第4話 麻薬カルテルってすごいよね。
実は私、2017年の冬、娘の旅行を全力で止めた事がある。「可愛い子には旅をさせよ!」というけれど、22才の一人旅には賛成出来なかった。
旅行先はメキシコ。大地震のニュースを聞き、娘にキャンセルするよう強く言った。いや、それは表向きで、治安の悪さを心配しての事だった。
「私は治安のいいグアダラハラの友達の所に行くの! 絶対行く!」頑固者だ。
メキシコシティ経由だよね? 女の子一人だよね? 親の取り越し苦労よね。うん、滅多な事ないよね。一ヶ月間何もありませんように。仕方なく送り出す。
「こっちはとても熱いです。今日、友達と買い物に行きました。友達が麻薬の匂いがするからと裏道りは避けたよ。お母さん、初めてライフル見たよ。(^^)」
毎日のように、テンション高いメールが届く。小心者の私は心臓が痛い。
「日本に着いたよ! あっ、メキシコでカップル三組が殺されて歩道橋に宙吊りにされてたニュース知ってる? 昨日、そこ通ったんだ。麻薬がらみだって」
絵文字付きで楽しそうに報告するのやめなさい。あの一ヶ月で寿命が縮んだ。
中南米は陽気でフレンドリーな人種のイメージがあるが、私の中では麻薬がらみの犯罪が多いイメージしかない。そう、麻薬を製造し売買するカルテルの拠点。政府や警察、軍部に匹敵する組織。組織同士の抗争で毎年犠牲者多数。怖
さて、今回ご紹介する作品は、久里琳様『罪の女の歌を歌おう、コカ畑の木陰で、カリブの波間で』です。
タイトルにある通り、舞台はカリブの旧都。南国の太陽が照りつける中、運命の恋や危険で甘美な愛を堪能できます。ん? なぜ危険かって?
登場人物に注目してください。マカレーナは麻薬カルテルのボスの愛人。娼館の女王です。とにかく美人で、気が強くて、自由奔放。無邪気で、欲がなくて、情が深くて、優しいんです。娼館の仲間、少女たちに慕われる魅力的な女性。
そんなマカレーナはある青年と出会い……。もっと紹介したい。全部話したい衝動を抑えて、作者様の文に置き換えますね。
・:*一年経って同じ青色の空を見上げたとき、脳裏に浮かんだ鮮やかな色の羽根とともにこの出会いを思い出すことを、マカレーナはまだ知らない。
青年と縁がつながって回りはじめてしまった運命を、一年の後にマカレーナは愛いとおしみ、そして呪ったのだった。ここに語るのは、そんな罪の女の歌。・:*+
もう、ラストを知っていると、また泣けてしまいます。カルテル抗争の中で懸命に生きる女たちの物語。ハンカチなしでは読めません。女にとって「罪」って何だったのか、考えさせられました。
恋愛だけでなく、抗争シーンも迫力があります。マカレーナの愛人、『旅団』のフアンがめちゃくちゃカッコいいです。漢です。恐れていた麻薬カルテルの事を忘れて、惚れてしまいました。
読了後、マカレーナロスになった私。そのくらいにオススメしたい作品です。
おすすめレビューです。
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★★★ Excellent!!! 烏丸千弦様
舞台は南米、タイトルにもあるようにカリブ海を臨むとある国。
「コカ畑」のコカとは、セレブたちのパーティドラッグとして、またレクリエーションドラッグとして、欧米では大麻に次いで消費されている、コカインの原料となる常緑低木樹である。
そのコカの一大産地である国を舞台に、本作にはカルテルのリーダーや、美しい娼館の女王や、その名のごとく天使のように純朴な青年や、複雑な過去を持つ、ある問題を抱えた少女など、たくさんのキャラクターが登場する。麻薬カルテルの抗争や、娼婦たちの生き様や、淡い恋とオトナの関係、警察とのあれやこれやなどが、現地の空気を感じられる生々しさで丹念に描かれている。
登場する人物たちは活き活きとしていて、みな魅力的だ。一人ひとりに物語があり、それが物語全体に奥行きと重みを持たせているのである。
読んでいるといつの間にか物語の中に入り込み、カリブの強い陽差しに汗ばみ、吹く風の中に女たちの香水や、硝煙の匂いが漂ってくるのを感じる気がする。こんな小説にはここカクヨムでも他でも、滅多に出会えることはないだろう。
ものすごくお薦めなので、ぜひ読んでみてほしい。
幕間コラムもあって知識が増えます。ぜひご一読を!
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