第3話 少年の詩っていいよね♡
実は私、ザ・ブルーハーツが好きである。十才離れた弟とライブに行き、最後の尻出しに興奮したのは、遠い思い出。
「デバネズミみたいにたくましく生きたい!」は、ドブネズミからパクったのかもしれない♡ 自由が欲しくて銃を撃ちまくる精神も好き♡
多感な十四才の時、私は急性中耳炎で高熱を出した。バレー部の新人戦が近づいていた。熱血教師は失敗すると怒鳴る。ビンタする。昭和のスポ根。笑
当時はどこの運動部にもあったビンタ。今は体罰じゃねぇ? って思うけど、その当時は当たり前。なぜか、その日はビンタが耳に直撃。激痛の後、全く音が聞こえない。耳鼻科に直行して、診断書を学校に提出する。担任と校長の謝罪。
レギュラーになったのに、試合に出られなかった。耳の痛みより、その事が悔しくて泣いた。その頃から、私は何かが変わった。何を聞かれても「別に」と答えるだけの愛想のない少女になった。羽根をもぎ取られた醜いアヒルだった。
別にグレてるわけじゃないんだ! 誰の事も恨んじゃいないよ!
ただ大人たちにほめられる馬鹿にはなりたくない。
ただこのままじゃいけないって事に気づいたんだ!
怒りをどこにぶつけていいか分からず、ブルーハーツの「少年の詩」の歌詞のようにもがいた。葛藤した。
───そしてナイフを持って立ってた。そしてナイフを持って立ってた。
さて、今回ご紹介する作品は、郷倉四季様の『あの海に落ちた月に触れる』
主人公行人は、幼い頃からの兄の暴力によって、自分を抑え意思を簡単に口に出来ない十五才。そんなプライドや自信を失った彼に、幼馴染の秋穂の存在は大きい。
秋穂は不登校。お見舞いに来てくれた行人に聞く。
「ねぇ、行人」「なに?」「エッチしたことある?」
多感な青春期。十五才にとってセックスは、好奇心? 肯定の証? 単なる興味? 絶望からの救い? 言葉と同じ? それとも相手を大切に感じる行為?
行人にとって性とは何なのか、思春期の性は何を求めているのか、とても興味深く拝読した。
さて、厨二病とは「承認欲求」と「自己同一性」という二つの心理が関係するらしい。先生をセンコウと呼び始めた私は、まさにこの厨二病に罹患していた。
私は見えないナイフで体罰教師を殺した。試合に出られた友達を刺した。時が経ち、中耳炎が治っていったように、厨二病は自然治癒した気がする。
この作品の魅力は、厨二病とは正反対の主人公、行人の繊細な感性と知的なエロさです。煙草を吸ったり、音楽に希望を抱いたり、大切な人の死にも敏感に感じる感性が美しい。飄々としているのに、どこか愛情深くて、冷たそうなのに、優しい。そんな行人にエールをおくりたくなります!
おすすめレビューです。
★★★ Excellent!!! 切り株ねむこ様
私はたまたま「眠る少女」「拳銃と月曜日のフラグメント」「南風に背中を押されて触れる」という順番の後で、この作品を読みました。
登場人物の今と過去を知る事が出来て、私が読んだ順番は偶然ながらも良かったなぁと思っています。(どの作品から読んでも大丈夫な小説になっています)
思春期特有の何でもない風に装いながらも、実は言葉たった1つで傷ついてしまう危うい繊細さ。まるで世界はそこにしかない様な閉塞感を思い出した気がします。
そこに絡んでくる性と生。主人公の行人は軽薄な様で、実は性に対して性欲だけではなく 自分をも変えてくれる何か期待しているのです。
「セックスは肯定してもらえるもの」と思っているところからも、軽薄さは表面上のもので、むしろ潔癖さを感じました。
ただ、本当に好きな子をその対象に出来ないというか、しないところが、
この話の複雑なところで……。
1番重要なところではないかと単純な私は思っています。
ここから「南風に背中を押されて触れる」へと、時は飛ぶのですが、
そちらはそちらで色々な事柄が枝分かれの様になっていて……。
どの作品を先に読むかで、印象が変わるかもしれません。
ただ、どれから読むにしても、思春期の青さにどっぷりハマりたい方には
こちらをオススメします。
そして、こちらを読んだら「南風に背中を押されて触れる」も読んでしまうことでしょう。逆もまた然りなのです(笑)
*・゜゚・*:.。..。.:*・''・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:
ぜひご一読ください。
『あの海に落ちた月に触れる』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054886476922
『南風に背中を押されて触れる』 行人と秋穂の六年後です♡
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます