外吮山頂上決戦 中盤 その七
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◆
武悪 最後の作品が御披露目を迎えた。
肝心の作品は、毛むくじゃらで四足歩行する獣の如き容貌である。
その背には深い裂け目が覗いており、そこから植物状の蔓が幾つも飛び出していた。
獣の頭部と思われる箇所には、短い突起を生やした細長い柔組織で構成される渦巻き状の円盤が備わっている。
紛れもなく〈ミ゠ゴ幻魔〉の特徴。
宮森は直ぐに獣型の分析に掛かる。
⦅四つん這いになってはいるが、あの毛むくじゃらの特徴は〈トロル〉だな。
背中から生えている蔓状器官は、十中八九〈地獄の植物〉のものだろう。
詰まり、〈トロル〉と〈地獄の植物〉、そして〈ミ゠ゴ〉の融合体。
〈地獄の植物〉は英語でヘルプラントだから……。
〈
しかし実に厄介そうだ。
もっと詳しく分析を……くそっ!⦆
彼は引き付けて躱そうとしたが、それを読んでいた武悪。
計算通りと云わんばかりに〈ヘルプラントロル型〉の向きを変え、躱そうとした宮森へとぶち当てた。
〈ヘルプラントロル型〉は容赦なく追撃を掛けたが、〈
何とか〈ヘルプラントロル型〉の追撃を免れた宮森は、他の戦場にも意識を向けた。
⦅益男が中将にやられてしまったが、復活した頼子が中将に向かっている。
それにしても頼子のあの風貌。
瑠璃家宮は短時間であそこまでの改造を施せるのか。
そして天芭 大尉は……。
まずい、こちらへと向かって来ている!⦆
このままでは瑠璃家宮 達を崩せないと見切った天芭は、武悪との合流を選択したようだ。
天芭 本体も勿論向かって来ているが、それとは別に如意宝珠を一つ引き連れている。
〈
〈ヘルプラントロル型〉を抑えている〈
「あ、熱い……。
天芭のしわざね」
天芭と同じ術式を展開可能な宝珠は、焦光法で〈
〈ヘルプラントロル型〉を抑えるどころではなくなった〈
攻撃音波で宝珠を撃ち落とそうとするも上手く行かない。
⦅ダメ……。
完全に動きが読まれてる。
その辺ぜんぶに音波を届かせようにも、こっちの攻撃範囲には近付いて来ないし。
いったいどうすれば……⦆
『綾、益男が負傷したのでそちらに行くのが少し遅れる。
余が合流する迄、いま少し持ちこたえてくれ。
終局は近い。
余と、余の子を信じるのだ……』
『分かったわお兄様。
アタシ、頑張ってみる!』
瑠璃家宮の
自身の腹を
⦅お願い赤ちゃん、ここで死にたくないなら頑張ってね!⦆
『……ドクン……』
〈
〈
只でさえ不利なこの状況で宮森を失う訳にはいかないからだ。
その宮森が連絡を寄越す。
『綾 様、天芭の操る宝珠を打ち破る方法を思い付きました。
自分が宝珠を障壁で囲みますので、合図をしたら攻撃音波を放って下さい。
その際の攻撃音波の波動は、自分が今から送る波動の見本に合わせて頂きます。
では、見本を送りますね……』
〈
後は宮森からの合図を待つのみ。
一方の宮森は、小型の正三角形
〈
正四面体に組み合わさった
『今です綾 様!』
宮森の合図を受け、〈
攻撃音波は
指定方向からの接触、衝撃だけに対してしか効力を発揮せず、指定方向外からの接触、衝撃は素通りさせる性質を持つのだ。
小型とは云え、四枚の正三角形
「やったー!
宮森さんってば冴えてる~♪」
喜ぶ〈
⦅この短時間で宝珠法を攻略するとは恐れ入る。
然も、障壁の複数生成は武悪の連壁法から着想を得たもので応用まで完璧。
井高上 大佐が欲しがるのも無理は無いな。
井高上 大佐も言っていたが、あの男には得体の知れない何かが有る……。
しかし、宮森と〈
より自然な形で、次の作戦へと移行できる……⦆
宝珠一つを破壊した宮森と〈
途中 天芭の邪魔が入ろうとするも、蔵主 社長と多野 教授の銃撃で事なきを得た。
宮森と〈
周囲に侍らせている水中に引き入れ治療を施している。
宝珠を全て撃墜した〈
対する武悪も、〈ヘルプラントロル型〉に宗像を追わせず天芭との合流を優先する。
漸く宮森 達と瑠璃家宮 達との合流が叶ったが、それは敵方も同じ。
天芭、武悪、そして〈ヘルプラントロル型〉。
合流したからには、三者が連携して襲って来る筈。
◇
外吮山頂上決戦 中盤 その七 了
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