外吮山頂上決戦 中盤 その八
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◇
天芭 大尉と合流した武悪は、早速〈ヘルプラントロル型〉を瑠璃家宮 達に突進させる。
しかし
散らばった瑠璃家宮 達は、何とか〈ヘルプラントロル型〉に有効打を与えられないかと画策する。
宮森は、
瑠璃家宮 陣営はその前例を何とかして使いたい筈だが、俊敏な動きをする〈ヘルプラントロル型〉を思うように捉えられない。
瑠璃家宮 陣営の中で〈ヘルプラントロル型〉に追い付ける身体能力を発揮できるのは、〈
しかし〈
ふたりが居ない今その役割をこなせるのは蔵主となる訳だが、彼と〈
連携が取れない自陣を憂い、
『宮森と宗像よ、いま動けるのは其方達しかおらん。
益男の治療が完了するまで粘ってくれ。
それが完了したら、〈アルスカリ型〉を破った戦法が使える』
『この宮森、承知しました。
殿下、具申したき事が御座います』
『申せ』
『あの〈ミ゠ゴ幻魔〉……〈トロル〉と〈地獄の植物〉の融合体らしいので、自分は〈ヘルプラントロル型〉と呼称しております。
その〈ヘルプラントロル型〉ですが、完成したにも拘らず武悪がこれといった動きを見せません。
何か企んでいるやも知れませんので、警戒するに越した事はないかと』
『覚えておこう……』
瑠璃家宮への上申を終えた宮森は、ウィンチェスターM1912ソードオフ
「自分が囮になりますが、敵との距離が近い場合援護は無理だと思います。
ですので、宗像さんは周囲を警戒し乍ら皆さんの銃器に弾薬を装填して下さい。
若し敵からの攻撃が来そうな時は直ぐ退避するように。
くれぐれも身の安全を最優先して下さいね」
「装填作業はまかしとき。
堪忍な宮森はん。
左腕の骨、折れとるみたいやのに……」
宮森が攻めあぐねていると、〈ヘルプラントロル型〉が背中の蔓触手を伸長させ周囲を攻撃し始めた。
その攻撃により安定した布陣を組めず、宮森だけでなく瑠璃家宮 達も手を焼く。
⦅蔓触手を伸ばしての攻撃。
障壁はどうなっている。
……蔓触手自体に障壁は張られていない。
伸長する蔓触手を一本一本障壁で囲っていたら、それこそ術式操作が大変だからな。
障壁は頭部と胴体部のみに張られている。
となると、四肢と背中には攻撃が通る筈だけど……。
武悪が何か誘っているのかも知れない。
確か宗像さんはアレを持って来ていたな。
相談してみるとしよう……⦆
〈ヘルプラントロル型〉の
『宗像さん、御守り持って来てますよね。
異常は無いですか?
天芭 大尉達に怪しまれないよう、自然な流れで確認して下さい』
『御守り?
ああアレかいな。
異常てなんやねん。
まあ見たるわ。
ちょうど装弾しとるとこやし、怪しまれへんやろ……』
宗像は弾薬を取り出すふりをして、
『今んとこ、なんも反応してへんで。
なんや宮森はん、なんか有るんかいな?』
『ええ、天芭 大尉達は何か企んでいる可能性が高いです。
装弾し終えた銃を渡す時にでも、ソレを多野 教授か殿下に渡して下さい。
なるべく自然にお願いしますね』
『はは~ん、解ったで。
もし天芭 達が仕掛けて来よったら、コレに生体活性の術式を掛けたらええねんな?』
『理解して貰えて助かります。
では宗像さん、頼みましたよ』
弾薬を装填し終えたコルトM1911を宗像から受け取った宮森は、〈ヘルプラントロル型〉を絶対位置として設定し
あくまでも位置取りのみで、有効化はまだだ。
〈ヘルプラントロル型〉が自身に突進して来たのを確認すると、宮森はコルトM1911を一回発砲。
それと同時に、〈ヘルプラントロル型〉背後に設置していた
弾丸は〈ヘルプラントロル型〉横を素通り。
それを好機と見た武悪は〈ヘルプラントロル型〉に命令を送り、右腕を振り上げさせる。
だが突如として体勢を崩す〈ヘルプラントロル型〉。
なんと、振り上げた筈の右腕が千切れ飛ぶ。
そう、先ほど宮森が放った弾丸が〈ヘルプラントロル型〉背後の
向きを変え標的を撃ち抜いたのである。
九死に一生を得た宮森はその場から一旦跳び
発砲する度に腕の角度を微妙にずらし、銃弾はどれもが〈ヘルプラントロル型〉のそばを通り過ぎる。
そして、〈ヘルプラントロル型〉背後方向の
銃弾三発を跳ね返す。
銃弾は〈ヘルプラントロル型〉の左腕、右脚、左脚それぞれに命中。
先に命中していた右腕と共に、〈ヘルプラントロル型〉の四肢を融解させた。
〈ヘルプラントロル型〉が四肢を失う様を観ていた武悪は、敵ながら宮森の手腕に感心している。
⦅跳弾かよ。
然も俺に
味な
でもまあ、俺の雑仏の
ただ背中から飛び出す蔓触手は未だ健在。
滅茶苦茶に動かして周囲を無造作に攻撃し始めた。
その〈ヘルプラントロル型〉に対し、宗像からウィンチェスターM1912標準
効果的な爆裂で、蔓触手を一本残らず破壊した。
ひと先ず安全を手に入れた宗像は、銃器を手渡す振りをし乍ら例の物を瑠璃家宮に届ける。
〈ヘルプラントロル型〉の負傷と別戦場での決着を共に眺めていた武悪は、天芭と
『ちっ。
〈
天芭 隊長、そろそろ頃合いかと』
『分かりました。
では、次の一手で詰みですね。
武悪さん、〈
瑠璃家宮 陣営対外法衆の闘いは、更なる
◆
外吮山頂上決戦 中盤 その八 了
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