6-3 鉱石発掘ツアー
「では、皆さん。私に着いてきて頂けますか?」
あれから私は10分程時間を巻き戻し、グランダ王国の偉い人達を前に語っている。
「しかし、本当にこの洞窟の奥に鉱石があるのかね?そのような話は聞いたことがないぞ?」
口ひげを生やした偉そうな人が言う。
「まあまあ・・・百聞は一見に如かずです。とにかく皆さん、私とミラージュの後に着いてきてください。それでは鉱石探索ツアーに出発しますよ?ミラージュ。準備は大丈夫?」
私はミラージュを振り返り、尋ねた。
「はい、レベッカ様。準備は出来ております。」
私達の足元には11個のカンテラが並べられてある。
「では、火を付けますので皆さん1人一個ずつ、持って下さいね。はい、どうぞ。」
そして私とミラージュは半信半疑の偉い人々全員にカンテラを配り終えた。勿論ランス皇子もカンテラを手に持っている。
「楽しみだね。本当に鉱石が見つかったら、大したものだよ?」
ランス皇子はニコニコしながら私に言った。
「ええ。ばっちりです。お任せください。」
他の人達はまだ疑い深い目で見ているが、そんな事を一々気にしてはいられない。
「はい、では出発しまーす!」
私は陽気な声で言うと、心の中で祈りを捧げた。
―どうか沢山の鉱石が現れますように― と・・・。
****
「うおおっ!こ、これはすごいっ!」
「何と!このように大きな水晶の原石が見つかるとは!」
「ああっ!し、信じられん・・・ダイヤだっ!ダイヤモンドだっ!」
もはやこの洞窟内は人々の歓喜の声が響き渡っていた。そして彼らは誰もが必死で鉱石を掘り起こそうと念の為に用意して置いたつるはしをカンカン振り下ろしている。
その様子を満足げに見つめる私とミラージュ。
「レベッカ様・・随分今回はサービスしましたね?」
耳元でミラージュが囁いて来た。
「フフフ・・・まあね。生半可な量では・・彼らは満足してくれないでしょう?それにしても・・すごい光景ね・・。」
私は彼らの様子を半ばあきれたように見た。
彼らは全員目を血走らせて、中にはおじいちゃんのような人もいるのに、つるはしを振るって鉱石を掘ろうとしているのだから。いやはやその凄まじさと言ったら・・。その時、背後から声を掛けられた。
「レベッカ皇女。」
振り向くとランス皇子だった。
「君のお陰だね。多分・・・鉱石が採掘出来るようになったのは。」
意味深な笑みを浮かべながらランス皇子が言う。
「え?ええ・・まぁ・・そんなところですね。私は鉱脈を見つけるのが得意なんです。」
するとミラージュが言った。
「レベッカ様・・・かれこれもう1時間以上経過していますけど・・いつまで彼らに鉱石を掘らせ続けるのでしょう?」
「そう言えばそうね・・・。まさかこんな事になるとは思わなかったから・・。」
私の中では鉱石がこの洞窟の中にある事だけを告げたら、次のステップへ進もうと思っていたのに・・。
「そうだね、このままじゃきりがない。そろそろ終わらせた方が良さそうだね。鉱石掘りは専門家たちに任せるべきだよ。」
ランス皇子が至極まっとうな事を言う。
「ええ、そうですね。それでは・・・私にお任せください。」
ミラージュが進み出ると、あちこちで鉱石掘りを続けている偉い人達に超音波交じりの声で呼びかけた。
「はい!皆さん!そこまでですっ!」
キーン・・・ッ!!
響き渡る金属製の音に耳を押さえてうずくまる彼ら。
「よ、よせっ!」
「た・頼むから・・その声を出さないでくれっ!」
「ぬああああッ!み、耳があっ!」
やがて辺りが静まり返ると、そこには耳を押さえてうずくまる人々がいる。
「はい、皆さん。それでは鉱石掘りはここまでです。次の場所へ行きましょう!」
私は大きな声でお偉い人達に呼びかけた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます