第2話 体育館と異端児
「というわけで、新年度の説明は以上だ。選択教科を、記入して明後日までに提出してくれ」
そう言って、担任の古桜先生は、私にプリントを渡した。
まあ、担任といっても、この
そして、数学や英語といった主要教科に加え、芸術などの、それぞれが選んだ副教科から、一人一人異なる時間割が作成される。
副教科を選ばなかったら、その分合計時数が、減るのかと聞かれたら……勿論そんなことはない。
昨年度の時間割が数学や英語、国語などに埋め尽くされたときは、早めの帰宅部と遅めの登校部への入部を即決したな。
ほんっと、早く教えて欲しかった……
「あと、ついでにだが――」
「なんですか、下校時刻は過ぎてますが」
「いや、お前さっき来たばっかだろ。下校時刻に登校してきただろ。まず、生徒たちは今日、選択教科の思案期間として休みなんだよ」
説明的なツッコミだ……
「とにかくだ、今から隣の第三体育館に向かってくれ」
「…………」
「露骨に嫌そうな顔をするな。」
「嫌そうなじゃなくて、嫌ですよ」
「残念ながらというか、喜ばしいことにというか、これは強制任務だ。お前がこの学園に残れるように請願してやった恩を忘れるなよ」
先生は、皮肉っぽく笑った。
「《完全記憶体質》には、忘れようがないがな」
******
この万色学園では、想定外のことが起こり得ることぐらい想定内だったけど――
いくらなんでもこれはな……
第三体育館――15mはあるだろうその天井に――
人が頭から突き刺さっていた
「待ってましたよ。
頭上で起きている超常現象など、まるでなかったかのように、いや、まるで日常茶飯事であるかのように――
私に語りかけてきたこの爽やか白衣メガネの美形は、現代文の
この人の授業は一度だけ受けたことがあるが――忘れもしないな、忘れようとしても忘れないのだけれど――何せ、授業中に、教科書に漫画を挟んで、読んでいたからな。漫画以外に、まるで興味ないらしい。
それでいて完璧な授業をやってのけていた。教科書の文章を全部暗記してんのかよ……そんなこと普通はできないよな。
私は、できるけど……
この学園は、先生までも異端なんだな、と思った。
「しかし不思議ですね」
苺田先生は、天井を見上げながら言った。
先生もやっぱ気になるか――
「赤髪海賊団の、マリンフォードへの到着が速すぎるのですよね」
気にしてなかった……
マジで漫画以外に興味無いんだな。
「いや、先生――あの天井に突き刺さっている生物は、何ですか?」
「青春好春2年生――自分で立てた考察が、当たっていたときこそ読者冥利に尽きるというものですよ。」
「だから、あれは何かって--
「肝要なのは、自分で考察を立てることです――伏線はそこら中に散らばっているのですから」
自分で考えろってか。
じゃ、あんたは何の為に居るんだよ……状況説明役的なキャラポジじゃないのか……
まあ、ほっとくわけにもいかないし――ボールでも当ててみるか。
そう思って、倉庫から野球ボールを取り出す。
「よいしょっと」
天井に向かって投げたボールは、ターゲットに直撃!――――するには100年早かったらしく――3m程上昇して、重力に従って落下した。
「全然駄目じゃないですか」
「まあ、頭脳明晰、しかし、運動音痴みたいなギャップがあるキャラ設定の方が、世間受けするじゃないんですか?先生」
「
何だその草が生えてそうなボールは……
ていうか、全然話が噛み合わないな……
その時、天井に突き刺さっていた、例のブツが、落下し、大きな音を立てた。
そして、床に――同じように突き刺さった。
「青春好春2年生……」
いくら先生といえども、これには反応を……
「流石に、頭脳と運動の両極端はありきたり過ぎるかと……いっそどちらとも極めてしまいましょう」
もう……帰ろうかな……
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