第一話  さらば故郷

人間が統治していた世界権力はある時から魔王の手へと渡り、絶対アニマ(魔物)主義社会へと姿を変えていた。


「アニマ」というのは魔物のことだが、魔物達にとっては当然「魔物」なんて言われ方はいい気分などしない。自分達は正当な生き方をしているのだから。そう言った考えの中、生み出された彼ら自身の呼び方なのだ。


中央都市や中枢都市でもアニマと人間との共存は限りなくあるものの対等ではなく、互いを憎んでいた。


そんな世界にもアニマと人間が唯一対等で助け合いのある場所が大陸の端っこ、北の小さな村にあった。


寒い冬が終わり春の息吹を感じる日。北の小さな村で

「ロルド・クローバー」は生まれた。



ロルド「ウンギャーウンギャー」


その愛くるしい鳴き声は汚れたこの世界のことはまだ知らないようだ。



ロルド母「いい子ね、ロルド。それにとっても可愛い」



村人A「あぁ。この小さな村にまたこんなかわいいやつが増えたら賑やかになるな、おめでとうな、ガーベラ。」


村人B「そんじゃあ今日は一杯やるか!」



家の中にはたくさんの人やアニマがお祝いに来ていた



村人C「だが、アンタも不思議な種族だよなぁ夫なんていねぇのに神の気まぐれから子を授かっちまうなんて、しかもコイツの兄の時といいおかしな虹が出るっちゅうのがいかにもだよなぁ。」


アニマA「ああ、世界大きく変化させる器を産むとかいう【ペチュニア族】だろ。なんでも魔王はその器の再登場を防ぐために一族諸々虐殺したとか。なんだってそんなことしやがる。」


長老「ホッホッホッ。お主らにはあまりわかりづらい話じゃがアニマと人間の共存というものはそれほど複雑で難しいものなんじゃよ。わしらが住んでいるこの村が異常ということだけでのう。」



「ガチャリ!」 ドアが力強く開かれた。


男の子「ただいま!母さん!」



村人A「よう、トーギリ。みろよお前の弟だぞ!」


トーギリの視界にはロルドではなく、母だけが映されていた。


トーギリ「ふぅん。それより母さん!一人で魔法を詠唱できるようになったんだよ!」


ガーベラ「あらすごいわねトーギリ。今度ロルドにも教えてあげてね。」


トーギリ「え。あっ…うんそうだね…」


トーギリは曇った顔でそういうと家から出ていった


アニマB「…あいつも変わったやつだよな普通弟が出来たら喜ぶもんなのによぉ。いっつもガーベラのことしか見てねぇ」


村人B「まぁ、アイツはいつものことだ。そんなことより今日は飲むぞー!」



村人C「お前は飲みたいだけだろうが。」



こうしてお祭り騒ぎが小さな村で一晩中続いた。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


      それから15年後



魔王による絶対アニマ主義が本格化し始め、ロルド達が住んでいる近くまで魔王の侵攻が始まっていた。



急がなければ、




魔王がアニマと人間が仲良くやっているなんて知ったらどうなってしまうのだろうか。


2年前。村を出で行ったっきり帰ってこないトーギリ兄さんは大丈夫だろうか?



ロルドはいつもそんなことを考えていた。



   

    そして、その時が来た





村人B「本当に行っちまうのか?おめぇ」



ロルド「うん、前々から考えていたことだから。」



アニマC「トーギリは絶対生きているはずだ!

見つけたら連れて帰ってやれよ!」



ガーベラ「ロルド…忙しくても手紙は送ってよ。あなたまで行方がわからなくなったら私…」



ロルド「わかってるよ。母さん。兄さんも絶対に連れて帰ってみせる。そしてアニマと人間が共存できる世界へ変えてみせるよ。」


そういうとロルドは早々と村を離れて行った




彼にとっては外とは今までで数回しか足を踏み入れたことのない未知の地。


不安など一欠片もない旅立ちだった。



そんなロルドが見えなくなるまでガーベラは見送っていた。



ガーベラ「あの子。本当に大丈夫なのかしら…」


村人D「大丈夫に決まってるわよ。だってあの子は昔から長老よりも強い魔法を小さい頃から詠唱できるし、そこら辺の男達より全然力もあったじゃない。自信持ちなさいよ。アンタの産んだ自慢の子でしょ!」





そうトーギリもロルドも英傑の器なのだから






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魔王となった英雄 ロイク @heyguys

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