33話目 彼は、ボッチのようです

次の試合は時間が押しているため、バトルロワイヤルをすることになった。計8名がフィールド上で戦う。黒いマントを被り、最初の試合を一瞬で終わらせたダークホース。第二王子やその従者。2年生、3年生のトップを倒した天才。その他にも勝ち抜いてきた選手がフィールドに並ぶ。



『さあさあ!時間の都合により、2回戦はバトルロワイヤルと言う形になります!フィールド内で選手8名が潰し合うバトルが始まります!

魔術師が限られたフィールドで戦うというのは前代未聞と言ってもいいと思います!ここで残った選手が大会の優勝者です!

そして、フィールドとなるのは先程の平原です!1km四方のフィールドでどのような戦いが繰り広げられるのか!必見です!』


一通りの説明が終わると、会場には8つのスクリーンがそれぞれの選手を映した。



『それでは!!2回戦バトルロワイヤルスタートです!』





           ★


最初は私が目立たないと。ミカは自分が最初に行動して自分へのヘイトを稼ごうと考えた。銃のバトルロワイヤルでもよくあるヘイトの稼ぎ方。ちょいちょいちょっかいを出して自分の存在を相手の行動パターンを阻害させる。

では最初に。



禁忌魔術Lv10『禁魔の場』!



紫色の膜がフィールドに降りる。この魔術は禁忌魔術の中でも特殊な魔術。文字通り魔術が禁止、つまり、使えなくなる。魔術師が魔術を使えないというのは、相当不利である。ただ、付与魔術のように、自身の内で効果を持つ魔術は使える。また、威力の低い魔術も、余分に魔力を消費すれば発動させられる。


付与魔術Lv10『アンチグラビティ』


自身にかかる重力を操作し、空を歩けるように調整する。空を飛び、フィールドを見下ろす。

探知魔術で全員の場所を把握する。

東に2人いて、西に1人。北に3人、南は私を含めて、2人。


魔術が使えず焦っているのが6人。全部で8人いるから、焦ってない人がいるのか。

ん…?この魔力は…ハルトか。なんか、彼(?)と戦うのは避けたいなぁ…、嫌な予感がしてる。

魔術を展開し、まずご挨拶。



焰絶魔術Lv10『インフェルノ』!



フィールドが紅の炎に包まれる。地獄の炎が彼らを包む。今ので仕留めたのが3人。ユーラさんも仕留めたのか。



「それでもやっぱり、実力がある奴らは簡単には倒れないよね」


小さく呟いて、魔術を発動させる。



精霊魔術Lv10『サモン・スピリット・イフリート』



『ぬな?!わ、吾は何故ここに!?』


魔術陣の中から現れたのは、先程私に協力すると言ってきたイフリート。右手にはカップケーキ。左手にはフィナンシェ。全力で人間のお菓子を楽しんでいる。



「どう?私の用意していたお菓子、楽しんでくれてる?」


『おう!お主の用意していたお菓子はとても甘い!精霊が作るようなうっすい味ではない!しっかり甘みがあるのに、こってりしていない、むしろ、爽やかさすら感じるほどの美味しさだぞ!』


目を輝かせてお菓子の美味しさを語るイフリート。

バトルロワイヤルが始まる前に快く協力をしてもらうべく、作っておいたお菓子をあげた。満足しているようでなによりだ。



「それじゃ、お願い事していいかな?また追加でお菓子をあげるし」


『おお!吾のできることであればやるぞ!』


更にお菓子をもらえると言われれば動くのがイフリート。



『何を望む!?』


「北にいる選手を倒してきてほしい。西は私が仕留めるから。終わったら私と合流して。これが契約内容だよ」


北にいるのはイグニス、エマ、アリシアの3人。イフリートほど強い精霊なら彼らの内、1人は倒せるだろう。


『もし吾が倒せなければどうなる?』


「特に何もないよ。ペナルティもなし。お菓子も

ちゃんと渡すよ」


『ほほぅ!?何と割のいい仕事だろうか!吾は頑張るぞ!』


彼らを倒すと息巻くイフリート。そんな彼女に付与魔術んつける。



『これはなんだ?』

 

「あなたが彼らを倒せるように強化したの。これなら確実に彼らを倒せるだろうし!」


その言葉を聞いてふと魔術を使うイフリート。すると火炎魔術は焰絶魔術に匹敵する威力にまで強化されていた。



『おおう!?こ、これは少しやりすぎでは?』


「死んでも私が生き返らせるから大丈夫。思いっきってやって」


『は、はぁ…。それでは片付けてくる』


多少驚きながらも攻撃をすべく、イフリートは3人を倒すために向かってくれた。

私ができるのは、たった今私に近づいてきたハルトを倒すだけだ。黒い外套に包まれた彼は、さながら暗殺者のようだ。



「気配、消すのうまいね?」


「……………」


返事はない。特段驚いているようにも見えない。これは当たり前だと思っているのだろうか。



「……そ。お話しようと思ったのに、つまんない」



聖極魔術Lv10『断罪の光』


ハルトの足元に光の魔術陣が浮かぶとそこから光が溢れ出した。

それを避け、私に投げナイフを放ってくる。



「これくらいどうってことなっ………!」


「その慢心が命取りになる」


ボソリと呟かれた言葉の意味を咀嚼する前に、痛みが精神を支配した。



「くぅぅっ!」


黒い刃が私の腹から突き出している。その刃は彼の手の魔術陣から出ていた。



私から、血が出た。


いたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたいたい!!!


すぐさま彼と距離を取り、回復魔術で回復する。速かった。何が起きたかわからないぐらい!彼の魔術が私の防御魔術を貫いて、ダメージを与えたのだろう。なるほど、これはやっぱり。



「強敵……!」


「戦意の喪失は…確認できず。救いようのない戦闘狂だな」


ボソリと、しかし吐き捨てるように言葉を放つ。



「仮にも乙女なのにそんなこと言わないでくれる?」


「乙女は貴様のように戦いに飢えた目をしない。お淑やかに、上品に腹黒いことをする奴らのことを乙女と呼ぶ。貴様、腹黒いのか?」


「一言余計だってよく言われない?」


「お生憎様、友達がいないから、言われることがなかった」


「……かわいそう」


彼はボッチのようだった。






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いつもより短めだけど、勘弁してくれ!新しいやつ始めたいと思っているんだ!





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