第八節 外吮山頂上決戦 中盤
外吮山頂上決戦 中盤 その一
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◆
頼子が斃れた――。
その
だが敵を目前にしている今、思考停止は死に直結する。
『よ、頼子はんがやられてもうた。
頼子はんをやった中将っちゅう奴がこっち来たら、ワイら終わりやで……』
『宗像さん弱気にならないで下さい。
今の所は綾 様が押し止どめてくれています。
機会を待ちましょう』
そう宗像に思念を送ると、目前の武悪に意識を集中する宮森。
武悪は自分からは仕掛けず、先程から
⦅積極的に攻撃して来ない所を見ると、武悪は何かを待っているな。
それは十中八九
ならば、こちらから仕掛ける!⦆
宮森は武悪の動きに目を光らせつつ、宗像の居る〈ミ゠ゴ幻魔〉密集地帯へと急いだ。
『宗像さん、自分は調べたい事が有りますので武悪の相手をお願いします』
『何や、殿下の命令に背けっちゅうんか。
まあ、向こうも忙しいやろうし許して貰えるやろ。
いっちょやったるわい!』
宗像に〈ミ゠ゴ幻魔〉密集地帯への射撃を止めて貰った宮森。
案の定 武悪が邪魔しに来るが、宗像がコルトM1911で牽制して引き離した。
現場に到着した宮森の前には、並み居る〈ミ゠ゴ幻魔〉が立ちはだかる。
だが〈ミ゠ゴ幻魔〉の弱点を知悉している彼は正確な射撃を行ない、〈ミ゠ゴ幻魔〉に備わっている渦巻き状円盤を次々と破壊して行った。
宮森の様子を観ていた武悪が口を開く。
「あーあ、気付かれちまった。
早いねえ、宮森さんは。
もうアレ出さなきゃなんねえのかよ……」
武悪は宗像が放つ弾丸を錫杖で弾いた後、素早く普賢菩薩・延命法をやり直した。
すると、宮森が処理した〈ミ゠ゴ幻魔〉の残骸の下から急激に何かが立ち上がる。
思わずその何かを見上げ、正体を悟った宮森。
⦅
〈アルスカリ〉を
大型ゆえ、〈ミ゠ゴ〉が体組織に馴染むのに時間が掛かったのかも知れない。
通常なら銃撃で斃せる筈だけど……⦆
宮森はウィンチェスターM1912ソードオフ
至近距離でブッ放す。
体躯が大きく殆どの散弾が命中するも傷一つ付いていない。
宮森は宗像に思念を送った。
『武悪が〈アルスカリ型〉に障壁を張っているようです。
宗像さん、武悪に攻撃を仕掛けて集中を乱して下さい』
『よっしゃ、まかしとき!』
宗像が勢い勇んで散弾銃を発砲する。
彼の持つウィンチェスターM1912は標準
錫杖を地面へと突き刺し集中を続ける武悪。
宗像の発砲に動じる気配は無い。
武悪が口の端を歪めて笑った
錫杖が独りでに宙に浮き高速回転。
宗像の放った散弾を全て弾き散らした。
武悪は湧き上がる
『
雑仏は出来上がるまで派手に動けねえからな。
防御は得意なんだぜ』
武悪が展開している聖観音・連壁法は、典型的な
外法衆の使う障壁術には他に阿閦如来・障壁法が有るが、阿閦如来・障壁法は物理防御力が非常に優れている反面、自身しか対象に出来ず応用の幅が狭い。
しかし聖観音・連壁法はそれとは異なり、複数の対象、又は空間に
爆裂弾を
『あかん、散弾銃も効かへんで。
宮森はんどうする?』
『仕方ありません。
取り敢えずは、自分を誤射しない位置に陣取って下さい。
そこから散弾銃で〈アルスカリ型〉を狙って貰えると助かります』
宮森の指示を受けた宗像は移動を開始。
〈アルスカリ
宗像を追わず〈アルスカリ
宮森とやり合う気なのだ。
〈アルスカリ
宮森は限り限りで躱すと、〈アルスカリ
⦅駄目だ。
障壁で威力が相殺されてしまって銃撃が届かない。
念動術で木々を持って来て燃やすか?
いや、直ぐに悟られて阻止されるだろう。
綾か瑠璃家宮に助けを求めるのも……。
まずい、蔵主 社長が負傷してしまった!⦆
只今の所、〈
瑠璃家宮 達は天芭 大尉と激闘を繰り広げている。
そして、瑠璃家宮 達の戦場から眩い光が放たれた。
敵である武悪もその光が気になるのか、手で光を
⦅多野 教授が帯電していた電気を解き放ったか。
天芭を上手く石化させられるといいんだけど、ここは耐えるしかないな……⦆
これといった良案が浮かばず、〈アルスカリ
電光が収まると同時に、宮森へ猛攻を仕掛けて来る〈アルスカリ
〈ミ゠ゴ〉に寄生されている分、元の〈アルスカリ〉よりも敏捷性が落ちているのは救いだが、武悪が直接操作しているので動きに目立った隙が無い。
攻略の糸口を見付けられず耐えていた宮森の胸中に、
⦅天芭の石化が失敗したどころか、多野 教授に戦輪が迫っている!
……ふう、益男と瑠璃家宮が何とかしてくれたか。
くそっ、障壁を超えて攻撃する手段が有れば。
もしかしたらあの手が使えるかも知れないけど、それを試すには綾の能力が不可欠。
綾の手が空くまで持たねばならないか……⦆
◇
外吮山頂上決戦 中盤 その一 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます