願いが一つ叶うなら

劉水明

願いが一つ叶うなら

私の目の前に、空からこの世の物とは思えない光が降りてきた。


その光は私の願いを一つ叶えてくれるというのだ。


私は一時間迷い、その光に質問した。



「これは願いではないのですが、他の誰かにも願いを叶えた事はあるのでしょうか?」


「三人願いを叶えた者がいる。」


「その人達を見に行ってから願いを叶えていただけますでしょうか?」


三人の場所を教えてもらい行ってみることにした。

皆近い場所に住んでおり、すぐに辿りつく事ができた。


一人目は、お金を沢山貰うという願いを叶えた者だ。


豪邸の受付に、光の事を話すと簡単に入ることができた。私は、車で庭を通り過ぎて邸宅まで送り届けられた。

細部まで、細工をされたその邸宅は白と金でてきた城のようだった。


その豪邸の主が、扉を開けて直接私に会いにきた。

ふっくらした体格に、派手な服を着て、鼻の下に整った髭を生やし紫色した唇がしんどそうに話してきた。


「君もあの光から例の事を言われたかね?」

「はい、何を願おうか悩んでいます。」

「なら、金はやめたほうがいい。私は確かに裕福になったが、芯から私を思う家族も友達みんな去ってしまった。来るのは私のお金に群がる者だけだ。健康だった体も暴飲暴食のせいで、今では好きな物も自由に食べれない。君は私みたいになるんじゃないよ。」


そう言い残し、彼は大きく肩を落として帰っていった。


私は、一人目の男の執事に送ってもらい、二人目の人物の元に来た。


彼の住む場所は、古いアパートの二階の端にあった。階段を登ると、茶色いカケラがボロボロと落ちる。私はそんな、今にも穴が空きそうな階段を抜け

て彼の部屋に辿り着いた。


チャイムと同時に彼はドアを壊さないように出てきた。

彼は、骨のような体に、整っていない髪、白く伸び放題の髭が揺れていた。


「なんのようかね?」

「私はあなたと同じ光を見た者です。いきなりで申し訳ないですが、あなたは何の願いをしたのですか?」

「わしは、健康なままの不死を願った。」

「それは、いいですね。」

「全くよくない。ワシはもう、3000年は生きておる。昔は、家族もおり裕福な家庭だった。

しかし、見てみろ。今のワシにはこの体しか残っておらん。愛する者は、わしよりも早くに死に、残された子供達は私を恐れ近づかん。嫌になって死のうとしても死ねないのじゃ。おまえさん、不死はやめておけ。ワシみたいになるぞ。」


そういうと彼はバタンとドアを閉めた。


私は三人目の元に腕を組みながら向かった。


三人目の家は二階建てのオレンジ壁の家だった。

チャイムを押すと、黒く艶のある長い髪が肩を隠し僅かに見える縦にそうような首すじのきれいな女性がでてきた。


「どなた?」

「私は、光から願いを叶えてもらう予定の者です。」

「あなたもなのね。何かようかしら」

「あなたは、何の願いを叶えました?」

「私は、私が望む人からの愛を望んだの。でも、願うべきではなかった。私が、望めばどんな男も私に尽くしてくれた。でも、私のせいで男達はみんな駄目な人間になってしまったわ。金持ちも、たくましい体の人も、優しい人もみんな駄目になってしまった・・・。あなた、愛を望むのはやめた方がいいわ。」


そういうと彼女は、家の男の方へ誘われていた。


私はゆっくりと光に向かった。


光は僕に語りかけてきた。


「願いは決まったかね?」

「何を願えばよいか全くわかりません。」

「ではやめるかね?」


私は今まで考えた事のない頭を使い湯気がのぼるほど考えた。単純な答えが私の頭を満たし。湯気と一緒に出ることはなかった。


「では、私を幸せにしてください。」


「わかった。」


私は光に覆われて気を失った。


起きてみると光は消えていた。


私の体には何の変化もなかった。

しかし、私の頭の中に昔、祖父や祖母、父や母と一緒に海で遊んで幸せだった頃の思い出が蘇ってきた。現実と思い出の狭間に体が溶け込むような感覚だった。



私は父におされた浮き輪で海を泳いでいた。

海には人も、船もなく、光と紺碧の海が広がるだけだった。

父の顔は波に邪魔されながらも水の笑顔だった。

母や祖父達は日差しに照らされ、浜辺で私を日の笑顔で見ている。


私にとってはこんな些細な思い出が、私の幸せだったのかと初めて想った。


太陽の光と海に包まれて目をつぶり穏やかな波の音に心を任せた。

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