人に、又、一人
ろーた
人に、又、一人
自分の居場所はないと感じた。でも、自分の周りにいたのは人の心に土足で入り込んで様子を見ては、適した靴に履きかえて心の中に居続ける奴ばかりだった。
人の努力を妬んだ。他人が掴み取ったものを「才能」の一言で片づけた。
ケンカをした。本当に些細な理由だった。付き纏う疑問符を払い落とすには、今の自分は幼すぎるのだと気が付いた。
妥協が癖づいた。「まあいいか」の一言は自分を怠惰を言い換えただけの安堵へと誘うには十分だった。
初めてバイトをした。無力な自分を証明しその傷を癒す快感を覚えただけだった。
周りだけが楽しそうにみえた。学校生活を楽しむために必要な努力をなにもしていないのだから当たり前か。
堕ちるところまで堕ちた。
それでも、それでも、奈落へ手を伸ばす暖かい手はまだあった。
友達だけは、変わらなかった。マスク越しでもはにかむ君は確かだった。
「一緒に帰ろう」の一言が言えた。自分でも驚いた。聖で弥くその声は、刹那、何かを変えてくれた。
「また今度」手を振る旧友は、健やかな心を思い出させてくれた。
「お前なりの良いところがある」の一言は、心を群青色に奏で、彩り、良縁を築いてくれた。
「高校で離れても連絡とってくれて嬉しい」の一言は、海を斗で量るような包容力で助けてくれた。
この世界は一人で生きるには広すぎた。綺麗ごとだけでは生きていけないと最近分かった。
汚い綺麗ごとが手を伸ばしても届かない場所にいる。
辞書に載っている言葉では言葉足らず。
まだ、みんなで生きている。
人に、又、一人 ろーた @taito24
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