第5話 記憶のカケラ



4日目の朝。


窓を開けると、そこはあたり一面が銀世界になっていた。


遠くの向こうの方から日が昇り、一筋の光がぱあっと差し込んでくると、たちまちあたりはキラキラと輝きだす。


眺めていた時間はほんのわずかなのに、そのわずかな時間がわたしにとってはとても長い時間に感じた。

もう、ずっとこうして眺めていたんじゃないかというくらい。



その、幻想的な景色に見入ってしまってた。



「み、深月…!」



わたしよりも早く神社に着いている深月が、雪を見て喜んでいる姿がそこにはあった。



「明里。おはよ…って、そんな息切らせてどうした? 走って来たのか?」


「う、うん。…だって、この景色見たら居ても立っても居られなくて」


「俺も。目が覚めて窓開けたら、どこ見渡しても真っ白なの、びっくりした。でもすっごいテンション上がった」


そう言って、また嬉しそうに微笑む。



「雪だるま作れるね」


「まぁ、小さいのだけどな」



雪は3センチくらいしか積もっていない。


だから、大きな雪だるまを作ることは不可能だけど、小さいのなら作れそうだった。


しゃがみ込んで雪を触ろうとした時、深月が「素手で触ると冷たいから今は止めとけ」そう言って、わたしの手を掴む。



「それにここ神社。さすがにここで雪だるま作るのはまずいって」



さすがに今、雪だるまを作ろうとは考えていなかったけど…



「雪溶けちゃうかもしれないよ……?」


「また降るから大丈夫だって。それにすぐには溶けないから帰りまでもつだろ」


「……どうして、帰りまで?」


「明里の家の前に雪だるま作りたい。そしたら帰りに必ず見られるだろ?」



「その方が雪だるまも寂しくないだろうし」そう言ってニカっと笑った。



もしかして雪だるまを作ると言い出したその時から深月は、わたしの家の前に作るということを決めていたのかもしれないと、今の言葉を聞いて思った。



「可愛いの作ってあげないとな!」


「雪だるまに可愛いとかあるの?」


「あるって! でも、まぁ、明里の可愛さには敵わないだろうけどな」



──なっ…! もうっ! い、いきなり何を言いだすかと思えば……っ



「あ、顔赤くなった」


「…こ、これは、寒さのせい」


「ははっ。ま、そういう事にしとくか!」



深月の言葉は心の中にするりと簡単に入り込んで、いとも簡単にわたしの心を乱す。


「…ずるい」と小さな声で呟いたそれに気がついた深月は「昨日のおかえし」そう言った。



「………昨日?」


「もう自分がしたこと忘れた? ほら、してくれたじゃん。俺にキ──…」


「わあぁぁっ…!」



そこでようやく思い出す。

昨日自分が何をしたのか、を。


その瞬間、ボボボボっと顔が熱くなるのが分かった。


「焦りすぎ!」そう言ってクスクスと笑う深月は、意地悪だ。そう思った。



「思い出すと照れる?」


「…だ、だって…っ」


「昨日の明里は大胆だったよな。でも、俺は嬉しかったけどね」



「明里からのキス」そう言って、わたしの頭を優しく撫でる。


き、キス…っていっても唇にじゃなくて、頬なんだけど……


その単語が出ると昨日のことを一瞬にして思い出してしまうというか、まだ唇に記憶が残っているというか…



「やっぱ最近の明里は変わったよな」と、どこか昔を懐かしんでいるような表情をする深月。



「今までは自分からそんなことしなかったし、あんまり好きとかも言わなかったじゃん? それなのに最近は、よく気持ちを伝えてくれるし行動に移してくれるし。…俺としては嬉しいことばかりだけどね」



深月の言葉を聞いてホっとすると同時に、ごめんね。と思ってしまうのは、きっとあの頃に伝えることができなかった後悔があるから。


あの頃の記憶がある限り後悔は消えないけど、深月に二度も同じ思いはさせなくて済む、とそう思った。



ヒューっと冷たい風がわたしたちの間を通り抜け、身体の熱を奪っていった。



「なんか心境の変化でもあった?」



わたしの方を見る深月。



「べ、別に、ないよ? 」


「俺からすれば最近の明里、ほんとに変わったなぁって思うからさ。まぁ、今も前も好きな気持ちは変わらないんだけど」



やたらとドキドキがうるさくて、いつか深月に聞かれちゃうんじゃないかと思ってしまう。



「み、深月は…その、真っ直ぐ伝えてくれるよね。なんか聞いてる方が恥ずかしくなるくらい」


「あ、じゃあ今、ドキドキしてる?」


「えっ…」


「その顔は図星だ」



普段は優しくて頼り甲斐もあって大人っぽいのに、こういう時だけたまに意地悪になる時がある。


でも、嫌いじゃない。


むしろ、そこも含めて好きだった。



「…み、深月は?」


「ん? 何が?」


「…その。……ドキドキしたりしない?」



言ってすぐに後悔したわたしは「やっぱり今のなし!」そう言って訂正するもすでに手遅れだったみたい。


ピタリと立ち止まる深月。



「……俺も、すっごいドキドキしてるよ」


と、ポツリと呟いた。



「ほら」そう言ってわたしの手を掴むと、それを自分の胸のところにあてる。───と、その奥から、ドキドキ、ドキドキと、わたしと同じくらいの鼓動の音が聞こえた。



「…な? 聞こえるだろ?」


「う、うん」



まだ手の平に鼓動の音の余韻が残っているような感じがする。



「いつだって俺は緊張してんだよ。」


「し、知らなかった」


「明里に気づかれないように、ただかっこつけてただけなんだけどな!」


はははっ、と笑う深月。



そんなこと今、初めて知った。


…じゃあ、あの頃も同じように緊張してたってこと……?



「好きな人の前ではかっこつけたがるんだろうな、男っつー生き物は」


「なんか、名言っぽいね」



わたしが笑うと、深月もまた笑った。



「明里といると幸せなんだけど、緊張するんだよね。矛盾してるだろうけど、幸せと緊張って似た者同士なのかもしんないよな!」


「そうなの、かなぁ」


「絶対そう! だから今までずっと緊張してるけど、明里と一緒にいると幸せな気持ちなんだと思うな!」


と、空を見上げて呟いた。



その横顔から幸せが伝わってくる。


深月が言っているのは本当かもしれない。



初めて話した時から深月は意外と可愛らしいことを言う人だった。

そして今もそれは変わっていなかった。


わたしの視線に気づくと「ん?」と笑い返してくれる深月。

その優しい眼差しが、好き。



ぱあっと明るくなると、氷柱( つらら )や凍っていた雪が少し溶けてその光に照らされて、あたり一面がキラキラと輝く。


空気中の冷たい粒も、その光を反射して、わたしたちを取り囲むように。


初めて見た、その景色。


とても綺麗で幻想的で。



息をするのも忘れてしまっていた。



「すっげー! …って明里、泣いてる」


「──え…?」


「明里ってほんと泣き虫だよなぁ」


そう言って、わたしの涙を拭ってくれる。



そこで初めて、自分が泣いていることに気がついた。



「ご、ごめん」



わたし、どうしちゃったんだろう……


この景色を見て泣いたの? それとも何か悲しいことがあったの? それとも別の何か……



「なぁ、明里」


「…ん?」


「一つ俺と約束しない?」


「……やく、そく?」



わたしの涙を拭った後、ポンっと頭に手を乗せて、わたしにこう呟いた。



「悲しくなったら泣けばいい。その時は必ず俺が拭ってあげる。───だから、ひとりで隠れて泣いたりするな」



あの頃と同じように深月は、わたしにその言葉をくれる。


その言葉がわたしにとって支えみたいなものだったから、それを聞いただけでギューっと喉の奥が苦しくなる。


“ああ、また泣きそうなんだ”と、思った。



「いつだって俺は明里の味方だから。明里の傍に必ずいるから」


「──う、ん…っ」


「俺も、約束するよ。…ずっと明里の傍にいるって」


「…うん。うん…っ!」



本当は、分かってる。


三年後に深月がいないってこと。


だけど、その言葉に頷いた。そしたらそれが現実になるかもしれないと思ったから。願ったから。



「明里の涙を拭ってあげるのが、俺の役目だからさ」



その言葉を聞いて、また涙が溢れてきたわたしに呆れつつも、いつものように優しく拭ってくれる深月。


そして、頭を撫でてくれた。



* * *



案の定、学校へ着いた頃には少し目が腫れていて、真っ先にあずさに気づかれた。そして、また心配された。



「ねぇ、明里。わたしたちもうすぐで三年になるでしょ? 」


「う、うん…」



三年生。その言葉が、ドクンっと、胸の奥で静かに鳴った。



「みんな同じクラスになれるかなぁ…」


「どう、だろうね……」



結論から言えば、同じクラスになれない。


なぜなら深月は三年生に進級する前に事故で亡くなってしまったから。


──でも、過去に戻ってきている今ならやり直せる。そしたら、きっと深月も同じクラスになれるはず…。



「明里とは離れたくないなぁ。その次に小林くんと真白くんがいたら絶対楽しい一年になると思う!」


と、目を輝かせて言った。



「そ、そうだね…!」


そう言ったわたしの心は、ポカンと穴が空いているようで、そこから冷たい風が入り込んでいるように身体は冷えてくる。



あの日を思い出して、怖かった。


またあの恐怖がわたしを襲う。



「明里?」


「…え、な、何?」


「顔色悪いけど、大丈夫?」



あずさに言われて顔に手を当ててみると、顔の血の気がなくなってるのかとても冷たく感じた。


けど、心配かけないように「大丈夫」そう言って精一杯笑った。



「三年生になったら受験一色になるだろうから、今みたいにたくさん遊ぶことはできなくなるかもね」


「う、うん」


「今のうちにたくさん遊んで思い出作っておかなきゃね!」



あと数日しかこの世界にいることができないわたしは、あずさとの約束を果たすことはできないけど、それでも笑って頷いた。



「受験生ってまだ実感湧かないけど三年生になったら変化あるかな?」


「どう、だろう…」


「周りが受験モードになったら嫌でも勉強するようになるのかね」



机の上に置かれたチョコレートを一つ摘んで、パクリと口に運ぶあずさ。



「ん〜、甘いの美味しい!授業の後は糖分必要になるからね。明里もいる?」


そう言って、わたしの口元にチョコレートを持ってくる。


それをそのままパクリと食べた。



「あははっ!なんか餌付けしてる気分」


「ちょ…、酷い!」


「いやー、だって何も言わずに食べる明里が可愛くて」


「……可愛くないってば」



むしろ、その言葉をそっくりそのままあずさに返したい気分だ。



「真白くんも、きっとこういう感じで明里に惚れちゃったのかもねぇ」


「……え? 深月?」



どうしてこの場面で深月の名前が出てくるんだろうと疑問に思いながらあずさの言葉を待つけど、答えてくれる気はないらしく、「あははっ」と笑っているだけだった。



「…あ! そういえば!」



不意に大きな声で何かを思い出したような素振りを見せるあずさ。



「朝ね、学校来る途中の話なんだけどさ! とにかく! とにかく可愛いの見たの!」


「…?」


「いや、ね? だから可愛いの!」


「…え、っと……可愛いのって何? 人? それとも生き物?」


「…ああ! ご、ごめん! それ言ってなかったよね。猫! 可愛らしい猫見たの」



机の上に置かれたチョコレートの存在さえ忘れかけている今のあずさには、その猫のことの方がよっぽど大事らしい。



「あんまりこのあたりで猫見かけないじゃん? だから不思議に思ってたんだけど…まぁ、飼い猫だったらあの可愛さであっても納得できる!」


「ん? 飼い猫だったの…?」


「だってさ、首元に鈴ついてたらどう考えても飼い猫でしょ?」



───ドクンっ…


その時、なぜか、胸の奥がざわめいた。



「明里?」


「あー…ごめん、なんでもない」



「そう? それでさー」と、その後もその可愛らしい猫の話を続けるあずさの声はするものの、どこかうわの空で相づちを打つわたし。



さっきのざわめきは何だったの……?



その猫を見たことがある?


いや、でも。…だったら記憶に残っているはず。なのに覚えていないってことは見たことがないってことになるけど……



ズキ、ズキ、ズキ。


何かを思い出そうとするたびに、頭の奥が割れそうに痛くなる。



「明里? 大丈夫?」


「……え」


「なんか、すっごく顔色悪いけど…」


「あー…ちょっと。ほんのちょっと、頭が痛い気がして」



少しどころではない。


かなり、だ。


でも、あずさにこれ以上心配はかけたくなかったから、わたしは嘘をつく。



「保健室行く?」


「…ううん。多分、すぐ治るから。そ、それより、さっきの話しの続き聞きたい」



わたしはあずさに言った。何かを聞けば、この頭痛の原因も分かるような気がしたから。



「話よりも明里が気になるんだけど…」


「大丈夫。ね? ……それより、その猫どこで見たの…?」


「え、っと……A駅の近くだよ」


「A駅……?」



って言えば、わたしの家とは逆方面。


そのあたりにいる毛並みの綺麗な猫で首元には鈴。───そんな目の引く見た目なら、きっと一度見たら忘れるはずはないだろうけど……



───ズキっ。



「!?」



……ああ。また、これだ。


何かを思い出そうとすれば、痛みが走る。



でも、何か大事な記憶だったような……



ズキ、ズキ、ズキ。


思い出そうと、記憶を辿ろうとすると、ますますその痛みは増すばかり。



「明里! 顔色悪くなってる!」


「だ、大丈夫…」


「じゃないって! 保健室行こう」


「…待っ……何かが、…思い出さないと、いけない気が……」


「今はそれどころじゃない! ほら、早く!」



わたしを立ち上がらせて保健室へと連れて行こうとするあずさ。



───チリン、チリン。


その時、どこからともなく聞こえた気がした鈴のような音。


その音にわたしは聞き覚えがある。


でも、どこで───……



ふわりと軽くなる身体。


体重が何かに奪われたようにわたあめのように軽く感じた瞬間、目の前が真っ白になった。



わたしの耳元であずさの焦りと不安が混じる声が聞こえる。


そして、もう一つ聞き覚えのある声が。



「───明里!」


その声を聞いた後、プツリとそこで意識が途切れた。




ふわり、ふわり、と

どこかへ飛んでいくような感覚。



と、その時


チリン、チリンと、また聞き覚えのある鈴の音がした。



誰。


誰が、わたしを呼んでいる?



あたりを見回しても何もない。


真っ白な空間の中にぽつんと、わたしだけが浮かんでいる。



これは夢の中……?



「おーい」と呼んでみても返事はなく、ここにわたし以外の誰かがいるわけではなく静かな時間が過ぎるばかり。



さっきまでの頭痛はなく、身体が軽くなって心地よく感じる。



軽くて、ぽかぽかと暖かい。


そんな空間。



───ぱあっと、まばゆい光が差し込んで、その眩しさに目を細めると、次第にあたり一面がその光で包まれる。


ほんの一瞬だけ。


何事もなかったかのように、その光はか細くなりゆっくりゆっくり消えると、目の前に人影のようなものが見えた。



「──深月…」



わたしにニコリと笑いかけてくれる深月が、そこにはいた。


でも、何も話さない。


じっ…と、そこに立ち尽くすだけ。



わたしの夢の中だから自分だけが自由に動けて自由に話せるのだろうか?


そんなことを考えていると、どこからともなく聞こえてきた鈴の音。



「──────。」



深月の口元が動いた。


けど、わたしには何も聞こえない。



何を言ったんだろう? わたしに何を伝えたかったんだろう?



やがて、わたしに手を振る深月。


そしてその瞬間、またあの光が、ぱあっと差し込んでくると、それに吸い込まれるように深月は歩いて行く。



「待って…!」



走っても走っても追いつけなくて、その差は広がるばかり。


わたしの声すら届いていない。


一度も振り向くことのない深月。


それが何だか切なくて悲しくて、心をギュっと握り潰されるような気持ちで。



あっという間にあたり一面が見えなくなるまで光り続け、その結果、眩しくて目を細めながら走るわたしが、最後に見たのは深月の後ろ姿だけ。



「───待って。行かないで……」



真っ白な空間さえも、そしてわたしの姿さえも、何も見えなくなった───…。



* * *



「…ん、」



ボーっとする意識の中、一番初めに見えたのは天井。そして消毒液の匂い。



「……目が覚めたか。」



聞き慣れた声がして視線を下げると、ベッド脇の椅子に座ってわたしを見つめる深月。



「倒れた時はまじでびっくりした。心臓止まるかと思ったわ…」



「ハアー」と深い安堵のため息をついた後、わたしの手をギュっと握りしめる深月。



「このまま明里が目を覚まさなかったらどうしようとか、最悪な事ばかり頭に浮かんで…明里が目を覚ますまで気が気じゃなかった…」



わたしの手を握る深月の手はとても冷たくなっていて、とても心配をかけたということが分かり申し訳なく感じた。



「…ごめんね」



大切な人を失う辛さを分かっているわたしは、今の深月の気持ちが痛いほど伝わってきて、心がギューっと苦しくなる。



「いや、明里は悪くないって。…それよりどこか痛むとこあるか?」


「……ない、と思うけど」



ゆっくり起き上がろうとすると、ズキっと痛んだおでこ。



「そういや倒れる時、おでこ軽くぶつけたらしい。……ごめんな、守ってあげられなくて」


そう言う深月の瞳は切なそうに揺れていた。



おでこにそーっと手をあてると、たんこぶができていて軽く触れただけなのに微かに痛んだ。



「大事には至らないみたいだけど、まだ無理はするなよ?」



そう言って微笑む深月だけど、瞳の奥が揺れている気がしたのは、きっと気のせいなんかじゃなかった。


わたしのことをわたし以上に心配してくれる深月のことだ。


また、自分を責めているんだと思った…。



「…それより、さっき何か怖い夢でも見てたのか?」


「えっ…?」


「なんか、うなされてたから」



はっきりと夢の内容を覚えている。けど、それを言ってどうなるのだろうかと悩んだ。

これを深月に言って深月はどんな反応をするだろうか。


きっと、困るだけだ。



「……よく、覚えてないや」


そう言って苦笑いをしてみせた。



「そっか。まぁ、でも、ほんと無事でよかったよ…。明里に何かあったら俺、まじでどうしようかと思ったから……」


握られた手にギュっと力が入る。



「2時間も起きないから、まじで焦った……」


「そ、そんなに寝てた…?」



「うん。ずっと寝てたから」と呟く深月は、顔色が真っ青だった。



「町田先生は、倒れる時におでこぶつけて軽い脳しんとう起こしてるかもしれないって言ってたんだけど…、」



保健室の中は静かで、深月が話すのを止めるたびに時計の針の音が響き渡る。


なんだかそれが妙に心地よく感じてしまう。



「目が覚めたら大丈夫だろうって言ってたけど、大事をとって早退してもいいって言ってた。どうする? 帰るか…?」


「…ううん、大丈夫。」


「ほんとか? 無理してない?」


「無理、してないよ」



「でも、心配だなぁ」と言って、眉を下げて心配な眼差しを向けてくる深月。



「倒れておでこぶつけたんだぞ? 念のため今日は早く帰って安静にしてた方が俺はいいと思うけどなぁ」


「…それじゃ、ダメなの」


「ん?」


「だ、だって……」



帰りに雪だるま作るって約束したじゃん。


そう、言おうとしたけど、わたしはその言葉を飲み込んだ。



「だって、何? 怒らないから言ってみ?」



深月の言葉はいつだって優しい。


いつだってわたしを責めるようなことは言わないし、焦らすこともしない。



「………雪だるま、作る約束したから…」



ボソっと呟いたその声が深月に届いてるか不安だったけど、「はははっ」と笑う声が聞こえてきて、ああ、聞こえたんだ。そう思った。



「ったく。ほんと可愛いよなぁ…」


「なっ…!」


「確かに雪だるま作る約束はしたけどさ、俺はやっぱり明里の身体の方が心配なんだよ。雪だるまは明日にでも作れるし。な?」


「だ、ダメ…! 今日がいいの……」



わたしに残された時間はわずかだから。


どうしても今日がいいの。


深月とこのまま会えなくなるのはどうしても嫌で、思い出を作るだけの7日間なんて、わたしには無理なんだ。



だから、深月を救うためにわたしは……



「お願い。今日がいいの。……わがままなのは分かってる。でも、どうしても今日じゃなきゃ嫌なの…」


「分かったよ。明里の熱意に負けた」



そう言って、優しく笑う深月。


さっきまでの悲しそうな顔はもうどこにもなくて、それを見てホっとした。



「でも無理はするなよ? どこか痛くなったりしたらちゃんと言えよ?」


「うん。分かった」



結局、さっきのざわめきは何だったのだろうかと不思議に思うけど、思い出そうとしてまた頭痛がしたら嫌だと思ったわたしはそれ以上は考えるのを止めた。



「次どうする? って言っても、もう昼なんだけど、ここで食うか?」


「え、でも…」


「ああ、大丈夫。町田先生が特別に今日だけここで食べるの許可してくれてるから」


「そう、なの…?」



わたしが寝ている間にそんな話までしていたなんて……



「ここで食う?」


「う、うん」



「ま、明里ならそう言うと思ったから手は打ってある」そう言って笑った後、カーテンを開けて廊下の方を指差した。



「 ? 」


「まぁ、見てなって」



廊下の遠くの方からものすごい勢いで走る足音がしたかと思えば、その音は保健室の前でピタリと止んだ。



──ガラっ



「明里! 大丈夫!?」



わたしに駆け寄ると、ガバっと両肩を掴んで今にも泣き出しそうなあずさ。



「倒れた時、ほんとびっくりした! もうパニックになっちゃってさ…わたし明里に声をかけることで精一杯で……」


「おいおい、明里が驚いてるだろ」


「あ、ごめん。でもほんとそれくらいびっくりして、なかなか起きないから大丈夫かな…ってずっと不安だった」


「……あずさ」


「もうどこも痛くない? 頭痛は? あ、おでこは痛むよね?」


と、質問責めのあずさ。



「おでこは痛むけど、もう大丈夫だよ。…心配かけてごめんね?」


「…よかった」



呟いた後、わたしにギュっと抱きついてきたその時、おでこに痛みが走り顔を歪ませると、「明里が痛がってる」そう言って深月が苦笑いしていた。



「おい、俺を置いて行くとか酷すぎるだろ」



と、不満たっぷりで保健室に入って来た小林くんはムスっとしながらも、両手にはたくさんの手荷物を抱えていた。



「弁当くらい自分で持てよな!」


「あ、ごめん! すっかり忘れてた」


「おいっ!」



テーブルに手荷物を置くと、わたしの方に視線を向ける小林くん。



「目、覚めたんだ。よかった。俺も含めみんな心配してたからさ…」


そう言って優しく笑いかけてくれた。



わたしの周りには、こんなにもたくさんの人がわたしのことを心配してくれる。


優しくて温かい人たち。


三年後に戻っても、みんなとずっと一緒に過ごしたいなぁ……



「ほら、明里の好きな紅茶もちゃーんと買って来てあるよ! さ、食べよ食べよ」


「ありがとうあずさ。あとでお金返すね」


「いいよ! てか、わたしじゃなくて真白くんに言ってあげて」



深月に指をさしながら、「真白くんが『紅茶買っておいて』ってお金渡されたからさぁ」と、ニヤニヤしながらあずさが言った。



「おい、それ言わないってさっき約束したじゃんかよ!」


「いいじゃん別に! いつでも真白くんは明里のことを思ってるって知っててもらった方が真白くんとしてもいいでしょ?」


「そうだぞシロ。…まぁ要は、かっこつけてーだけだろうけどな」


「お前たち俺をからかってただ楽しんでるだけだろーが!」


「「当たりー!」」



いつのまにか深月のことをからかい始めるあずさと小林くん。

三人のやりとりを聞いていて、おかしくなったわたしは「フフッ」と笑った。



「さ、食おうぜ!」


「保健室貸し切りで食べれるってなんかいいよね! 毎日これでもいいんだけど!」


「つぅか、ここ寒すぎ!」


「コバ、声大きすぎ」


「それ分かる。小林くんの声うるさい」


「山田だってさっきうるさかったじゃん」


「それとこれとは別だから」



あずさと小林くんがわーわー言いながら食べている片隅で、わたしは深月にコソっと耳打ちする。



「紅茶ありがとう。あとでお金……」



「返す」と言う前に深月に、「俺が好きでやってることだから」そう言って釘を刺された。



「それより寒くない? 大丈夫か?」


「うん、大丈夫」



「そか」と短く返事をした後に、優しく微笑んだ。その笑顔につられてわたしも笑い返すと、それをあずさと小林くんに見られていたみたいで、またからかわれる。



「──あ、見て! ほら外!」



そんなことを言いながら保健室の窓を指差して目をキラキラさせるあずさ。


その指差す方に三人とも目を向けると、窓から見えたのは、たくさんの真っ白な雪が降ってきていた。



「どうりで寒いはずだわ!」


「ね! この後、雪合戦とかしようよ!」


「はぁ? んなもん寒くて無理じゃね?」


「ちょっと小林くん! きみ、それでも男の子なの!? 男の子ならもっと率先して雪合戦やるべきでしょ」


「雪合戦に男も女も関係ないだろ」



言い合う二人を見て「コバも山田も静かに飯食べるってことできないのか?」そう言って呆れ気味にため息をつく深月だけど、どことなく笑っている。



「つぅか、シロの方がもっと雪見てテンション上がるべきだと俺は思うぞ!?」


「は? なんで?」


「名字にもついてるじゃんかよ! 真っ白な雪の如くの、真白が!」


「それ関係なくないか?」


「いーや! 大いにあるね!」



保健室でこんなに騒ぎながらお昼を食べているわたしたちを町田先生に見られでもすれば、きっと今後一切保健室を貸し切りで食べることなんて無理だろう。


だけど、この騒がしいお昼がなんだか微笑ましくていつもの倍、楽しいと思えた。



* * *



「あれ。明里、おでこのやつ取ったの?」


「…うん。だってシップつけてると人からの視線がすごく気になるから……」



「ああ、なるほど。」そう言ってクスっと笑った深月。



「…でも、まだ腫れてんじゃん」


「それは大丈夫。だって外、すっごい寒いからそれだけでシップ代わりになると思うの!」



わたしがそう言うと、「たしかに!」と言って笑った。



「まぁ、でも無理はするなよ? まだ完全に治ってるわけじゃないし、もしかしたら打った後遺症とか出るかもしれないし」


「…うん。気をつける」



一階に下りて昇降口に向かう途中、町田先生とばったり会った。



「成海さん。体調はどう?」


「もうすっかり良くなりました」



まだ、おでこは痛いけど…とは言わないでおくことにした。


ここでそんなこと言ってしまえば、きっと深月とこの後、雪だるま作ることができなくなってしまうだろうから。



「よかったわ。…でもまだ無理は禁物よ?」


それにコクンと頷いた。



「…まぁ、隣にいる彼がついていたら安心だろうけどね? だって倒れた時だって成海さんを抱えて、ものすごい勢いで保健室入って来たから。よっぽどあなたのことが大事なんでしょうね」


ふふふっ、と可愛らしく笑った先生。



「ちょ、先生…!」


「あら、なに? 別に口止めされてないからいいじゃない。」



町田先生の方がはるかに大人。


だからなのか、おしとやかに深月をからかって楽しんでいるっぽい。



「それにね、成海さん。あなたをお姫様抱っこしてきたのよ〜!」


「えっ…?」



お、お姫様抱っこ……!?



「ちょー…先生、まじ勘弁。俺ばっかいつも恥ずかしいじゃん」


「いいじゃないの〜。彼女のこと好きだからこそできる事でしょ?」



「……いや、まぁ。そうだけど……」と、小さな声で呟く深月の顔は真っ赤になっていて、それを見ただけでわたしは嬉しすぎて、ギューっと胸が締めつけられる。



過去に戻ってきてから、深月の照れる顔をよく見ている気がする。

……というより、あの頃はとにかく優しくて頼れる彼氏っていう感じで、影でそんなふうに支えてくれていたなんて知らなかったし気づいてなかった。


あずさや小林くん、そして町田先生が教えてくれなければ、わたしが見ていない深月の優しさを見過ごしてしまうところだった。


そうならなくて本当に良かった、と。


心の底から思える。


そう思えているということは、少しはあの頃と違うということなのだろうか……?



───キーンコーンカーンコーン…



「あら、もうこんな時間。職員会議が始まるわ。…じゃあ二人とも気をつけて帰るのよ」



そう言ってスリッパをパタパタ鳴らしながら職員室の方へ走って行った町田先生。



「もー、みんなして何なんだよ。俺の優しさを明里に知ってもらった方がとか」


「…知られたくなかったの?」


「いや、そういうわけじゃなくてさー。明里に気づいてもらいたくて優しくしてるわけじゃないし、これが俺の普通というか。…いや、だから、その……」



えーっと……?


つまり深月が言いたいことは──…



「男はかっこつけたがる…って、こと?」


「…ま、簡単に言えばそういうこと」



「ダセーだろ?」そう言って頭をガシガシとすると、顔を見せないように、わたしの少し前を歩いてく深月。



「ねぇ、深月」


「ん?」



いつもなら立ち止まって振り返ってくれるのに、今は振り返ってくれない。


きっと、顔を見られたくないから……


そっちがその気なら! そう思って廊下を走って深月の前に立ち止まり通せんぼうをする。



「明里、走ったら危ないって……」


「ダセーくない! 全然かっこ悪くない!」



だって全部わたしのことを思ってしてくれてるってことでしょ?


優しく接してくれるんでしょ?



だったら───



「かっこいいじゃん! わたしに気づかれないように影で優しくしてくれるのも、わたしが倒れた時にお姫様抱っこして運んでくれたことも。全部かっこいいじゃん!」



昇降口近くの廊下で、人が少ないからといってこんなことを叫ぶわたしはどうかしているのかもしれない。


けど、どうしても伝えたかった。



「恥ずかしいことなんてないよ。…ううん、むしろ嬉しいでいっぱい、だよ? だって深月がわたしのために優しく接してくれるんだよ?」


「あ、明里…」


「かっこつけてもいいじゃん。好きな人の前なら誰だってそうするよ? きっとわたしだって…」



数人の生徒が「何だ? 痴話喧嘩?」みたいなことを呟きながらわたしたちの方を見ているけど、そんなの関係なかった。



「……わたし、どんな深月でも好きだから」



あの頃、伝えてあげることができなかった、たくさんの想いを何度でも深月に伝える。


過去に戻ってきている今だからできること。


そして、これから先も深月と一緒に歩んでいくために、まずは言葉で示さないと。


そう、思った。



「…やっぱ、明里には敵わないなぁ」



はははっ、と笑う深月。



「人前じゃこんなこと言わないはずの明里が、こんなこと言ったらますます明里のこと、好きになっちゃうじゃん」


「え、え?」


「好きな人にそんなこと言われて嬉しくない奴はいないよな。明里の言葉、すっげー嬉しい」


「う、うん…」



我に返ってみると、なんだか一気に恥ずかしさが蘇ってきて今すぐにでもこの場を立ち去りたかった。



「明里の言葉が俺にとってパワーの源」



──でも、深月がこんなに喜んでくれているみたいだから、これで良かったのかも。


ちゃんと伝わってるんだ。



「廊下でこんなこと叫ぶ俺たちって周りから見たらかなりやばい奴だよな!」そう言って、またはははっ、と笑った。



昇降口でローファーに履き替えて、外に出るとお昼から降り続く雪はまだ継続しているみたいで、朝より少し分厚い白い絨毯みたいに校庭は真っ白でふかふかしてた。



「明里。そこ段差ある」


「え? ぅわっ…!」



雪ばかりに目をとられていると段差があることをすっかり忘れていて転びそうになったけど、深月がそれを支えた。



「ったく。明里ほんとにドジっ子だよな」



軽々とわたしを支える深月の腕。


スラっとして細いのに、腰に回る腕はたくましくて、妙にドキドキしてしまう。


そう意識するのは自分だけ……



「大丈夫か?」


「あ、う、うん。ごめん!」



きっと、わたしの顔は真っ赤だ。


けど、外が寒いおかげで誤魔化せそう。



「今日の明里はいつも以上に気をつけないと、電柱にでも頭ぶつけそうだよな」


「ちょ、それ失礼…!」


「一度倒れてんだから、心配なの! ってことで、ほら!」



そう言って、わたしに手を差し伸べる。



「危ないから手、繋いどこ」


「え!? だ、大丈夫だよ!」


「俺が心配なんだって」


「で、でも…」



「心配ってのも本音だけど…」そう言って、何やらモゴモゴと口ごもる深月。


バチっ、と目が合うと、鼻先を軽く掻く。



「…まぁ、要するにあれだよ。ただかっこつけてるだけで。…俺が手を繋いでいたいの!」



───ドキっ



「ダメか?」



まるで仔犬みたいに目をうるうるとさせる深月は普段の様子とはまるで別人で。


だけど、嫌いじゃない。



「……いい、けど…」


素直になれないわたしは、目を逸らして赤く染まった顔をマフラーに埋めて隠す。



わたしの返事を聞いた後、はははっと笑った深月は、わたしの手を繋いだ。


その手は温かくて優しくて、自然と頬が緩んでしまいそうになる。


照れたわたしは家に帰り着くまでドキドキが止まらなくて、やたらと身体が暑かった。



* * *



「あれ。明里のお母さんは?」


「今日はおばあちゃんの病院行ってる」


「そっか」


「会いたかった?」


「え!? や、違…くもないけど…さすがにまだ会うのは緊張するかも」



玄関前に鞄を置いて雪を触る深月。



「温かいもの飲む?」


「ううん。今日は雪だるま作るだけだし」


「でも寒くない?」


「平気! つぅか、そうやって無意識に煽るようなことはやめなさい」


「……え?」



雪を触りながら「冷たっ」と言って笑った後、「…なんでもない」そう言った。



何だったんだろう……?



「それより明里どうする? そこに座って見とくか?」


「わ、わたしも雪だるま作るよ!」


「結構冷たいぞ?」


「大丈夫」



おでこの痛みは、この寒さのおかげですっかり忘れ去っていた。



「ほんとだ! 冷たいね」


「明日になったら霜焼けになりそう」


「それは嫌だねえ」



くだらないことを話しながら雪を丸めて、それをコロコロと転がして固めて転がして…を数回繰り返し雪だるまの土台を作っていく。



その間も雪は降り続け、頭の上に少し積もる。


深月の頭を見ると結構雪が乗っかっていて「プッ」と笑うと、「何笑ってんだよー!」と、ふわふわの雪を頭に被せられた。



「ちょ…、つ、冷たい!」


「真っ白じゃん」


「深月だって! …真白深月だけに真っ白になってるけど」


「コバみたいなこと言うなよ」


「「…。」」



お互い顔を見合わせて黙ること数秒。


どっちが先に笑ったのか覚えていないけど、気がつけば二人して笑ってた。



「高校生になって雪だるま作りながら馬鹿みたいな言い合いして…って周りから見たら小学生レベルだよな」


「うん。小学生。 でも楽しい!」



例え、くだらないことでも深月とならどんなことでも楽しくいられる。


このかけがえのない時間が大好き。



「…できた」



雪だるま作りより、くだらない言い合いの方がはるかに多くて作るのに時間がかかった。



「俺もできたー」


「なんか小さいね」


「雪が少ないからな」


「…でも、小さくても可愛いね」



二つの雪だるま。


同じくらいの大きさで、目や鼻、口もつけたおかげかわりと可愛らしい雪だるま。


「ふふっ」


玄関横に小さな雪だるまが二つ並んでいるのを見ると不思議と笑みがもれてくる。



「案外上手く作れたな」


「雪だるまに上手い下手もあるの?」


「あるある。コバとかは絶対変なやつ作りそうだもん」


「あー、たしかに」



鞄からスマホを取り出す深月。


雪だるまの前にしゃがんで、カシャっと音が鳴ると「ほら見て!」と言って、わたしに画面を見せてくる。



「か、可愛い…」


「な? くだらないことでも明里とすれば楽しい思い出になるんだよなぁ」



男子高校生って、もっと暑苦しかったしうるさかったりしそうなのに深月は全然そんなことなくて、むしろ一緒にいて心地良い。


だから、自然とホっとしてしまう。



カシャっ


と、音が鳴りスマホの中には深月と作った雪だるまの写真が一枚増えた。



「この雪だるまってさ、俺たちみたいだな」



不意にそんなことを呟いた深月。



「仲良く並んでるじゃん?」


「まぁ、そうだけど…」



並べたのはわたしたちだよ。と言おうと思ったけど、飲み込んだ。



「きっと作り手の想いも込められてるからなんだろうなぁ」


「…なにか込めたの?」



そう言うと「うん!」と満面の笑みを浮かべる深月。



「俺たちみたいに二人でずっと一緒にいるんだぞって想いを込めたんだよ」



その言葉を聞いた後、雪だるまに目を向けると、なんだか嬉しそうに喜んでいるような気がしたのは気のせいではないのかもしれない。



「…ふふっ。深月らしいね」


「あ! 馬鹿にしてるだろ?」


「してないしてない。……でも、雪だるまって溶けちゃったら願いの意味なくない?」


「あー…それは、願いが叶うってことで溶けるんだよ。だから溶けていい!」


「深月ってばおかしい!」


「おい、笑うなよな? 俺こう見えて結構本気で言ってるんだぞ?」



雪だるまにそんな願いを込めている男子高校生なんて、きっと世界を探しても深月くらいなんじゃないだろうか。

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