第9話 フィレンツェっていいよね♡
実は私、古畑任三郎が好きである。常に黒のスーツを着こなし、事件が起きると、テーマソングと共にブランド物の自転車で颯爽と現れる。
鋭い観察力、巧みな話術で犯人を特定し、追い詰め、時間内に事件解決。面長イケメン、細く長い指。見た目も言葉遣いも、立居振る舞いも全てスマートだ。部下のオデコを叩いて喜ぶお茶目な所も魅了的だ。
さて、今回はそんな古畑さんとは見た目が真逆(作者様ごめんなさい)のキャラが登場する作品をご紹介します。
覚書〈リコルディ〉〜フィレンツェ宝飾職人の事件簿〜 橋本圭以様
舞台はどこだと思います? フィレンツェです。もう一度言うね。中世イタリアのフィレンツェです。そこで起きた連続殺人事件を古畑真逆おじさんが解決していくお話です。ミステリーです。サスペンスです。超大作です!
古畑真逆おじさん、失礼な呼び方だから、ご紹介しますね。ジャンニ親方です。
親方? 何の? 彼は腕のいい彫金師です。ジャンニ親方は市民からなる裁判官に選出され八人委員会の一人として、バッサバサ、いや適当に、違う妥協せず事件を解決していきます。
この作品の魅力は、数多くあるレビューから読み取れますので、紫ハナスは作者さまに突撃インタビューしちゃいました。ようこそ、橋本圭似様♡
Q1 十六世紀のイタリアを舞台にしたミステリー作品を初めて読みました。まず、この作品のアイデアはどこから生まれたのですか?
ルネサンス時代の商人の覚書をミステリのネタとして使ってみたかったので。
Q2 覚書ですね。作品タイトルにもなっていますね。謎解きの展開が素晴らしい超大作ミステリーですが、創作で苦労した所、また書いていて楽しかったシーンなどありましたら教えてくださいませ。
全部の出来事を4日間にまとめるのが大変でした。苦労したところは他にもあるはずなんですが、書こうとすると思い出せないものですね。
楽しかったのは、ドゥオーモのクーポラの階段が何段あるかを書きたくて登って数えたこと。450段くらいだったと思いますが、いつも途中で分からなくなって行きと帰りで段数が違ってました。
書いていて楽しかったシーンは親方の工房が散らかっている場面です。
Q3 そうでした! 1545年9月7日から10日までの出来事でしたね。ジャンニ親方だけでなく、弟子ミケランジェロや警官レンツォの視点からも進んだので読み応えがありました。花の聖母大聖堂をはじめ、当時のフィレンツェの街並みや市民の暮らしも生き生きと書かれていて、圧倒されました。この作品に影響を与えた作家や、本、映画などありますか?
『Criminal Justice and Crime in Late Renaissance Florence, 1537-1609』という裁判と犯罪についての研究書。これがなかったら全然違う話になってました。
Q4 イタリア語? 難しそうですね。当時の政治体制や宗教観も読み取れたのは、橋本さまの豊富な知識がベースにあったんですね。素晴らしいです。フィレンツェ公爵や宮廷執事など実在の人物も登場していました。他の登場人物もモデルがいたのでしょうか?
警察長官のリドルフィはアントンマリーア・ミラーニという実在の人物がモデルです。人徳があり、かつ有能で多くの犯罪を解決に導いたそうです。
Q5 そうなんですね。どおりでどの登場人物も濃いです! 中でも主役級の行動力あるレンツォ、人妻好きなミケランジェロは魅力的でファンが多いでしょうね。私は見た目はつぶれた生焼けの丸パン、あっ、ごめんなさい、違う、推察力と洞察力に富んだジャンニ親方が好きです。三人が活躍するこの作品のテーマを教えて下さい。
テーマは正義と冤罪です。
Q6 「復讐」や「冤罪」という深いテーマについても考えさせられました。
また、普段はむさ苦しくて口が悪くて、ズボラなのに、ジャンニ親方のセリフの一つ一つから器の大きさ、正義感強い人間臭さ、何よりカッコ良さが溢れていて途中、古畑さんを越えてきました。読了後はジャンニ親方ラブ♡になりました。橋本さま、嬉しい事にジャンニロスにならないよう、番外編も用意して下さってるんですね。21世紀のスピンオフでまた三人に会えるんですね。楽しみです。では番外編のアピールをどうぞ。
番外編は暴力・残酷なしで楽しく読める何かにしたいと思っています。生活感のあるフィレンツェを感じてほしいです。
おすすめレビューです。
★★★ Excellent!!! 森山美央様
一場面一場面すべてのシーンが面白いと言っても過言ではない!
ジャンニとレンツォ2人を軸に、中世のフィレンツェを舞台とした殺人事件の謎が解き明かされる。次から次へと現れる登場人物は複雑に交錯し各事情が重なり合い、そして最初の事件の発端へと絡まりあった糸がほぐれていくかのように繋がっていく。
作者様の上手い描写の数々と、巧みに紡がれていく展開の小説に、読者である私たちも中世イタリアの裏通りを主人公と一緒に駆け巡り、どんどんその世界に引き込まれていく。その空気感がたまらない。時に路地裏の匂いすら、ここまで漂ってくるほどだ。
クライマックスに近付くと応援コメントの中で犯人当てが炸裂!作者様と読者側との緊迫かつ爆笑の(笑)やり取りで盛り上がれるのも、この小説の醍醐味と言える。さあ、あなたには犯人が分かるだろうか!?
★★★ Excellent!!! 綾束 乙様
警察の若い役人・レンツォと、市民からなる裁判官・八人委員会の一人に選ばれた彫金師・ジャンニ親方、その若い弟子・ミケランジェロの三人の視点で語られるのですが……、このジャンニ親方のキャラクターが、飛びぬけて魅力的です!
公爵様から頼まれた仕事はやる気なし、市民の義務である八人委員会の仕事はもっとやる気なし。でも、深い洞察力と人生経験で少しずつ事件の真相に迫っていきます。
この過程も、大小、さまざなま事件が起こり、なかなかすんなりとはいきません。絡まった糸玉のように、読者を翻弄するようなもどかしい構成に、作者様の実力がうかがえます。
ジャンニ親方の含蓄ある台詞だけではなく、他の人物もみんな魅力的で、台詞回しがとても素敵です。
さまざまな人物が複雑に織りなす珠玉のミステリー、ぜひご一読ください!
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