34話目 兎の暗殺者《ラビット・アサシン》

反応が遅れたというよりできなかった。やっぱり相手は強敵。できる限り手の内を晒したくないのだが…。



「出し惜しみは言ってられないみたいね!」


焔絶魔術Lv10『ヘルフレイム』!


辺り一帯を黒い炎が包む。しかし。



「魔術が大雑把。それに上ががら空き」


「がっ!?」


一瞬身体を内から響くような衝撃が襲う。

硬直はしてしまうがそれも一瞬。すぐさま牽制の魔術を放ち、距離を取らせる。


回復魔術を使いつつも、弱点はどこかないかと探る。



「やっぱ強いねー?前世は忍者だったり?」


「忍者であればもう少し搦手を使ってくるだろう?」


何気ない会話で弱点を見ようとするも不発…………あれ?



「君、忍者を知ってるんだね?」


「!?」


初めてハルトの顔が驚きに染まる。

そこだ!



冥黒魔術Lv10『サタナエル・アロー』!



破壊のエネルギーを持った矢がハルトに向かう。



「力を振り回してるだけじゃ、足りない」


完全に当たったと思った魔術が、一発も当たっていない。


これだけの魔術で押しているのに倒せない。とすると…。



「やっぱりスキルか…」


「まぁ、わかるよな。スキル『絶対回避』。攻撃が絶対に当たらないスキルだ」


はー!?何だよそれやってらんねー!絶対に攻撃が当たらないやんてチートだチート!ヤバすぎでしょ!



「……………本当に絶対なのか、試してやる」


「一体、何を?」



理の魔術『八芒星オクタグラム


虹色の結晶が広がり、中に浮かぶ。一つ一つが魔術の媒介となり、ミカの魔術を強化する。



「ここからは手加減はしないから!」



龍魔術Lv10『龍の咆哮ドラゴハウル』!



虹色の結晶から、私の魔術から龍の頭がでてくると、そこから強力な衝撃波が放たれた。その数8つ。

直線上1キロを通り、蹂躙していく。


しかし、難なくそれを回避するハルト。



「数が増えようと、一芸では避けやすいな」


「違うわ、ばーか」



その一瞬、隠れていた一つの虹色の結晶が輝く。


冥黒魔術Lv10『カース・バレット極』!


呪いの弾丸はハルトの腹に当たり、そこに呪紋が広がる。



「これは…狙っていたな?」


「何の策もなく魔術をバカスカ打つほど浪費家ではないんで」


「高威力の魔術を囮に使うとは…。通常の魔術師の認識をひっくり返してきたな」


「どんな魔術でも急所に入ったり、守りの薄いところを突けばダメージには入るでしょう?それにその魔術は死の呪いがかけられてる。タイムリミットは約3分。絶対に私に勝てないよ」


「そう思う根拠は?もし呪いを回避できなかったなら?」


「だとしたら魔術を受けるときに必死になって避けるはず。ここからは若干賭けになるけど…さっき見えたスキルの条件が視認したものを回避できるものだとしたら?反応すらしきれなかった死角からの魔術ならあなたを倒せるんじゃないかと思ってね」


魔術師は常に自分の能力と相手の能力を推し量ることができる。相手がどのような魔術を使うかによって魔術を使い分けたりする者もいる。

だが、ミカは魔術だけでなくスキルまでも推測しきった。といっても鑑定Lv10のスキルもあるからでもある。



「それじゃ、続きをやろうか!」


「上等だ」


言葉を交わしたその瞬間、無数の魔術と疾風の攻撃が交差する。


MPを節約するためなるべくスキルは使わずに魔術を放ち続けるミカ。

スキルを駆使しながら着実にダメージを狙い続けるハルト。



「いくら、なんでも、死の呪い!やっぱり焦り始めたね!」


「MPを節約しているのか?魔術の数が先程から少ないように感じるが」


互いに探り探りで相手を一挙手一投足を伺う。いつどのタイミングで魔術を放つか、スキルを使うかの高度な読み合い。



「ある程度隙を作っても簡単にかかってこないし、もういいかな」


「?何の話だ」


「私もスキルを使うっていうことだよ!」



『ホープ・インフィニティ』『マナドライブ』発動。


一時的ではあるけれど自身のステータスを上昇させた。



「禁忌魔術ってさ、使い勝手が悪いわけ。消費する魔力や魔術の効果範囲とかいろいろ。それに代償を支払わなければならない魔術なんだよ。でもさ、どうにかしてノーリスクで禁忌魔術を使えるように使い方を考えるじゃん?その中で見つけたんだよね」


「スキルを使ったかと思えば一体何の話をしている?」


「私のスキル『魔術の神聖』は全魔術の適正を得る。なら既存の魔術に禁忌魔術を融合できるという能力があるとしたら?」


「まさか、お前…」


「これが、切り札だよ」


私よりも年下なやつに負けるわけにはいかないんだわ。精神年齢も含めてなぁ!




焔絶魔術Lv10『太陽のルミエール・デュ・ソレイユ


すべてを溶かし尽くすほどの熱量を持つ塊がミカの右手に。


氷絶魔術Lv10『氷河の柩』


かつて地球という星の全てを覆った氷の力の塊がミカの左手に。


そして。


禁忌魔術Lv10『倍増ダブリング


重ねるように唱えた魔術が2つの魔術の効果を倍増させる。







混合魔術『極点』






紫に光る一発の魔術がハルトへと狙いを定める。



「なるほど…これが切り札か…!」


冷や汗をかくハルトに不敵に笑いかけるミカ。






「これだけだと思った?」


「は?」





虹色に輝く結晶がミカと同じように魔術を唱える。

そしてできた8つの『極点』。




計9つ。





「手加減はしねぇって、言ったろうが!」








放つ。






圧倒的なエネルギーがフィールドの一部を飲み込む。


立っていたのは、ミカだった。










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めっちゃ久しぶりの更新に感じる…。

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安藤ミカさん!手加減してください!世界が滅んでしまいます!!〜手加減してもチート級!?な転生ハーフエルフの異世界魔術師物語! Ryu-ne @Ryu-ne

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