかり。本懐を成し遂げるなど夢想もいいところ。


「それは、俺が上げた戦果を知っての判断か?」

「えぇ、よく知ってるわよ。東京ラグナロクの張本人、一夜で万を越す人命を奪った災厄の魔人……!」


 少女が苦々しく、癒えぬ傷を抉り出して言葉を紡ぐ。


「災厄……実にいい言葉だ。

 刃たる我が身にはこれ以上なく相応しい」

「言ってなさいよ、化け物がッ……!」


 伊刀が懐から注射器を取り出し、口でキャップを引き抜く。

 そして乱暴に首元に突き立てると、躊躇なく内部の淀んだ赤を体内へと送り込んだ。

 刹那、心臓が肉体を突き破ったのかと錯覚する程に跳ね上がる。


「どうした、まだ睨んでいるだけだぞ。もう苦痛で身体が引き裂かれるのか?」

「ち、違うッ……これは、武者震いよ……!」


 身を丸め、額に大粒の滴を無数に浮かべ。

 それでもなお、伊刀は殺気を込めて漆黒を凝視。

 父を殺された。母を殺された。

 破軍襲来以来、死すべきではない人々が億単位で殺された。

 マリステラが、彼の使役する魔獣が、彼と行動を共にする魔人が。

 全てを奪っていながらに、悠々と笑みを浮かべているッ!


「殺してやる、殺してやるわ……!」


 人体には不要なまでに急かされた心臓によって血管が焼きつき、暴力的に上昇する体温が底冷えする夜の大気に蒸気を浮かべる。

 呼気を排出すれば、蒸気機関の如くに白が噴き出す。

 そして、濡れ烏の髪がたなびく。


「私の手でッ!!!」

「ハッ」


 瞬間的な跳躍で距離を詰め、神速の抜刀術が解き放たれる。

 それをマリステラは羽虫を薙ぐ程度の手払いで捌き、弾けた刀身が月明かりに乱反射。

 追撃にと右手で手刀を形成した直後、薄い笑みに微かな動揺が走った。

 伊刀の胸元に、円状の高密度魔力が集合しているのだ。

 彼との距離を詰める。それこそが目的であったかのように、伊刀は口元に憎悪の籠った醜悪な三日月を浮かべる。


「捌けるわよね、この程度ならァッ!」

「面倒な真似を──」


 マリステラの声を呑み込み、魔力が膨張。

 周辺一帯に膨れ上がる光が、月明かりではなく我こそがこの夜の主役だと存在を主張した。



 光が開けた先、そこに住宅街の廃墟はなかった。


「なんだここは……心象風景の具現化か。人間が?」


 辺り一面に広がる荒野。

 死した文明の終着点。

 神の祈りが途絶えた黄昏の果て。

 日常を奪われ、代替として数多の武器で空白を埋めた少女の末路。


「なるほど、私の場合はこうなるのね」

「ッ……」


 身を捻り、手刀を放つ。

 マリステラへと迫っていた黒槍は容易く柄を折られ、その欠片一つ届きはしない。

 その程度なら読めていたと、得物を失う半瞬前には伊刀は彼の間合いから脱出。荒野より柄を覗かせた新たな得物を引き抜く。

 次なる装備は龍の描かれた青龍刀。

 一瞥した伊刀は離脱の勢いのままに身体を回し、青龍刀を投合。

 唸る刃の軌跡をマリステラは容易く振り払い、周囲に深淵の闇を形成する。


「喜べフキコ、貴様に拝ませてやろう。

 強者の全力を、東京を沈めた魔剣を」


 マリステラは右腕を深淵へと突っ込み、殊更ゆっくりと引き抜く。


「ッ……!」


 未だ刃はおろか、得物の正体すら認められない。

 その段階にも関わらず伊刀の全身が総栗立ち、背筋に冷たいものが走る。

 深淵の先に眠るものは人界に於いて根源的恐怖に結びつく、そのような馬鹿げた空想すらも脳裏に浮かび上がり、そして否定する根拠が何一つ浮かばない。

 人血を啜った赤土を競り分け、姿を覗かせるは二振りの大剣。

 躊躇いなく柄を掴み、翼よろしく後方に掲げると身を屈めた前傾姿勢で突貫。

 立ち込める土煙の量は人間から乖離したもの。生じる速度もまた、人間が到達し得る段階を数段跳びで超過している。


「アァァァッッッ!!!」


 全身を支配する恐怖を振り払うため、伊刀は両翼でマリステラへと叩きつけ──


「急かすな」


 言霊。

 言葉に宿る精霊。八百万の神々を信奉せし日本人が崇め奉る神格が一柱。

 なれば、マリステラの端的な言葉に宿るは刀身を粉微塵にせしめるだけの破壊神か。

 虚空を刻む無形の刃に驚愕する伊刀を他所に、深淵から僅かに刀身が姿を覗く。


「ッッッ……?!」


 途端、襲いかかる剣気に全身が切り裂かれ、伊刀の身体が宙を舞う。

 突然の浮遊感と圧し掛かる重力。両の足で地面を掴み、たたらを踏みながらも何とか天を仰ぐ事態こそ避けられたものの、噴き出す血の量は輸血を希求して視界を霞ませる程。

 致命傷。

 思考を掠める単語から目を背け、代わりに睨むはマリステラ。

 深淵より引き抜かれた刃は、光すらも吸引するが故の黒。人間の可視領域を外れた存在を便宜上、黒と定義づける酷く曖昧なカテゴライズ。

 鍔に用いられた龍の頭蓋が黒を吐き出し、脊髄を加工した柄を漆黒の鎧が掴む。

 刮目せよ。

 其は人界の尽くを滅ぼし尽くし、なおも満たされぬ殺戮の飢餓。

 振るうことすらなく、ただ引き抜く所作だけで大災をもたらす究極の呪。

 天に座する神々すら恐れ戦く、呪われた顎。其の名──


「魔剣グラム。ただ一人の人間がために抜いたのは、これが最初で最後だ」


 吹き抜ける暴風が伊刀の心象風景を揺るがし、存在強度を鑢にかける。

 在り得ざる事態に吐血するも、彼女は荒野から新たな得物を抜刀。足に力を込め、怨敵への距離を詰めた。

 一閃。

 刃が届く寸前で自壊。

 即座に地面より湧き立つ武器を引き抜き二閃。

 マリステラが睨みつけるだけで自壊。

 三閃四閃五閃に六閃。

 抜刀から片端に蹂躙される刀剣は伊刀にも少なからず傷を刻みつけ、特に両腕は皮膚が一切れ残らず引き裂かれる。

 最早腕を振るうだけで血飛沫が舞い、生々しい筋線維が露出した有様でも少女は抗うことを止めはしない。歯を食いしばり、目を充血させて漆黒を睨みつけて反抗の意志を途切れさせない。

 復讐心。それもある。

 そも、彼女が刃を握った原点オリジンは、両親を無為に奪った破軍への憎悪。そして延々と煮え滾る憤怒なのだから。

 しかして、それのみが動機かと問われれば、それもやはり今では否。


「耐えてみせろよ、トウキョウを薙ぎ払った一振りを」


 漆黒が構える。破滅が構える。

 首都一つを蹂躙した、終わりの剣が構えられる。

 最中に少女が掴んだのは、己が身の丈にも及ぶ大鎌。

 既に腕の感覚も神経を蝕む激痛と無が綯い交ぜとなった有様だが、肉体が駆動する以上は未だ継戦は容易。


「ンッ……ガア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッ!!!」


 全細胞が訴える休眠の要求を気力一本で持ち応え、獣が如く咆哮。

 全てを失い、破軍を狩る果てに朽ちることを望んでいた自分に新たな生き方を提示した者がいた。

 全てが零れ落ちた掌に、まだ残っているものを教えてくれた者がいた。

 ともすれば自死衝動にも思える己の行動を食い止め、戦いの先を示した者がいた。

 失った過去ではなく、後に残る未来を。

 復讐心に突き動かされていた少女も、今や誰かのために動けるようになった。

 だから、だからこそ。

 ここで奴を殺す。

 そして、過去と決別を果たす。


「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッ!!!」


 万感の感情を乗せ、過去現在未来を抱き、今大鎌を振り下ろす。


「笑止」


 刃がマリステラに触れる刹那、眼前に闇が収縮──


「え……?」


 枯れた声が、弱弱しく呟かれる。

 理解が遅れたかのように口元から垂れるは、一筋の血。

 闇の奥から何が現れようとも、マリステラ諸共に両断するつもりであった。それが不可能だとしても、不可能を可能にしてこそ掴み取れるものがあると信奉して。

 だが、だがしかし。


「わた、し……?」

極瞬間移動円ワープゲート……下調べが足りなかったな」


 闇の奥に己の背中が浮かび上がるなど考慮できるはずもない。

 更に視線をゆっくり腹部へと落とせば、大鎌の切先が己が身を貫いている。

 条理からかけ離れた事態に呆然としていた伊刀であったが、冷静さを取り戻そうと思考を現実へ差し戻すと、そこにはグラムを構えたマリステラ。

 己が失策を恨む余暇すらない。

 解放された暴威が伊刀を呑み込み、世界の終わりもかくやの轟音が荒野を蹂躙。無尽蔵に荒れ狂う破滅が心象風景を薙ぎ払い、無数に突き立てられた刀剣をも障子紙の如くへし折る。

 内部に限界を遥かに超過した負荷がかかり、心象風景としても不安定な様相を呈した。空模様が青空かと思えば曇り、曇天のすぐ側で夕暮れが輝く。

 原初の世界。創世記。或いは北欧神話を終焉へと導いた、神々の黄昏。

 地形一つを捻じ曲げる一閃を放つも、マリステラは首を鳴らす程度で疲労の色は窺えない。


「……」


 一方で、伊刀は骸同然の姿を晒していた。

 暴威に飲み込まれ、擦り切れた四肢は右腕を数本の筋線維で辛うじて繋ぎ、それ以外の部位も破裂していないのが奇跡な程に血を垂れ流す。

 虚ろな瞳はただ虚空を写し取り、怨敵であるマリステラを認識する余裕すら持ち得ない。

 僅かな肺の上下がなければ、死体と見間違えて当然の骸。否、抵抗の意志を見せなければ数秒の後に死者の国の門を潜るのであらば、わざわざ区別する必要もない。


「血に混じった同胞の匂い、先の薬か……随分と肉体に鞭を打つ、人の身体と反発して全身を苛む苦痛も尋常ではあるまい

 これでは、数週間後の命も見込めない」


 真紅の瞳が努めて冷静に分析し、漆黒が歩みを進める。

 自らに挑んだ勇者への礼節として、醜く死に損なった有様から栄誉ある最期を与えるため。


「その様では生きていても辛かろう。それとも、その痛苦すらも耐えて歯向かうか?」


 問いかけてはみるものの、マリステラに返答を待って座するつもりはない。

 心象風景と現実の時間がどの程度の誤差を生じさせるかは、個々人によって大きく異なる。重要な作戦が控えている中、勇者への賞賛以外で彼が伊刀に付き合う道理はないのだ。

 なればこそ、彼女の左腕が多少の痙攣を示した所で自然現象だと切って捨てる。


「……」


 まだ、だ。

 まだ、終われない。

 まだ、彼らを置いて己がエゴを優先したケジメをつけるには足りない。

 伊刀を突き動かす衝動。

 死体同然の有様でなお、安寧を拒絶する根拠。

 彼らは間違いなくマリステラと激突する。伊刀の死因であると知ればなおのこと。

 決して遠くない先で起こり得る未来。たとえ未来視を有していなかろうとも確信できる事態。

 その中で、万全のマリステラに勝つ手段はあるのか。


「ま、だ……だ」


 赤土を掻き分け、左腕を持ち上げる一振りの刃。

 木製の柄に鍔もなく、剥き出しの刀身を野晒しとした質素な刃──長ドス。

 潰れたはずの神経が掴み慣れた感触を身体に伝え、伊刀は薄く笑みを作る。


「……そうか、痛苦に耐え災厄へ挑むか……!」


 未だ戦意の衰えぬ様を目撃し、マリステラの表情に歓喜が滲む。

 ならば歩みを止め、彼女の動向を確認するもまた一興。

 すると、多数の刀剣が次々に伊刀の肉体を持ち上げ、無理矢理に臨戦態勢へと移行させた。

 一見すれば屍を外的要因で立ち上がらせただけの、捉えようによっては死者への冒涜とも取れる所作。事実として、切断寸前の右腕は強引な挙動が原因で千切れ落ち、乾燥した赤土に新たな色合いを付け足す。

 しかして垂れ下がった顔から覗く、餓死寸前の肉食獣が如きぎらついた上目遣いの目が何よりも雄弁に生存を物語る。


「行……く、ぞッ……!」


 紡がれるは空気の漏れた、意味の把握すら困難を極める言葉。


「あぁ、あぁ……来いッ」


 応じるはグラムを構え、迎撃の姿勢を取る漆黒。

 荒野を穿つ柄が、伊刀の背を押す。

 一つ、二つ。三つ四つ五つに六つ。

 自力で動く気力すら湧かないため、代替として多薬室砲のように連続して外から推進力を得る。左足が加速についていけずに千切れ飛ぼうとも、射出する柄を増やして接地を減らせば問題ない。

 流出する血液が軌跡を描き、柄に紅の彩りを加える。


「……ッ、アァッ……!」


 力なく開けられた口を閉じ、左目を限界まで見開く。

 人の身を超越した速度域の中、揺れ動く視界に捉えるは漆黒の鎧、歪んだ歓喜を示す傲慢なる刃。

 見よ、傲慢なる剣よ。神の意を僭称する不遜なる愚者よ。

 これこそが人類の可能性、貴様らが踏み躙った存在の意地。

 己が肉体を、自らの寿命をも切り捨てながら、連なる存在に全てを託す矮小なる力の継承の歴史を。

 突き出された神速の長ドスが、振り下ろされた漆黒の魔剣と交差。

 世界が壊れたのかと錯覚する轟音に遅れ、マリステラの肉体が大地に沈み、吹き荒れる衝撃に亀裂が駆け抜ける。荒野を破綻させ、拡散する蜘蛛の巣はやがてモザイク模様の空にまで波及し、無残な現代アートを彷彿とさせた。

 世界が、砕ける。

 一枚一枚、硝子片が落ちるように。

 空色の硝子片が地面に落ちる。


「目撃者はおらず、碌に手傷を負わせることもなく」


 崩れ落ちる世界の中心で、マリステラは言葉を紡ぐ。

 自身に寄りかかる伊刀──であった肉塊が垂れ流す血を気にも留めず。

 硬く、硬く握り締められていたはずの左手が力を無くし、刀身を失った長ドスが零れ落ちる。肝心の地面を転がる音は、硝子片に紛れて鼓膜を震わすことはなかったが。


「時間稼ぎの捨て駒……もしくは無駄死に、か」


 少女の、自らに挑む勇者の死を惜しむかのように。

 マリステラの声音には幾許かの寂寥が混じるものの、別にそれだけ。

 精々が見開かれ、最早光を灯すことのない瞳に目蓋をかける程度。

 無造作に動き出せば、当然のこととして少女の亡骸は地面に転がるものの、そこに何らかの感情を見出すことはない。

 故になのか。

 主の言葉が足りないためか。

 彼女の健闘を讃えるように。

 賞賛の拍手を打ち鳴らすかの如く。

 グラムの刀身が、長ドスと打ち合った部分を中心として小さな悲鳴を上げた。

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