幕間 その二

播衛門の図鑑 NEO (クリーチャー紹介 その一)



☆読者の皆、元気にやっとるか。

〈白髪の食屍鬼グール〉こと比星ひぼし 播衛門ばんえもんじゃ。

 儂、第六章では大活躍じゃったろ?

 まだまだ若いもんには負けんぞい。


 このコーナーでは儂の同胞はらから達を紹介するで、動植物園にでも来たような感覚で観て行ってくれ。

 まあ、命の保証は出来かねるんじゃがの……。


※本項は作中設定の紹介です。

 若干のネタバレを含む場合がありますのでご了承下さい。


 本項で説明しているのは主に本作独自の設定です。

 一般に膾炙かいしゃしているクトゥルー(クトゥルフ)神話の設定とは異なる場合がありますのでご了承下さい。


 本項の情報は、作中の一九一九年七月時点のものです。



◆ 幻魔げんま ◆



 幻魔とは、幻夢界げんむかいの持ち主の邪念と、魔空界まくうかいに封印されている邪神やその眷属達の邪霊とが同調シンクロしたモノ。


 幻魔は幻夢界の持ち主のはくを捕食し、邪霊の定着をうながそうとする。


☆幻夢界については儂の孫が解説してくれとるで、そっちを参照してくれ。

 場所は、【https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054934977293/episodes/16816927861191246297】じゃ。


 幻魔についてはここで言えない秘密もまだ有るからの、次章以降を楽しみに待っておれ。



◇ 〈食屍鬼グール〉 ◇


 本邦では〈食屍鬼しょくしき〉と呼称される。

 幻夢界(ドリーム界)及び物質界(マテリアル界)に生息する生物とされるが、なぜ二つの次元にまたがって生息できるのか今もって不明。


 一部の魔導書には、〈食屍鬼グール〉の製造方法が記されているとも。

食屍鬼グール〉となり果てた人物も太古から確認されており、寿命に逆らった存在とも呼ばれる。


☆何を隠そう、人間ヒトから〈食屍鬼グール〉となり果てたのはこの儂じゃ。

屍食教典儀ししょくきょうてんぎ〉と呼ばれる魔導書には、〈食屍鬼グール〉になる方法がつまびらかに記されておる。


 皆も人間の世界に嫌気が差したのなら、〈食屍鬼グール〉になってみるのも乙なもんじゃよ。

 この世界には人間が多すぎるでな。

 食いもんには困らんわい……。



◇ 〈ヴーアミ族〉 ◇


 この種族も〈食屍鬼グール〉同様、幻夢界(ドリーム界)及び物質界(マテリアル界)に生息するとされる。

 ハイパーボリア大陸(北極)の洞窟に生息しているとも。

 現在でも、北極圏やヨーロッパ北部でまれに目撃される。


 犬に近い頭部など、〈食屍鬼グール〉と生物的特徴が似ている箇所が見られるが、近縁種なのかどうかは不明。


☆人間の子供程度の知能をもっており、〈食屍鬼グール〉同様なつっこい奴らじゃ。


 なに?

『類人猿が特殊な進化を遂げた姿なのではないか?』、じゃと?

 お主らまさか、『人間は猿から進化した』などと本気で思うておるのではあるまいな。

 だとしたら何故、猿と人間の中間個体が現存しないのじゃ?

 又、現存する動物を遺伝子検査に掛けた結果、『現存する多くの動物はおよそ二十万年前すでに出揃っており、大幅な進化などしていない』と報告されとるぞ。

 お主ら、邪神崇拝結社にまんまと騙されておるのではないか?



◇ 〈レンの蜘蛛〉 ◇


 幻夢界に生息しているとされる巨大蜘蛛。


 姿形は生息している環境で千差万別のようだ。


☆儂が可愛いがっとる愛玩蜘蛛。

 愛称は隠者ハーミットちゃんと云うぞい。


 隠者ハーミットちゃんは、光の届かない洞窟に住んどる無眼の種類の蜘蛛じゃ。

 物質界には、〖フジマシラグモ〗と云う無眼の蜘蛛がおるようだの。



◇ 〈水棲食屍鬼アクアティックグール〉 ◇


食屍鬼グール〉である筈が、ひれえらを備え水中に適応している個体。


 背中、肘、足裏に備わった汲水口きゅうすいこうと排水口を兼ねた器官から水を吹き出し、水中で大きな推力を得る事が可能。

 肘からは目潰し用の墨も撃ち出せる。


 第六章に登場した個体は叉銛またもりで武装している。


 各魔術結社が保有しているいずれの文献にも記されていない謎の存在。


☆〈水棲食屍鬼アクアティックグール〉こと法王ハイエロファント

 本名はリチャードじゃ。

 儂の朋輩ほうばいだったんじゃが、〈異魚〉と〈ハイドラ頼子〉のコンビにあえなくられてしもうたわい。

 形見の三つ叉銛トライデントも泣いとるわ。


 実は、〈屍食教典儀〉には幻魔の改造方法も記してあっての。

 リチャードには実験台……もとい、治験に協力してもろうたんじゃ。

 リチャードには悪いが、改造は……えのう♥。



◇ 〈鎧食屍鬼アーマードグール〉 ◇


食屍鬼グール〉の中でも非常に大型の個体で、その頭高は一丈いちじょう(三・〇三〇三メートル)にもなる。


 第六章に登場した個体は強靭な肉体を強固な鎧で包み、バルディッシュと呼ばれる武器で武装していた。

 強力な衝撃を受けると鎧の外側に限度指定障壁リミテイションバリアを展開して身を守るが、それは〈鎧食屍鬼アーマードグール〉本体が生成したものではなく別の術者によるもの。


☆〈鎧食屍鬼アーマードグール〉こと戦車チャリオットのアプトンじゃ。

 リチャードと同じく食事仲間じゃったんじゃが、儂の断っての願いで改造させてもろうたのよ。


 限度指定障壁リミテイションバリアの着想は上手く行ったと思うたんじゃがの。

 宮森めに攻略されてしもうた。

 まあ、首が落とされただけで済んで良かったわい。

 再生には手間が掛かるかも知れんが……腕が鳴るのう♥



◇ 〈夜鬼ナイトゴーント〉 ◇


 本邦では〈夜鬼やき〉と呼称される。

 太古には幻夢界(ドリーム界)だけでなく物質界(マテリアル界)にも生息していたとされるが、現在の魔術結社が結成されてからの目撃情報はない。


 目、耳、鼻、口と云った感覚器官を有していないが、それらを感じさせない対応をする。

食屍鬼グール〉の言語も理解できるようだ。


 何故か対象をくすぐる事を好み、高所から付き落としたり置き去りにしたりする。

 大気中を高速で飛行するが、詳しい仕組みは判明していない。


 主な武器は、強靭な肉体と有棘尾ゆうしびとなる。

 有棘尾は柔軟性があり、ある程度の変形が可能。

 薄く変形させると、その分切れ味が鋭くなる。


 作中では限度指定障壁リミテイションバリアを纏っていたが、本来の能力ではない。


☆幻夢界でスカウトした〈夜鬼ナイトゴーント〉の一個体じゃ。

 愛称は吊られた男ハングドマンで、本名は今もって不明。

 だって喋らんもん、アイツ。


 ほんで、改造もしとらんのにボロクソに強いんじゃよ。

 貴重な実験体……もとい、同胞じゃから、申しわけ程度に限度指定障壁リミテイションバリアを張らせてもろうたが、要らんかったかな。

 一度改造を打診してみたんじゃが、やんわりと断られたわい。

 そん時は流石の儂も落ち込んだ。

 じゃが儂は諦めん!

夜鬼ナイトゴーント〉こそ、になるやも知れんのじゃから……。





☆読者の皆、幻魔動植物園はどうじゃったかな?

 気に入った種族でも見付かったら幸いじゃ。

 え、もっと見たいじゃと?

 なに、これから直ぐにでも新顔を見せてやるわい。

 それでも待ち切れんかったなら、お主ら自身が邪念を溜め込み、魔空界に封印されておる邪神や眷属達と同調シンクロすればいいんじゃよ。

 さすれば幻夢界……お主らの夢で、幻魔に出遭う事が叶う筈じゃ。

 まあ、魄を喰われた分の邪霊が定着してしまうんじゃがの。

 自業自得じゃ。


 と云う訳で、【第七章 大昇〈食屍鬼(グール)〉後篇】を楽しみにしてくれろ。

 では、近いうちにまた逢おうぞ……。



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