第3話 俺の弟子強くないか?
朝日が上がり陽光で俺は目を覚ました。今日は王立学園のクラス分けテストだ。俺は怠い体を起こし、まずはルシルを起こしに行こうとしたら何故か俺の寝室の前でルシルが立っていた。
「おはようございます!ゼノーク様!」
元気いっぱいの笑顔で俺を待っていたルシルと朝の挨拶を済まし、ユフルとラエルの宿にも向かった。ユフルとラエルはAランク冒険者なのでギルドが運営している宿などには格安で泊まれるのだ。早五年ずっとそこに住んでもらっていたがこれからは学園の寮に入ってもらう。ユフルもラエルもどちらも特待生なので相当良い部屋が割り振られているはずだ。そんな事を考えていたら宿に着いた。二人がどこの部屋に住んでいるのかは分かっているから二人の部屋に向かった。
部屋の前に着きドアをノックした。
「どなたですか~?」
「俺だ」
「あ!ゼノーク様!」
ドア越しから嬉しそうなユフルの声が聞こえた。そして、ユフルは勢いよく部屋から出てきた・・・下着のままで。
「おい、ユフル」
「はい!なんでしょう!」
「服を着ろ」
「・・・え?」
ユフルに服を着ろと言ったらおかしな物を見たような顔になった。
「え、ゼノーク様。興奮しないの?」
「ハァッ!?」
何を言っているんだ?まあ、確かに、絹の様な肌に紫色・・・って、違うわ!何考えとるんだ!冷静になれ。ユフルは家族みたいな物。手を出してはいけない。
俺は一度大きく息を吸い、盛大にため息を吐いた。
「で、誰の悪知恵だ?」
「は、はい!ラエルです!」
俺が少し怒気を混ぜた視線を送りながら低めの声で問うとユフルはあっさりと自白した。そうか、ラエルか。あいつ後で絞めるか。まったくどこからそんな悪知恵を覚えるんだか。
「で、ゼノーク様どう?」
「どうって?」
「その・・・可愛い?」
うーん、下着姿の時に聞く内容では無いが、上目遣いされながら言われたら可愛いって言うしかないだろう。
「・・・可愛いと思うぞ」
「ありがとう♪」
「それより早く服を着ろ」
「分かりました♪」
可愛いと言った瞬間上機嫌になって。まるで子供だな。まあ、そこが可愛いんだけど。それより
「おい、ラエル」
「!!」
俺は部屋に入るなり寝ているフリをしているラエルに視線を送った。寝てるフリがバレて驚いたのか一瞬、肩が動いた。ずっと、俺に視線を向けられ耐えられなくなったのか、ラエルは起きたと同時に凄く綺麗な土下座を決めた。
「申し訳ございませんでした!」
「何に対してだ?」
「ユフルに変な事を教えてしまい。本当に申し訳ありません!」
「ッ!!」
なんだこいつら、二人して上目遣いしてきて。更にラエルの場合はそれに泣き目で訴えてかけてくるのだから。ハァ、本当に甘くなったな、俺。
「大丈夫だから、その上目遣いを止めろ」
「あ、ありがとうございます!」
許したら許したで無邪気に笑う、ほんと二人には敵わないな。
変な事をしていた所為で大事な事を伝えるのを忘れていた俺は二人にクラス分けテストの事を伝えた。一応、ユフルとラエルの合格発表は俺の方に届くからこうするしかないのだ。
「なるほど、分かりました」
「入学試験の次はクラス分けテストかぁ」
「まあ、そんな落ち込むなクラス分け試験に筆記問題はない。つまり実技だけなんだ。二人とも実技だけならSクラスは余裕だろう」
『はい!』
俺がそう言うと二人は嬉しそうに返事をした。正直、俺から見てもユフルとラエルとルシルは同年代の奴らと比べると比較にならない程の実力を持つ。ルシルはまだ実践慣れは出来ていないけどそれは学園の実践訓練で何とかなるだろう。ラエルは魔法の才能があるから学園で魔法書を読み漁ればすぐに最上級魔法の行使に成功するだろう、ユフルは全体的にバランスが良いから学園で良きライバルでも見つかれば新しい才能が開花するだろう。俺はとんだ拾い物をしたようだ。
その後、各自準備を済ませ、クラス分けテストを受けに学園へ向かった。
王立学園とは
魔王の一人である【深淵を見た者】と言う二つ名を持つ魔王。魔王カフィ=アウルが理事長を務める学園だ。この学園でも貴族主義ではなく完全実力主義が絶対の正義なのだ。だから、貴族だから平民を馬鹿にしてると痛い目をみる。それが原因で貴族が権力をかさに着て平民に手を出したら王が直接爵位を取り上げられる。そのおかげでこの学園には将来有望な少年少女が集まる。今まで平民ってだけで有能な者がいないと決めつけ有能な者を見つけずらかったが、この学園が創立されてからはこの国は世界で大きな影響力を持つ先進国として評価が上がった。理由は単純有能な者を見つけやすくなったからだ。
とまあ、ここまで長話をしたがそれでもこの学園ではカーストが存在する。この学園は生徒をクラスで分けている。一番上をSクラスとし一番下はCクラスだ。Sクラスで卒業した者はほぼ全員国の中枢を担う者ばかりだ。なんなら学生の時から国の研究機関に所属した者もいる。それほどまでにSクラスは規格外が集まりやすいのだ。更にSクラスになると国が保有している最先端資料の一部を見ることを許可される。俺はその資料が見たいので今回のテストは本気でやろうと思う。もしかしたらイレギュラーな存在に会えるかもしれないしな。
俺はそんな事を考えてたら気づいたら学園に付いていた。
「よし、まずは受付に行こう」
『はい!』
うん、いい返事だ。でも、やっぱり人が集まるところに居ると目立つな。ルシルもラエルもユフルも俺が言うのもなんだが可愛らしい顔をしている。今まで何回もそれで絡まれては無視をし続け最近だとAランク冒険者の酔っ払いがユフルを無理やり連れてこうとして病院送りになったほどだ。まあ、顔は隠せないからどうしようもないんだけどね。
ほら今も男子の視線が針の筵の様に刺さっている。当の本人たちは・・・どこ吹く風だ。
「ハァ、巻き込まれるのだけは勘弁だからな」
「ゼノーク様?どうしたんですか?」
「いや、なんでもないよ。ルシル」
ほら、ルシルが様ってつけるからさ、目立つんだよね。さっきまでの彼女たちを気持ち悪い目つきで見てた奴らは嫉妬と羨望の俺に向け始めた。
可愛い弟子を持つのも苦労が絶えないよ。
こうして俺達は周りの視線を無視しながら受付を済ませテスト開始まで雑談を楽しんだ。その間どれだけの視線にさらされたかは覚えてない。
しばらくするとスーツを着た教員らしき女性が来た
「今からクラス分けテストを行います。テストを受ける人は私に付いてきてください」
俺達はその女性教員に付いて行った。
「では、皆さん列になってください。今からテストを行います。テストは簡単です。これから皆さんには試験官と戦ってもらいます。それでクラス分けテストは終了です。明日掲示板にクラス分けの結果を貼っておきます。では来てください!」
「よう!俺が試験官のタクミ=ゴトウだ。名前から察せると思うが俺は異世界から来たいわゆる異世界人だ。よろしくな!」
女性教員に呼ばれてきたのは大柄な男性だった。高身長でバランスよく鍛えたれた筋肉が見える。正に武闘家と言ったところか。
そしてテストが始まった。正直に言ってあのゴトウと言う男は強い。異世界の戦闘スタイルである『空手』と言う戦闘技術と風魔法のコンビネーションが素晴らしい。
ゴトウの戦闘スタイルは大きく分けて2つ。
一つ目は剣術や体術が得意な生徒に対しての戦闘スタイルだ。よほどの熟練者なのか生徒たちの間合いを瞬時に読み取り距離を取りながら風魔法を放つ。それも相手が剣や技を振るって隙だらけの時に来るもんだから普通の生徒なら先生に攻撃が
二つ目は魔法を得意とする生徒を対手にするときの戦闘スタイル。相手が詠唱している間に間合いを詰めて、中段正拳突きを喰らわせて相手をひるませた後すぐに背後に回りすぐに前蹴りでとどめを刺す。
「次、ゼノーク=ガルド!」
「はい!」
やっと、俺の番か。さて、どう攻めるか。
「よろしくな!」
「よろしくお願いします」
笑顔であいさつをするゴトウ。近くで見れば見る程良くバランスの取れた筋肉だと思う。それも実践で作った傷だらけの。
「両者準備はよろしいですね?それでは開始!」
開始の合図で動いたのは俺。まず、ゴトウに向かって風魔法を発動させる。
「
ゴトウは俺を魔法師と思った瞬間、風魔法を間一髪のところで避け俺に急接近して来た。すでに踏み込みを終わらせたゴトウが目の前に居た。そこから放たれる一撃は強力だろう。予想はおおむね正しく放たれた拳は思いっきり胸に激突し衝撃が俺の体に響いた。だが、俺は倒れない。無詠唱で
「あれ?なんで倒れない?」
「まあ、頑丈ですから」
そう会話した瞬間空手で言うところの回し蹴りでゴトウの頭を襲った。だが、空手家となのであっさり耐えられてしまった。そしてここで前蹴りで
その後すぐに決着がついた。
俺はゴトウの懐に入り思いっきり顎に向かって右フックをお見舞いした。その衝撃によりゴトウは脳震盪を起こし倒れた。これは俺の前世の戦いでつじかった知識だ。
知識は人を強くする。これが俺の持論だ。
「ゼ、ゼノークさん、お疲れ様でした」
「おーい!だれか担架持ってこい!」
「気絶してやがる」
こうして俺のテストは終わった。
ゴトウさんには申し訳ないけど子供の力だけじゃ倒せないからね。秘技を使わせてもらったよ。
周りからは俺がゴトウさんの顎を殴ったから倒れたように見えただろう実際顎は殴ってはいるけどゴトウさんが倒れた理由は他にある。
まず、顎を殴るそれと同時に風魔法を発動させ頭を揺らす。そうすると顎を殴られた衝撃と風魔法の揺れで脳が揺さぶられたってわけだ。
その後は適当に過ごした。正直先生が変わって、試合が面白くなくなったので寝たのだ。終わったころに起きルシル、ラエル、ユフルと4人で帰った。
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