25話 「決闘」 破

「「ただいま始まりました。緑葉高校SEVEN・GATE春場所第一回戦。実況はこの私、新田秋義がお送りします」」


「「同じく解説の細田則本です」」


「「さて細田さん。今回の対戦カードですが、二年生の小此木慧選手と楠千尋選手です。どのようなスタイルが特徴なのでしょうか」」


「「そうですね。小此木選手は守りが得意のディフェンスタイプの選手です。守備力の多い近接ユニットを壁にして強力な間接ユニットや装備カードで稼ぐタイプです」」


「「なるほど。楠選手は?」」


「「まだデータが無いので何とも言えませんが、チラッと見えた限りでは攻守揃ったバランスタイプのように感じます。攻撃力全振りカードがあまり無い以上、不利なのは楠選手では」」


「「ありがとうございます。今、シャッフル、コイントスが終わりました。先行は小此木選手です。それでは!」」


「「ゲートオープン! デュエルスタート!」」




「俺のターン! ドロー!

 ……まずは近接ユニット『詰所の盾兵』を召喚する!」


 詰所の盾兵が先輩のフィールドに現れる。攻守1/10の守備型ユニットだ。これは原作に出てこない完全オリジナルのカードだ。カードゲームのために作られたキャラクターであるので、便利だがあまり僕は好きではない。


「スペルカード、『詠唱短縮』を発動! 手札一枚を裏向きのまま、攻守0/0の援護ユニットとして場に出す!

 更に間接ユニット『新兵 ジェームズ・フレグランス』を召喚!

 ……先行は攻撃できない。ターンエンド」


 詠唱短縮とジェームズか。詠唱短縮はスペルカードをユニットカードとして扱う魔法だ。すなわち、僕がこのターンに倒さなかったら、伏せられたスペルを一ターンに一回打ち放題になる。ジェームズはどこでも攻撃できるけど、攻守は大したことは無いから何とかなるか。


「僕のターン、ドロー!」


 引いたカードは『新兵 アイザック・マクシミリアン』。このカードは手札のユニット一体を捨てることで相手のユニット全てに一ダメージを与えることができるカードだ。


 間接ユニットにしては攻守も3/6で悪くないけど、こいつを使うと僕の撃破カウントが一加算される。使いどころが難しいけど、先輩の場に伏せられたカードがある以上、使うべきだ。


「僕は手札の『ベルフ・アキレウス』を捨てて『新兵 アイザック・マクシミリアン』を召喚する。

 条件達成による特殊効果発動! 全ての相手ユニットに一ダメージを与える! これで先輩の伏せユニットは撃破だ」


 雷を纏った槍が、地面に突き刺さる。その衝撃で、雷撃は地面を走った。そのまま、伏せユニットにもダメージが入る……。


 かと思われた。


「甘い! マスタースペル、『鉄の盾』を伏せユニットに使用! 盾の守備力3が肩代わりするぜ!」


「「おおっと! これはナイスです小此木選手。伏せユニットの撃破を防ぎました」」


「「マスタースペルは三枚まで任意のタイミングで使用できる魔法ですが、ここで切って来ましたね」」


「「一ターン後にまた使えるのでは?」」


「「ですが、小此木選手の元に戻るのは次の楠選手の番が終わってからです。緊急用に残しても良かったと思いますが」」


 僕の特殊効果は防がれてしまった。つまり、あのカードは先輩のキーカードである可能性が高い。もしかすると、盤面ロックのパーツになるだろうな。


 何としても、撃破しておかなければ。


「僕は近接ユニット『新兵 ブレイブ・ヒース』を召喚! 条件達成による特殊効果で、デッキから装備カード『勇者の剣』を手札に!

 そのままブレイブに装備させる」


「「楠選手。今度はコンボですね」」


「「ええ。間接ユニットが場に居ることが条件のブレイブと、特殊効果が味方にもダメージを与えるアイザックを上手く組み合わせました」」


「「勇者の剣の効果で、攻守は二ずつ上がります。攻守5/10ですね」」


「「特待生の『新兵』シリーズは使いやすいカードが多いですからね」」


「更に僕は、間接ユニット『飛行兵グラップ』を召喚!

 攻守4/4のグラップで盾兵を攻撃!

 盾兵はアイザックの特殊効果も含めて1/5にグラップは4/3になる!」


「くっ……まだまだ!」


「続いてブレイブで盾兵に攻撃! 盾兵はロスト。

 次にアイザックで伏せユニットを攻撃! こちらも撃破!」


「タダでは死なん! 手札からスペルカード『報いた一矢』を発動! 自分のユニットがロストした時、相手の手札のスペルカードを一枚捨てさせる!」


 これで僕は手札から『魔術転生の儀』を捨てた。これも今の盤面ではあまり意味の無いカードだ。

 先輩のカウントは1.5、僕は1。まだ有利な状況が続いている。


「ターンエンドだ」


「やるな千尋。ちなみに伏せユニットは『正々堂々』のスペルカードだ。いいカンしてるな。

 ドロー! 俺はスペルカード『クイックリロード』を発動! 山札から三枚引く!」


 手札増強カードか。便利だよな。僕もよく使う。リロード系は一ターンに一度しか使えない。何度も使われると山札を圧縮するからだ。


「まずは『詰所の盾兵』を召喚。そして装備カード『盾持ちの長槍』を使う。攻守は3/10になる。更に! 『飛行兵グラップ』『新兵 ジェームズ・フレグランス』を後衛ゾーンに召喚!」


 先輩も出したジェームズ・フレグランス。このユニットは第一部の主人公なんだよな。特待生にあと一歩及ばずに一等兵からスタートしたキャラクターで、二丁拳銃で飛び回って戦う。戦闘のカッコ良さと、終盤の展開からめちゃくちゃ人気がある。かくいう僕も大好きだ。


「ボーッとしてる暇はないぞ千尋!『ジェームズ』、『グラップ』で『ブレイブ』に攻撃!」


「「おっと小此木選手! 味方を特攻させた!」」


「俺の『グラップ』はロスト。『ジェームズ』は攻守3/1だ。

 ……だが、これで。『盾兵』で『ブレイブ』を撃破!」


「……なるほど。壁ユニットのステータスを守ったか」


「俺はターンエンドだ」


 先輩は中々手強そうだ。


「ドロー。僕はスペルカード『リロード』を発動。更に近接ユニット『新兵 レオン・ライオット』を召喚。『鉄の盾』装備させて攻守6/8にする」


 僕のカードはリロードとレオンだ。壁性能と攻撃性能のバランスがいいユニットと、一ターン後の手札増強。


「続いて手札を一枚捨て、スペルカード『小爆発』を発動。『詰所の盾兵』の守備を3下げる!」


「攻守は3/7か。……ギリギリだな」


「『アイザック』、『レオン』で『盾兵』を攻撃。更に『グラップ』で『ジェームズ』を攻撃! どちらもロストだ」


「俺のターン。一気に撃破カウントが4まで溜まってしまったな。ドロー」


「俺は『クイックリロード』を発動。『小爆発』を『レオン』に使う。更にスペルカード『新・未来設計図』を発動。山札の上から五枚を入れ替える」


 山札操作? なぜそんな事をする必要があるんだ?

 ……先輩は何かを狙ってる。注意しておくか。


「『詰所の大盾兵』召喚。『盾持ちの長槍』も装備させて攻守5/15だ」


「また壁……だと?」


「千尋。先に言っておく。俺の勝ちだぜ」


 先輩は不敵に笑う。もう勝ちのビジョンが、設計図が、先輩の中にあるのだ。

 僕の手札はゼロ枚。撃破カウントは2。ここから、どうやって先輩は勝つのだろうか。


ここから、決闘は怒涛の展開を見せる。

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