第3話 天ノ下桃花
「
やっと、興味持ってくれたよ、この人。
ていうか、どう見ても頑丈そうな床と天井を、どう見ても突き破っているコイツは――
身体強化の特異体質ってところか……どう考えても。
とにかく、引っこ抜いてみる。
私の力は、女子小学生と腕相撲でいい勝負をするレベルなので、当然2人で。
「引っこ抜いたはいいけど……誰ですかこの人」
「他の惑星からの来訪者でしょうか――それとも、地下帝国からの視察員か……」
「いや、うちの制服着てますから」
自分で考察と言っておいて、観察力皆無かよ
「スパイとして潜入の線もあるでしょう」
苺田先生は、鋭い目つきで言う。
スパイつっても、これだけ派手な行動されちゃな……
全く、潜めてないし……
てか――ん、ありゃ……
あの突き刺さり女子は?……
と考える間も無く、頭上で大きな音がした。
まさか――
そのまさかで――またソイツが天井に突き刺さっていた。
「うん、あれは宇宙人だ、間違いない」
アレと、同じ種族であってたまるか。
流石先生、素晴らしい考察だった。
「ふんぬぅぅぅぅぅぅ!!」
その生命体は、ジタバタと手足を動かしていた。
へぇ、あれが宇宙人の言語か、興味深い。
そしてまた、天井から降ってきた。
今度は、しっかり足から着地して――
こちらを見ている、赤い髪の、その宇宙人は。
何だ、仲間にして欲しいのか――嫌だぞ
「あのぅ」
話しかけてきた。
「えっ、あの……他の惑星の言葉は分からないんで……すいません」
「なんでいきなり、宇宙人扱い⁉︎」
「I can't speak another planet's language」
「いや、日本語通じるよ⁉︎てか仮に、私が宇宙人だとしたらフランス語は通じないよ」
まさか、同じ種族だったとは……
ちなみに、今のは英語だ。
「なんと、貴方でしたか」
先生が話に割り込む。
「
知ってんのかよアンタ
「あ!久しぶりだね、イチゴおいちいせんせー」
誰だそれ、そんな幼稚園児の感想みたいな名前の先生聞いたことねえよ
「誰ですか、そのマッドサイエンティストの焼きプリン食べたときみたいな名前の先生は、私は
いよいよ、本当に何のことかわからねえ
「相変わらずですね貴方は、《筋力強化体質》である一方で、勉学については学年の最底辺。青春好春2年生と対をなす存在ですね。悪くないストーリーになりそうです。」
こんな奴との、ストーリーとか想像したくないな。
「てか何でアンタは、天井に突き刺さってたわけ?」
純粋な疑問を問い掛けてみる。
「んーー大したことじゃないんだけどね、ただ、バスケのダンクシュートってどんな感じなんだろうと思って、思いっきりジャンプしただけなんだ」
それで、天井まで飛んだのか……大したもんだ……その筋力も、その頭も。
「始業式の日を間違えた上に、体育館を破壊するとは、大したものです」
なんと、始業式の日を間違えるとは、度し難い奴だ。
「体育館の無断使用は、あれ程注意しておいたでしょう」
無許可で使っておいて破壊行為……たまったもんじゃないな
「体育館に鍵はかかってなかったんですか?」
先生に問う。
「彼女にとって、施錠の有無に違いはありませんよ」
なるほど、笑顔で、普通にドアを開くように、鍵のかかったドアをこじ開けるのが、容易に想像できる。
「彼女が、怪我や気絶をしていたときのために貴方を呼んだのですが、幸いと言うか、必然というか、杞憂に終わりましたので、後処理は私が請け負いますので貴方たちは帰って構いませんよ」
はあ、ようやく帰れるのか、もう、二度と関わらないようにしよう――こんな事にも、コイツにも。
*********
「アンタと帰るなんて言ってないんだけど」
天ノ下桃花という名の異常者は――帰路についてきやがった。
「いいじゃん、小夏ー。同じ寮だったわけだしさー」
「誰その小夏とかいう高知県の特産品」
まさか、同じ寮に教えられた名前を5分で忘れる奴がいたとは……
壊されないうちに、違う寮に移ろうかな。
「始業式の日を、間違えた同士仲良くしよーよー」
くっ、一緒にすんなよ……こちとら登校時間は、午後4時だったんだからな。
いや、待てよ――これはまさか、友達獲得チャンスとかいう、超レアイベントなんじゃないか。
生まれてから今まで、青春の一画目すら書かれることのなかった、この人生に千載一遇の奇跡が起こったとうことか。
これは、無駄には出来まい。
友達って、あだ名で呼び合うんだよな……
[友達 どんな感じ]とググった経験が生きるときが来た――
「アンタってなんか、あだ名とかあったりする?」
「えっ、あだ名⁉︎んーーモモって呼ばれることが多いかな」
ほう、名前の省略形ときたか、親以外でもそうよんだりするんだな、知らなかった。
「えっとさ、アンタのこと――モモって呼んでもいい?」
結構、恥ずいなこういうの……
「勿論だよ」
天ノ下――改め、モモはそう答えてくれた。
「じゃあ、アンタも私のことモモって呼んでいいよ」
「ややこしいよ……」
モモは、微笑んで言った。
「えっとねーーーなら、私は夏って呼ぶことにするよ」
だから、誰だよ……季節がズレてるわ。
青春の一画目が、書かれた音がした。
異端児たちに劇的で平凡な青春を @karukaru0531
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