終章 自由ヲ、求メテ

――暴動から一夜明けた収容所。

  植物園でさんきゅうと弐っちゃんがくつろいでいる。


弐っちゃん「いい天気ですね」

さんきゅう「そうだね」

弐っちゃん「…あ、さんきゅうさん。ケガの方は?」

さんきゅう「ああ、もう大丈夫」

弐っちゃん「良かった。・・・・・・・・・あの、さんきゅうさん」

さんきゅう「うん?」

弐っちゃん「私と一緒に、旅に行きませんか?」

さんきゅう「えっ?なんで急に?」

弐っちゃん「実は、塩分ちゃん達に変な質問されたんです。それで、ちゃんとした答

     えを出しといてねって言われて」

さんきゅう「何て言われたの?」

弐っちゃん「・・・この世界のとは、違う自由が手に入るけど欲しい?って」

さんきゅう「この世界のとは違う自由?」

弐っちゃん「うん。さんきゅうさんは何だと思う?」

さんきゅう「う~ん、想像も出来ないな。でも、この世界の自由でないのなら、もら

     ってみてもいいんじゃないかな」

弐っちゃん「この世界のじゃだめなんですか?」

さんきゅう「この世界の自由っていうのは、ありとあらゆる柵(しがらみ)から開放

     される事なんだと思うけど、生まれた時からその柵に頼りきって生きてき

     た僕らから、それを取ってしまったら本当に生きていけるのかわからない

     し、なにより怖い。僕らにとって、この世界の自由はとてつもなく広すぎ

     るんだよ」

弐っちゃん「・・・私、自由ってそんなに難しいものとは思わなかった。さんきゅうさ

     んすごいですね」

さんきゅう「すごいことなんかじゃないよ。でも、矛盾しちゃうけど、僕も心のどこ

     かでは自由が欲しいって思ってる。だからその自由、僕だったら受け取っ

     ちゃうかもしれない」

弐っちゃん「わかりました。じゃあ、私も受け取ります」

さんきゅう「私もって、これは弐っちゃんだけがもらえる物でしょ?」

弐っちゃん「じゃあ、聞いてみますよ。さんきゅうさんの分もないかって」

さんきゅう「あんのかなぁ?」

弐っちゃん「きっとありますよ。だから一緒にその自由を満喫しましょうよ」

さんきゅう「うん。弐っちゃんがそれでいいのなら、喜んで」

弐っちゃん「約束ですよ」


-弐っちゃんが小指を出し、さんきゅうも照れながらも自分の指を出す。

 ジョナ。二人を導く。

 場所は変わって、領域の中。

 ハックルベリーとスパイスがいる。


ハック  「約束したんだ。あの子たちと自由を手に入れるって。だからあんたらの

     案内はいらない。いつか自力で行ってやるさ。だから代わりにあいつを、

     さんきゅうを連れて行ってくれないか。弐っちゃんと離れるのも寂しいだ

     ろうからな。できるか?」

スパイス 「適任者の推薦ならば、多分問題ありません。それに、わたし個人として

     も、彼なら大丈夫だと思います」

ハック  「そうか。なら、頼んだぜ」

スパイス 「はい。では…」


-一礼し、その場を去るスパイス。

 収容所の一室。眠っているハックルベリー。

 そばには、せんせいと看守がいる。


せんせい 「これでよしと。あなたもお疲れ様。今日はもう帰っていいわよ」

看 守  「…」

せんせい 「こら。こういう時はお疲れ様でしょ」

看 守  「え?」

せんせい 「あなたにそんな振る舞いを強要した人はもういないのよ。もう少し肩の

     力を抜きなさい」

看 守  「は、はい…」

せんせい 「そういえば、あなたとはあまり話したことなかったわね。今度食事でも

     どう?おいしいところ知ってるわよ」

看 守  「え、いいんですか!是非」

せんせい 「決まりね。じゃあ、今日はお疲れ様」

看 守  「お疲れ様でした!!」

せんせい 「…もうあの暴動から一週間が過ぎたわね。暴動の件は結局、所長の行き

     過ぎた運営が招いたものとして処理されたわ。私の関与もばれなかったみ

     たいだけど、まぁその責任も押し付けちゃってもバチは当たらないわよ

     ね。そういえば、さんきゅうと弐っちゃんのことなんだけど、まだ見つか

     ったって報告が入ってこないの。何かあの二人、もうここには戻ってこな

     い気がするのよ。それも、なぜかいい意味でそう感じるのよね」


-かすかにうなづくハック。


せんせい 「そういえば、あなたにはまだ謝ってなかったわね。ごめんなさい。あな

     たの存在も利用してしまって。お詫びといっては何だけど、これをあげる

     わ。あ、じゃあ特別にこれも」


-収容所の鍵とラジカセを渡すせんせい。


せんせい 「それじゃあね。早く自由が手に入るといいわね。二人の女の子と一緒

     に」


-部屋を出ていくせんせい。

 ハックの虚構意識。

 ネズミとコウモリが帰ってくる。

 目覚めたハックルベリー。

 二人と再会を果たし、脱出を決行する。


 終 劇

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根源悪の牧場 Aruji-no @Aruji-no

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