4 干渉
自分は夢を見ていると自覚して見る夢を「明晰夢」だと言うらしい。
夢はモノクロで、音に欠けることに気付いた時期から、明晰夢の割合が増えた。
夢日記をつける前も明晰夢を見ることはあったが、「あっ、これは夢なんだな」という意識はぼんやりしており、意識がふわふわとまとまらないのが常だった。
夢日記をつけてから見る明晰夢は、それとは一線を画した。
「これは夢だ」と判断する意識は限りなく覚醒状態に近く、夢日記をつけるための観察も、目的として夢の中にいながら自覚できていた。
まるで電気信号しか通さない電脳世界へ、生身のまま降り立ったような奇妙な感覚だった。
ぼんやりと見るだけではなく、客観的に観察しているうちに、夢を動かすコツをつかんだ。
明確な意識をもって誘導すれば、夢はほぼ確実にその通りになる。
さらに、中途半端に終わった夢の続きも見られるようになった。
寝入りばなに、夢の中断された直前の意識環境に似た状態で夢を思い浮かべれば、その続きを手繰り寄せられる。
強く念じすぎるとかえって目が覚めて失敗するし、完全に寝落ちしてしまっては再現できずやはり失敗してしまうが、一度でも繋げられれば感覚を覚えた。
自分の夢なのに見たい展開にならない、目覚まし時計で中断されたなど、地味にもやっとすることはなくなり、私は夢をコントロールできるというささやかな万能感にのめりこんでいった。
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