第4話 Sクラス

次の日朝早くから王立学園の掲示板を見に行った。全員見事Sクラス合格。Sクラスは15人しかいなかった。やはり、必要条件みたいなのがあるみたいだな。まあ、Sクラスに合格したからどうでもいいのだけど。


「良かった~、ゼノーク様と一緒のSクラスですよ!Sクラス!」


「分かったから急に抱き着くな耳の毛が目に刺さる」


「ああ、ごめんなさい」


ルシルは嬉しさのあまり抱き着いてきた。身長も初めてあった時と違って高くなっているので目に耳の毛が刺さって涙が出てくる。これ以上刺さると失明する可能性が有るので俺はルシルを引きはがした


「いいよ、俺も三人と同じで嬉しい気持ちだからね」


これは本当の気持ちである。やっぱり、何年も一緒にいると家族みたいな感覚になって一緒に居たいって気持ちが強くなる。


その後は人混みをかき分けて受付に向かった。その理由は受付で生徒証や制服が支給されるからだ。やはり、もの凄く俺達は目立っている。だが、この前みたいな羨望や嫉妬の視線は送られてこない。それよりも畏怖の念が混ざっているように感じる。まあ、それもごく一部だが。


『おい、あいつってあれだよな』


『ああ、試験官を病室送りにしたやつだよ』


『凄いなぁ。憧れちゃう』


『あぁ、ゼノーク様~』


ちょっと悪寒が走ったのは気のせいだろう。うん、気のせいだ。周りの視線が痛い中俺達は受付に着いた。


「すみません。新入生のゼノークです」


「あ、はい。ゼノーク様ですね。ゼノーク様は主席なのでこれも渡しておきます」


そう言い受付は俺にバッジの様な物を渡してきた。見た目は五角形で両刃の剣がクロスしたデザインが施された代物だ。それに物理防御と魔法防御が施されている。さらに嫌なのが懲罰委員会と書いてある。これって、生徒を取り締まる委員会だよな。


「す、すみません。この懲罰委員会を脱会したいんですけど」


「無理です。諦めてください」


ぎこちない笑顔でお願いをした俺に対し受付さんは最初とまったく変わらず笑顔のままはっきりと『無理』と答えた。学園長は誰なんだ。そいつは多分だが誉められた性格の持ち主ではないだろうな。


その後、ルシル、ユフル、ラエルも制服を受け取り家に帰った。何故か制服を受け取った三人は凄く上機嫌で鼻歌までしながら帰った。


◆◆次の日◆◆


「おはよう皆」


『おはようございます!』


俺達は学園で待ち合わせをしていた。うん、制服姿も可愛いな。ルシルはスカートから出ている尻尾が凄く可愛いし。ラエルはラエルで凄く制服が似合っていて凄く可愛い。ユフルは半袖で活発な感じが一段と強くなった気がする。まあ、どっちにしろ可愛いんだけど。


「三人とも似合ってるね」


『えへへ~』


三人とも顔を手で隠しているが耳が赤くなっているのが分かる。分かりやすい奴らだ。


そのあと、俺達は入学式を行う会場へ向かった。今回の新入生は150名だそうだ。そのうちSクラスは15人しかいない。全体の1/10だ。

俺達は新入生の人数に少し驚きつつも席に向かった。そしてその数分後入学式が始まった。


「新入生の皆さん。こんにちは!今回進行役を任されました、6年生で生徒会長のフレン=ドートルです。では、早速ですがこの学園の学園長にして『氷結の魔女』と名高いミザリー=グランド様からひと言貰いましょう!」


氷結の魔女と聞いた瞬間会場がざわめき始めた。氷結の魔女と言うのは一角獣と言う角の名を冠する魔獣の一匹を身に封印し使役している魔女の事である。角獣かくじゅうは第一次人魔大戦で生れた魔獣だそうだ。一角獣は狼の様な見た目をしており額には大きな角一本が生えている。属性は『氷結』これは特殊魔法属性と呼ばれている。その氷結の魔法を使いこなすから氷結の魔女と呼ばれている魔女だ。


「ええ、皆さんこんにちは。先程紹介されました、ミザリー=グランドです。長ったらしいのは嫌いなので簡潔に『死なないように己の武器を研げ』以上」


「ありがとうございました!これで入学式を終わります、各クラス、教師の指示したがって教室へ向かってください。では、Sクラスからどうぞ!」


教師の指示を待っていたら急に前に座っていた男が立ち上がり手を上げて指示を出し始めた


「おーい、お前ら、俺に付いて来いよ~」


この国では珍しい黒曜石の漆黒の様な黒髪で瞳孔も仄暗い黒色をしていて精悍な顔立ちをしている。服は着崩してはいるがどこか強者の風格の様なオーラを纏っている。野生動物の様な荒々しい魔力を体に宿しており、体はごつくはないが筋肉質。一目で分かる、この男は強い。少なくともこの前のゴトウよりも数十倍は強い。


このまま俺達はSクラスに移動した。


「はーい、今年度お前らの担任になった。ガジル=ヴォルフガングだ。まあ、これでも『打聖だせい』だ。何故俺がこのクラスの担任になったかと言うと好奇心をそそられたから、それだけだ」


打聖!何故、聖人がここに!?それも打聖、聖人の中で1、2を争う程の実力を持っている。歴代の打聖の何人かと戦って来たがそいつら全員が魔王と匹敵するほどの力を持っていた。その打聖が何故この学園に!?


「あ、ついでに懲罰委員会?って言うのの顧問だ」


マジか!?じゃあ俺あいつの下で働くの?


「仕事とか増やされたくないから問題行動は絶対にするなよ?」


『・・・』


いや、ここで威圧する?どんだけサボりたいんだよ。


これで今日の授業は終わった。これからは寮生活が始まる。


男子と女子は別々の寮がありそこに少なくても3年多くて5年過ごすことになる。


俺は三人と別れたあと部屋に向かった。部屋はSランクだから普通の部屋よりは大きいがルームメイトが一人いるらしい。


俺はドアノブを捻り、ドアを開けた。その瞬間、頭の上に何かが落ちてきた。煙も舞っている。


「キャハハハ!引っかかったー!」


「・・・」


なんだ、こいつは。

いきなり俺の機嫌を悪くさせたのはこいつが初めてだ。


俺は頭上に落ちてきたものを魔法で浮かせ舞っている煙もまとめてそいつにぶつけた。


ついでにもう一発いこうとしたら相手が両手を上げた


「ハッハッ!ゴホッゴホゴホ。いやー、参った。許してぇな」


「まあ、いいだろう」


「ほな、改めて、ワイはベルンってもんや。お前さんと一緒のSクラスや。ま、ルームメイト同士仲良くしよや」


「ああ、俺はゼノークだ、よろしく」


「で、聞きたいんやけどクラス分け試験の時のあのアッパー、風魔法使ったやろ?」


「・・・ああ」


「しゃ!あたりやな」


よく見破ったなこいつ。こいつの特有の魔法か、または体質か。


結構、魔力量は抑えた気がするんだがな。


もしや


「ベルンお前もしかして『賢者の炯眼けいがん』か?」


「よー分かったな。そやで俺の右目は賢者の炯眼や」


?じゃあ、左目は?」


「『愚者の酔眼すいがん』ちゅうやつでな。魔力の流れが一目で分かるちゅうしろもんや」


「右は賢者の炯眼で左目は愚者の酔眼か、だから、俺が魔法を使ったのも、何の魔法を使ったかも分かるのか」


『賢者の炯眼』の能力名は『賢者の叡智』

この能力は使えば使う程、練度が上がる。

練度が上がると半径1km先の魔法が解析できる。


そして『愚者の酔眼』は通称『魔視眼ましがん

これは自然にある魔力から、人の体に流れてる魔力の流れまで手に取るように分かると言ったものだ。


この二つを持っているとはとんでもない偶然イレギュラー


「で、君は?」


「なんで?」


「いや、試験中皆が先生の動きについていけない中お前さんだけずっと反応できたやん。まるで、


「バレてた?」


「分かりやすいでぇ、自分」


仕方ないなと俺は目を見開いた


「これが俺の『時神の神眼』」


「!?」


まあ、驚きたくなる気持ちは分かる。

俺もこの体に転生したときは驚いた。前世の自分ですら持っていなかった魔眼の一つ『時神の神眼』を身に着けているとは夢にも思わなかった。


まあ、時神の神眼以外にも持ってるけど


この後は荷物を整理して眠りについた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺は目立ちたくないんだ! 厨二赤べこ @sakedaruma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ