外吮山頂上決戦 中盤 その二
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◇
他所の戦況が気になる宮森だったが、自身も襲われている最中で余裕が無い。
しかし、ここは何としてでも粘らなければならないのも確かだ。
宮森は果敢にも〈アルスカリ
〈アルスカリ
蹴りで攻撃された時などは、躱して
勿論〈アルスカリ
一方の武悪は、一見無駄な行動を取る宮森を警戒する。
宗像へも目を向けるが、彼に自陣を崩せる能力は無いと捨て置いた。
宗像は武悪からの監視が外れたのをいい事に弾薬を補充。
武悪の牽制に終始する。
他の戦場では、〈
〈アルスカリ
〈
『綾 様、自分が〈アルスカリ型〉に取り付きますので、合図をしたら自分に攻撃音波を放って下さい』
『ええ~⁈
そんな事してダイジョウブなの宮森さん……』
『信じて下さい綾 様。
そして、攻撃音波が自分に集中するよう御願いします』
『分かったよ宮森さん。
アタシ頑張る!』
『有り難う御座います。
では、宗像さんは引き続き武悪の牽制を』
『上手く行くか心配やが、何もやらんよりましやろ。
やったれ!』
〈
神力で身体能力が向上しているとは云え、〈アルスカリ
疲れが出て来たのか、どことなく宮森の動きが鈍い。
そして遂に、〈アルスカリ
その威力で宮森を覆っていた
⦅ぐぅっ!
左腕は折れてしまったか……。
だけど、ここで終わる訳には行かない!⦆
宮森は骨折の痛みをものともせず、巨人の左腕に触れた。
『綾 様、今です!』
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
〈
攻撃音波を宮森へと集束させ、他の対象には効果を及ぼさないよう調整する〈
『ッドンムゥ……』
くぐもった音が辺りに広がった後攻撃音波でバラバラになったのは、宮森ではなく〈アルスカリ
「何だと⁈
いったい何やってくれたんだい、頭の切れる宮森さんよお!」
驚いた武悪は宮森に錫杖を振り下ろした。
ふたりの距離が近い為、援護を
天芭が宮森の殺害を禁じているとは云え、食らえば戦闘不能は免れまい。
『綾 様、御願いします!』
宮森が回避不能になる瞬間を見据えて振り下ろされた錫杖に、彼が触れた。
『ッドンムゥ……』、『カシャッァァァン!』
〈アルスカリ
自分がやられているにも拘らず、感心した
「なあ宮森さんよ。
障壁が張ってある雑仏と錫杖を、どうやってバラバラにしたんだい?」
「貴方も御存じでしょうが、自分は井高上 大佐とやり合った事が有ります。
その時の経験が活きましたね」
「ほう……聞かせて貰えるかい!」
武悪は拳を振り回し宮森に迫った。
武悪の拳を捌きつつ回答する宮森。
「井高上 大佐は、振動波を使い対象を一瞬で破壊する術式を使っていました。
確か、
それと似たような事を……した迄!」
「似たような事だと!」
続けて武悪の拳が来たが、それを受け止めた宮森は〈
感付いた武悪が拳を退くと、宮森の掌からは膨大な振動波が放出された。
「貴方が〈アルスカリ型〉に張った障壁を破る為、障壁の霊波動を自分が読み取ったのです。
そして、張ってある障壁とは逆位相の障壁を掌に構築しました。
その逆位相の障壁で〈アルスカリ型〉に張られていた障壁を中和し、綾 様に放って頂いた攻撃音波を流し込んだのです」
「するってえと、アンタは障壁の中和と攻撃音波の伝達を同時にやってたって訳かい?」
「そう、なりますね。
勿論、普段はそんな大それた事なんて出来ませんよ。
殿下の神力を共有している今だからこそ可能な芸当です」
宮森の仕掛けを聞いた武悪は、その面の下の素顔に
「んじゃ、俺もそろそろ本気だすぜ……」
そう豪語した武悪の足元には、幻魔の死骸と〈ミ゠ゴ幻魔〉の残骸が広がっている。
武悪は三度目の普賢菩薩・延命法を執り行なった。
幻魔と〈ミ゠ゴ幻魔〉の墓場が盛り上がり、植物の
武悪がその場から
◆
外吮山頂上決戦 中盤 その二 了
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