3-3 ランス皇子の忠告
「はぁ~・・・お腹すいたなぁ・・・。」
すきっ腹で部屋にいても頭に浮かぶのは食べ物の事ばかりなので、私は今気分転換の為に中庭をぶらぶらと歩いていた。
中庭ではあちこちでメイドやフットマン達が仕事をしている姿を見かけるが、誰一人として私に挨拶をする者はいない。ここでも私がどれだけ軽んじて見られているのかと言う事が良く分かる。
「全く・・・これじゃ、オーランド王国にいた時と待遇があまり変わらないわね・・。あ、でも着る物に関してはグランダ王国の方がずっとましだし、食べる事に関しては・・・う~ん・・・お料理はこの国の方が素晴らしいけど、こんな風に食事抜きにされたことは無いしねぇ・・・。」
等とブツブツ言いながら、私の目は庭に生えている木々に目を配ることは怠らない。実は庭に出てきたのにも訳があった。あわよくば果実のなる木でも庭に生えていれば、もいで食べようと思っていたのだけれど・・・・。
「なかなか思い通りにいかないものね・・。」
思わず口に出して呟くと、突然声を掛けられた。
「何が思い通りにいかないんだい?」
「え?!」
慌てて振り向くと、すぐそこには木製のガゼボが建てられており、木のベンチに座っているランス皇子の姿が目に入った。
「ま・・まあ!ランス皇子様・・こんなところで何をされているのですか?」
驚いて尋ねると何故か手招きされた。
「・・?」
不思議に思って近付くと、ランス皇子は自分の隣の空いている席をポンポン叩くと言った。
「何って・・・日向ぼっこだよ。レベッカ様も一緒にどうだい?」
「は、はい・・ではお隣失礼します。」
そしてランス皇子の隣に座ると尋ねた。
「あの・・いつもこちらで日向ぼっこをされているのですか?」
「うん。たいていそうだね。」
ランス皇子は欠伸を噛み殺しながら言う。え?そうなの?普通皇子様と言えば執務とか・・・領土を見回ったり?とか・・色々仕事があるのでは?
「あの・・・失礼ですが・・ランス皇子はおいくつですか?」
「うん?僕?26歳だよ?」
「26歳!」
何と私よりも9歳も年上だ!
「あの・・それで・・ご結婚とかは・・・?」
「してると思う?」
ランス皇子は自分の事を人差し指で刺しながら尋ねて来る。
「い、いえ・・・お1人様の様に見えますが・・。」
「うん、当たり。僕は独り身だよ?」
ニコニコしながら能天気に話をするランス皇子。
「あの・・・お伺いしたいのですが・・・何故、第一皇子でおられるランス皇子もまだご結婚されていないのに・・今回アレックス皇子様が先に結婚されることになったのですか?」
よりにもよって愛人1号、2号を囲っているのに・・・。
「ああ、それはね・・簡単な事だよ。僕には王位継承権が無いからさ。かといって野心も無い。だからこんな風に自由気ままに生きているんだけどね。」
「え?」
今、さりげなくサラリと凄い事を言っているのでは?
「あ、あの・・・それは一体どういう事でしょうか・・・?」
「ああ・・レベッカ様はアレックスの妻だから知っておく権利はあるよね?実は僕の母親はこの城のメイドだったのさ。父は中々子宝に恵まれなくて・・そんな時に1人のメイドに手を出して・・・生まれたのがこの僕。そして母はこの城を追い出され・・2年後に国王と王妃の間に生まれたのがアレックスだよ。だから僕は貴族でも何でもない卑しい女の血を引いた人間と言う事で、王位継承権を持っていないのさ。」
「そう・・だったんですか・・・。」
私の境遇も複雑だけど・・ランス皇子もなかなかの境遇に置かれた人だと言う事が理解出来た。
「ランス皇子。」
「何だい?レベッカ姫。」
「私達・・良いお友達になれそうですね?」
「ああ・・そうだね。でも・・・。」
突然ランス皇子は真顔になると言った。
「レベッカ姫・・・これは僕からの忠告だよ。そろそろ周囲が動き始めてきた・・。覚悟をしておいた方がいいかもしれないよ・・?」
「え・・?か、覚悟・・・?」」
私はランス皇子の顔を見上げた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます